フィッシュイーターを惑わせる“世界一有名なミノー”「ラパラ」の歴史
●“ルアーのすべき仕事”を確実にこなす
ベテランのタックルボックスをのぞくと、必ずと言っていいほどその姿を発見できるラパラ社のルアー。“世界一有名なミノー”とも呼ばれ、「釣れ過ぎるので封印した」「もはやエサ」などなど、圧倒的な実力で多くのアングラーから一軍ルアーとして支持されています。
その歴史は1936年のフィンランドで始まります。湖の延縄漁に従事していたラウリ・ラパラは、複雑な仕掛けやエサを用意する必要のない疑似餌に注目。手近にある木材で小魚を模したミノーを造るものの、なかなか結果を出せない日々が続きます。

●トラウトが襲う小魚の動きに着目
日ごろ湖で魚の生態を観察していたラウリは、トラウトやパイクは小魚をやみくもに襲うのではなく、弱って群れからはぐれ、他の小魚と異なるイレギュラーな動きをする個体を選んで捕食していることに気がつきます。
そんな経験や仲間たちのアドバイスを参考に完成させたフローティングミノーは、ワインのコルク栓や松の樹皮に菓子の包み紙を巻きつけた質素なもの。ですが、フィッシュイーターを惹きつけるナチュラルな泳ぎはフィンランド中の漁師に広まり、後の「オリジナルフローティング(フローター)」の原型となりました。
ラパラが世界で認められるきっかけになったのが、1952年にフィンランドで行われたヘルシンキオリンピック。アメリカの代表選手が土産に持ち帰ったラパラは、アメリカのスポーツフィシング界をまたたくまに席巻。
1962年8月、急逝したマリリン・モンローを追悼する「LIFE」誌にラパラ社初の広告が掲載されたという偶然が重なることで、爆発的な人気を得たのだそうです。
海水・淡水を問わずフィッシュイーターを引きつけるラパラ。現在にいたるまで世界中のアングラーから信頼される理由についてラパラ・ジャパンの担当者は「魚を釣るという機能に特化し、ルアーのすべき仕事をしっかりこなしてくれるからではないでしょうか」と説明します。
リアルにイミテートされたルアーが主流の現代では、漁具として生まれた無駄のないデザインは素朴ですらあります。
「ラパラの大きな特徴は、量産品でありながら、工程によっては職人によってハンドメイドされていることにあります。その結果、バルサやアバシという天然のウッド素材を使いながら、コストを押さえた高い性能のルアーを世界中のアングラーに安心して使っていただくことができるんです」(ラパラ・ジャパン担当者)
一個一個水槽で泳ぎをチェックする「タンクテスト」を行い、丁寧にトゥルーチューンを施されてから出荷されるラパラ。魚を釣るという、漁具から始まった単純明快な哲学は、最新モデルにも継承されているのです。

●“ファースト・ラパラ”には「カウントダウン」がおすすめ
数あるラパラの作品の中でも“不滅”とまで言われ多くのファンを持つのが「CD」こと「カウントダウン」。1965年に誕生したバルサ材をボディに持つミノーで、その名の通り水に沈むシンキングルアーですが、ゆっくりと平行に沈むのが特徴。わずかにローリングが入るナチュラルなウォブリングアクションで、バスやシーバスはもちろん、メバルやトラウトにも絶大な効果があります。
ボディレングスがモデルナンバーになっているCD。サイズ別の使い分けについてラパラ・ジャパンの担当者にきいたところ、「バスやシーバスなら『CD7』か『CD9』。エリアトラウトやメバルなら『CD1』か『CD3』が定番です」とのこと。
そして、「多くのラパラルアーに採用しているバルサ材は密度が均一でないため、同じモデルでも多少のむらがあります。そのため、同じサイズを何個か買い集め、一つ一つ泳がせて個性を把握した後、フィールドに合わせて使い分けているというベテランもいるほどです」というトリビアも披露してくれました。
ラパラの使い方のコツについては、「自分が気持よく感じる速度で巻くことでしょうか。意外ですが、それが一番釣れるのがラパラの面白いところかもしれません」とのこと。
近年ではプラスチック製のモデルもラインアップするなど、ますます充実するラパラルアー。フィールドに合ったラパラがあれば、充実した釣りができるはずです。