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「ロレックスマラソン」終了も近い!? ロレックスが「認定中古ビジネス」を開始したワケ

●なぜ突然の開始? “巨大隕石”級のインパクトを持つサービスとなる理由

 昨年2022年の12月1日、人気も市場シェアも世界No.1の時計ブランド「ロレックス」が、衝撃的な発表を行った。

 スイスを拠点とする正規販売代理店「ブヘラ」の、ヨーロッパの6カ国(スイス、ドイツ、オーストリア、フランス、デンマーク、イギリス)にあるブティックで、認定中古ウォッチ(Certified Pre-Owned watch、以下「CPOロレックス」と呼ぶ)という新プログラムを開始し、ついに認定中古品の販売を開始したのだ。

 この「CPOロレックス」は、製造から3年以上経過したモデルが該当。ロレックスの正規サービスセンターでメンテナンスを受けて「CPOロレックス」として認定されたもので、ロレックスによる2年間の国際保証が付く。

認定中古ウォッチ(Certified Pre-Owned watch「CPOロレックス」)の秘密を探る
認定中古ウォッチ(Certified Pre-Owned watch「CPOロレックス」)の秘密を探る

 現行正規新品の「5年間の国際品質保証」よりは短いものの、自動車メーカーの認定中古車と同じで、これほど安心して購入できる中古のロレックスは他にない。

 つまり、中古時計を購入したことがない人、中古時計に不安を抱いている人も、安心して購入できる。そしてこの認定中古ロレックスの販売は、今年2023年春以降、取扱いを正規販売代理店が希望すれば、そちらでもスタートするという。

 “認定中古ウォッチ”は、生産数がごくわずかで価格も数千万円という、一部の特別なブランドがスタートさせている。

 だが世界で人気No.1、販売額も推定No.1で年間数十万本規模の時計を生産しているブランドがいきなり始めたのだ。それも突然に。しかもロレックスは、中古時計マーケットの最大の主力商品。

 中古時計ビジネス業界にとっては黒船来襲どころか、地球を滅亡させるクラスとなる“巨大隕石”の接近ともいえる緊急事態だ。

 では、ロレックスはなぜ認定中古プログラムをスタートさせたのか? 

 それにはいくつもの理由と目的があると推測できる。筆者が考える一番の理由。

 それは、中古ロレックス市場が「異常な投機的な相場になっている」ことで、1905年の創業、1908年の「ロレックス」ブランド創造以来、築き上げてきたラグジュアリーブランドとしてイメージ、企業イメージが損なわれることを、これ以上放置できないと考えたからだろう。

 ロレックスは「企業の社会貢献」という言葉が知られるずっと前から社会貢献を積極的に行ってきた企業イメージ、ブランドイメージを何よりも大切にする企業だ。

 実は正確に言えば企業ではなく法人格は財団であり、利潤の追求が最優先事項ではない。

 社会貢献活動にもどこよりも熱心で、1976年からスタートしより良い世界を目指して大きな挑戦に立ち向かう勇気と強い信念を持つ優れた個人や団体を支援する「ロレックス賞」や、芸術分野の第一人者がメントー(指導者)として、その人が世界中から指導をしたい才能あふれる若手アーティストをプロトジェ(生徒)として指名。

 次なる第一人者を育てるメントー&プロトジェ アート・イニシアチヴなど、さまざまな社会貢献活動を行っている。

●ロレックス神話に陰謀論、果ては「ロレックスマラソン」まで横行する異常事態に

 ロレックスの腕時計は機能も品質も素晴らしく、価格設定も非常に良心的。だからロレックスが世界No.1ブランド、腕時計の中で人気No.1として時計業界に君臨するのは当然だ。

 それに生産数も決して少なくはない。ただ人気が需要を上回ってしまい、何年も前からすぐに購入することができない状況だ。「では増産すればいいのに」――そう思うかもしれない。

 だがロレックスのような高品質の時計、特に機械式時計は生産が難しく簡単には増産できない。ロレックスはただ無理せず、ひたすら真面目に時計作りを行っているだけなのだ。

 ところが、この状況を利用して中古時計マーケットでは投機的な取引が横行するようになった。ネットのコンテンツには、まるでかつての土地神話のように「ロレックスは絶対に値下がりしない」「持っていれば儲かる」という「ロレックス神話」が流布され、信じられている。

 この神話を知った人が真に受けたこと。さらに新型コロナ禍でこれまで時計に興味のなかった人たちがこの神話を発見したことで、ロレックス人気はさらに過熱した。

 どんなモノでもそうだが、人気が過熱すると、モノの価値はバブる。冷静な価値判断ができず、異常に高価なプライスタグが付いていても、その価格で売買される。

 手に入りにくいことで「いくら出しても、とにかくロレックスが欲しい」という人が出てきたり、「これはひと儲けするチャンスだ」という人も出てくる。その結果、人気モデルを新品で購入して中古業者に即、転売すると購入した定価の2倍以上の値で取引されるというありえない状況が起きている。

 この異常なバブル価格が原因で、真面目に時計を作ってきたロレックスは言われのない非難、誹謗中傷を受けることになった。ついには陰謀論まで登場した。

「ロレックスは生産数をわざと少なくして、中古価格を高騰させているのではないか?」という、いわゆるロレックス陰謀論だ。

 だが、そんな陰謀があるはずはない。中古価格を高騰させても、ロレックスや新品を定価で販売している正規販売店には何の利益もない。

 それどころか「ロレックスを買いたい」「何とか売ってくれ」と毎日正規販売店を訪問する、それも1日に何店舗も巡回して訪問する「ロレックスマラソン」なる行動が起きて、接客に当たる正規販売店のスタッフを悩ませた。正規販売店のほとんどは現在、修理などを除く来店を予約制にしているのはそのためだ。

Next果たして日本での展開は?
Gallery 【画像】ロレックス認定中古ビジネス「CPOロレックス」とは?(4枚)
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