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マツダ「ロードスター990S」はなぜ売れる?「1トン切りの車体による走りの楽しさ」は唯一無二

“1トン切り”は現代のスポーツカーにとって特別なこと

 現行のND型「ロードスター」がデビューしたのは2015年5月のこと。まもなく7年が経とうとするにもかかわらず、2022年1月の販売台数は5年ぶりに1000台の大台を超えた。日常のアシには不便な2シーターのオープンスポーツカーが好調なセールスを記録しているというのは、クルマ好きや業界にとって明るいニュースといえるだろう。

 その原動力となっているのが、2021年12月の商品改良で投入された特別仕様車「ロードスター990S」だ。990Sはその名のとおり“アンダー1トン”の車重を達成した特別なロードスター”。ND型でもっとも軽いグレード「S」をベースに、バネ下重量のさらなる軽減と、990Sだけのサスペンションとエンジンの専用セッティングにより、より軽やかで気持ちのいい“人馬一体感”を演出している。

 現在のところその人気は圧倒的で、ソフトトップ仕様の販売台数に占める990Sのシェアは、2021年12月ではなんと45%。2022年1月も39%をキープするなど、あっという間に最量販グレードへと上り詰めた。

2021年12月の商品改良でラインナップに追加されたロードスター990S
2021年12月の商品改良でラインナップに追加されたロードスター990S

“1トン切り”というフレーズは、ロードスターのようなスポーツカーにとって特別な意味を持つ。クルマは軽ければ軽いほどフットワークが向上し、軽快で楽しい走りを実現できるのは自然の摂理だからだ。

 しかしイマドキのクルマは、快適装備や安全装備の充実などもあり、どんどん重くなる傾向にある。車重が1.5トンを超えるモデルも珍しくはなく、大型のSUVや電気自動車にいたっては2トン超えのモデルもざらにある。

 そうした流れはスポーツカーも同様だ。世界中見渡してみても、いま新車で買える量産スポーツカーで車重が1トンを切るモデルは、ケーターハム「セブン」などの少量生産モデルを除くと、軽自動車のホンダ「S660」くらいしか思い浮かばない(そのS660ももはやオーダーは不可能だ)。

 つまり、現代のクルマの進化を踏まえれば、ボディサイズの小さな軽自動車でもない限り、1トンを切る車重というのは実現困難な要件なのである。

 そんななかマツダは、ロードスター990Sを世に送り出した。“990”という数字は、もちろん990kgという車重を示したもの。クルマの進化に逆行するかのような1トン切りのライトウエイトスポーツカーだが、意外にもこれが多くの支持を集めたのだから、クルマは本当におもしろい。

Next軽量化のために薄いリアウインドウを採用
Gallery 【画像】軽さだけじゃない!「ロードスター990S」の魅力を写真で見る(24枚)

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