VWのスポーツワゴン「ゴルフRヴァリアント」公道での印象は? “人気低迷のステーションワゴン”でも高評価を得ている秘密とは
国産は絶滅危惧種も欧州勢ワゴンはまだまだ健在
いまや自動車メーカーの多くが、SUVを販売の主流に据えています。それと入れ替わるように、存在感は希薄になっているのがかつて人気を誇ったステーションワゴンです。
なかでも国産ステーションワゴンは、2024年4月中旬に「マツダ6」が日本仕様の生産を終了することもあり絶滅危惧種となってします。
その反面、ヨーロッパのブランドの多くは、今も複数のステーションワゴンを展開しています。ドイツのVW(フォルクスワーゲン)もそのひとつ。今回はそんなVWのステーションワゴンの中でも、とびきりスポーティな「ゴルフRヴァリアント」の魅力をおさらいしたいと思います。
「ゴルフRヴァリアント」はその名のとおり、「ゴルフR」のステーションワゴン版です。「ゴルフR」は「ゴルフ」シリーズの中で最もスポーティなグレードで、日本でも人気の高い「ゴルフGTI」より格上のモデルと位置づけられています。
「ゴルフRヴァリアント」が搭載する2リッターの4気筒ターボエンジンは、「GTI」比で75psアップの320psを発生。日本仕様の「ゴルフ」で最もベーシックな仕様の最高出力は110psなので、実にその3倍近いパワーを発生する強心臓なのです。
ちなみに「ゴルフRヴァリアント」の最大トルクは「GTI」比50Nmアップの420Nmで、0-100km/h加速はわずか4.9秒でクリアします。
そんなハイパフォーマンスなエンジンに惹かれる「ゴルフRヴァリアント」ですが、実は駆動方式も「GTI」の前輪駆動に対して4WDとなるなど特別仕立てとなっています。この「ゴルフ」シリーズで唯一無二のパワートレインに、クルマ好きはロマンを感じることでしょう。
フルモデルチェンジを経て2022年に日本で発売された現行の「ゴルフRヴァリアント」は、前後のトルク配分をコントロールするだけでなく、後輪左右の“トルクベクタリング(旋回時に意図的に内輪よりも外輪を多く回す)”機構も新採用。4本のタイヤのトルク配分を最適制御することで、コーナリング性能を高めているのがポイントです。
「ゴルフRヴァリアント」の「R」とは、もちろんレーシングの頭文字からとられたもの。それを裏づけるように、走行モードには「スポーツ」を超えた「レース」なんてモードもあり、オンにすると排気音がボリュームアップするなど、ドライバーのやる気を駆り立てます。
そのスタイリングは開口部が広くて大胆な形状となったフロントバンパーや、4本出しマフラー、ディフューザー形状を採用したリアバンパーなど、見る人が見ればそれと分かるスポーティな仕立て。それでも派手すぎることはなく、あからさまにパフォーマンスを主張してこないのは好印象です。
●控えめな排気音にサルーン級の乗り心地
そんな「ゴルフRヴァリアント」で走り出すと、頭の中が疑問符で埋め尽くされました。かつての「ゴルフR」シリーズに比べて、刺激がグッと控えになっていたからです。
まず気になったのが、排気音の演出。「コンフォート」モードだとほぼ排気音が聞こえないのです。こんなはずでは!?
試乗車はオプションの“DCCパッケージ”装着車。いわゆる電子制御サスペンションが組み込まれた仕様でしたが、その乗り心地も「スポーツモデルにしては」という前置きをつけなくても良好すぎて驚かされます。
路面の凹凸を吸収するしなやかさがズバ抜けていて、ある意味「ユルさ」さえ感じられるほど。快適性の高さは誇張なくプレミアムサルーン級で、これなら同乗者からも高評価を得られることは確実です。
しかしこの乗り味が、あの「ゴルフのトップスポーツモデル」のものだと思うと、少々拍子抜け。エンジンがパワフルなので速さは確かにスゴいのですが、「『ゴルフR』もずいぶんとキバを抜かれたなあ……」と一抹の寂しさを感じてしまったのです。
page
- 1
- 2