●クラウドファンディング総額1億円以上の支援を集める
「カルレイモン」は、大学を卒業したばかりのふたりの若者によって2017年に設立された新鋭ブランドだ。きっかけは、彼らが社会に打って出ようとしていた当時、時計愛好家として「末永く使えるクラシカルな腕時計」を探したが、手に届かず断念せざるを得なかったことという。
その想いをあきらめることなく「存在しないのならば自分たちの手で作り出そう」と、彼らは一念発起する。そして、クラシック時計の代名詞でもある“ムーンフェイズ(月の運行を示す機構)”を携えたモデルをクラウドファンディングへ出品。「手に届くクラシック」として、これまで総額1億円以上の応援を集めるという快挙を成し遂げている。
若者を中心に「アナログ回帰」という言葉をよく耳にするが、これはファッション業界では珍しくなく、トレンドは常に周期性を持っている。感度の高い若者はそういった情報をいち早くキャッチし、最近ではアナログなレコード、カセットテープの人気、さらにキャンプを中心としたアウトドアの人気といった現象も見られる。
たしかにカルレイモンの腕時計は、リーズナブルかつ高級感も満たすデザインであり人気の理由はわかる。ただ、それだけで“時計離れ”ともいわれる現代に数多く受け入れられているのは、価格帯だけではなく国産であることを標榜し、さらに彼らのブランドコンセプトがアナログへと回帰しているニーズにマッチしていることも大きいと感じる。
●デジタル隆盛の現代だからこそアナログのあたたかみが求められる
さて前置きが長くなったが、今回紹介する新作「Classic38」(6万7100円~)は、まさにそんなアナログ回帰への想いが詰まったカルレイモンらしいモデル。すでにクラウドファンディングは終了し総額1000万円以上を集め、一般販売が始まっている。
鏡面仕上げの美しいラウンドフォルムのケースに、シンプルかつ立体的な3針のダイヤルをあしらう。同じく多面カットを施したバーインデックスもたおやかな光を反射し、日本製の機械式ムーブメントであるMIYOTAの「cal.9015」を採用するなど随所に心配りが感じられる。
さらに収まりのいいドレスウォッチにするべく、ケース径は38mm、薄さは8mm台に押さえ、加えてクロコダイル調のレザーストラップまでつくという価格からは考えられない仕上がりになっている。
時計自体は無機質だが、手触り感のあるブランドというかクラウドファンディングのコメント欄を見てもファンとの交流があり、リピーターも多いようだ。今回はブランド初となる機械式時計へのチャレンジで、アイコンでもあるムーンフェイズを採用せずコスト面を優先させ「手に届くクラシック」を実現している。
とはいえディテールに妥協は感じられない。前述した多面カットのインデックスやドーフィン針にはポリッシュ仕上げを施し高級感があるのはもちろん、ダイヤルの細かな表情まで徹底的に吟味されている。シルバーケースのホワイトダイヤルは目を凝らすとニュアンスがあり、ただのホワイトではないのがわかる。
筆者はファーストモデルを所有しているが、「高級時計の代替機としても人気が高い」というのも納得のクオリティだ。
●機械式時計へのチャレンジに感じる「リーズナブルなクラシック時計」への想い
1時間に2万8800回(1秒に8回)振動する高振動(ハイビート)ムーブメントを採用したのも、初となる機械式時計への挑戦という意気込みが感じられる。これまでクォーツ式のみで展開してきたカルレイモンにとって、転換点となるプロダクトになるだろう。
機械式時計になったことで、より愛着が湧きやすくなり彼らの目指す「長く使えるリーズナブルなクラシック時計」へと近づいた。時代の変化にともない、機械式時計そのものがサステナビリティの高さで注目されている文脈も重要だ。
サステナブルを含めた、SDGsという意味では“ジェンダーレス”というキーワードも腕時計に影響を与えている。それはペアウォッチだけでなく、シェアウォッチといった新しいカルチャーであり、まさに「Classic38」はケース径38mmという絶妙なサイズ感をもって、着ける者を選ばないモデルになっている。
それもそのはず、カルレイモンの目指す「リーズナブルなクラシック時計」は、時代がいくら移り変わろうとも普遍の価値を守り続けるために生まれたもの。
「エントリーモデルとしてだけでなく、いつまでも使い続けられる時計であってほしい」
そんな彼らの想いを腕にのせ、今日も「Classic38」は正確な時間を刻み続けていく。