VAGUE(ヴァーグ)

上質のトンカツを良心的な価格で味わうなら――駅から遠くても食べにいきたい「とんかつ 一 (いち)」(川崎)

●元・肉のコンサルタントが吟味する、その日最高の豚肉を調理

 駅から遠く離れているけれど、その絶対的なおいしさから、遠方からも訪れる人が多い「とんかつ 一 (いち)」。美味しい理由には、店主の様々なこだわりが挙げられます。

 そもそも店主は食肉業界の会社に約30年勤務し、肉のコンサルタントのような仕事に携わっていたため、肉を見る目が確か。この店で使う豚肉は、ブランド肉など産地や銘柄には拘らずその日いいもの。店主が認めた肉だけを使います。

自家製の油で揚げたロースカツ。揚げたては黄金色に輝いて見える
自家製の油で揚げたロースカツ。揚げたては黄金色に輝いて見える

 さらにすごいのは、揚げ油も自ら作っているという事。

「うちはラードから作っているからね。脂身の塊から焼いて溶かして作っているんですよ」。

 と店主。実際に作業風景を見ると大きな肉の塊から脂身を削ぎ落とし、そこからゆっくり加熱して、揚げ物用の油を作っていきます。

 元コンサルタントだけあり、トンカツ、豚肉以外の扱いも知識豊富です。

「オージービーフなどの赤身肉は、BBQが一番いいんだよ、遠赤外線で強火が一番。肉によって火の入れ方、油の使い方を知ると、素材をもっと美味しく味わえるから」。

 トンカツ屋さんですが、いつか牛かつやステーキも、メニューに登場してほしい。厳選した高品質の肉、そして手作り揚げ油。店主がトンカツに真摯に向き合っていることが伝わってきます。

 豚肉に纏わせるパン粉は生パン粉、上ローストンカツは大体150〜160gの肉を揚げていきます。この日の豚肉は、

「千葉の東総の豚だね。利根川水系あたりは養豚農家が多いから」

 とのこと。千葉や茨城、鹿児島の肉を使うことがどうやら多いようです。

●何もつけなくても旨みを感じる、むっちり食感のロースカツ

 揚げたての「上ローストンカツ」1100円は、衣がザクザク、そしてミチっとしている。噛むと肉汁の旨みが一気に口の中に広がってきます。何もつけなくてもそのままで美味しい。むしろソースで肉自体の味がわからなくなるのが勿体無いと思えるおいしさ。あとから脂身の部分の甘味と旨みもやってきます。

 お皿の端に添えられたカラシをちょっとつけて食べると、さらに肉の甘みを強く感じることに。肉のみっしり感、しっとり感、そして広がる旨みなど、とにかく美味しい。思わず無言になって食べ続けてしまいます。

ソースはむしろ、千切りキャベツのため? そのままでも美味しいトンカツ
ソースはむしろ、千切りキャベツのため? そのままでも美味しいトンカツ

 ある程度口の中がトンカツの旨みで満たされたところで、千切りキャベツ、味噌汁などでリセット。ここからやっとソースをかけて、今度はまろやかな旨みを堪能します。

 ソースはやや甘め。肉の旨味といいバランスです。

 ちなみにこの店では、他のとんかつ店では見かけない珍しいトンカツも。「ゲタとんかつ」700円は、

「マグロで言うなら中落ちみたいなものだね。リブフィンガーミート、つまり骨の間の肉で作るトンカツのこと」。
ロースカツはしっとり、みっちりジューシーなおいしさなら、こちらはブリっとした食感。肉の部位による違いが実感できます。

 他にも、ロースの芯側の肉やバラの先側で作る「ランジリとんかつ」600円などもあり、これらは数量限定。いずれもご飯、味噌汁付き。もし3人以上で食べに行くなら、ロースとヒレと、ゲタとランジリと、と違う注文をしてシェアして味わうのもおすすめです。

 様々な飲食店がある川崎駅前ですが、あえてバス、または車に乗ってでも行くべきといえる「とんかつ 一」。厳選した国産豚で作る、最後の一口までとことん美味しいトンカツは、わざわざ食べに行く価値がありますよ。

店名:とんかつ 一 (いち)
住所:神奈川県川崎市川崎区大島5-16-3
電話:044-201-2663
営業時間:11:30~14:00、17:30~20:30(各LO)
定休日:月曜

Gallery 【画像】店内の様子は? こだわりの揚げ方から評判の「げたとんかつ」まで画像で見る(14枚)

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