MT-Gの現在地──技術と意匠の交差点
G-SHOCKの上位ラインとして展開されるMT-Gは、1999年の誕生以来、耐衝撃性とデザイン性の両立を追求し続けてきた。なかでも最新モデル「MTG-B4000」は、構造と美意識、そしてテクノロジーが交差する先端モデルだ。
今作のデザインにはAIが導入されており、デザインや設計を人が行い、解析やシミュレーション、モデリングの最適化をAIが行う。その造形に人の手で修正を加える手順を繰り返すという「人とAIの共創」によって完成した。その結果、これまでにない立体感と視認性、そしてプロダクトとしての“説得力”を備えたモデルが生まれている。
さらに、カーボンファイバー強化樹脂とステンレススチールの異素材を融合した「デュアルコアガード構造」は、注目すべきポイントだ。軽量化と堅牢(けんろう)性の両立という相反する命題に対し、構造レベルでの最適解を示している。
加えて、耐衝撃・耐遠心重力・耐振動の「TRIPLE G RESIST」、反射防止コーティングを施したサファイアガラス、高輝度なLED「スーパーイルミネーター」による暗所での視認性、Bluetoothによるスマートフォン連携など、多層的な機能が高次元で統合されている。
「AIがすごいのはスピードと数。でも、それだけでは愛着は生まれない。人間が選び、形にして、理由を込める。その手間があるからこそ、持続するんだと思います。そういう意味で、MT-Gは“思考の痕跡”が宿る時計ですね」と、日産のカーデザイナーを経たのち、カスタムカーブランド「DAMD(ダムド)」にてデザイナーを務める徳田氏は語る。
さらにこうも加える。
「これは単に便利なツールではなく、構造そのものが“物語”を語ってくるように思います。どこがそう思わせるのでしょうか?」
異素材と骨格──クルマと時計の共鳴
徳田氏がMT-Gに初めて触れたのは、大学入学のとき。祖父から贈られた1本だったという。
「初めて手にしたときのずっしりとした重みと、金属の細やかな表情が印象に残っています。モノとしての存在感があったんですよね。それが今の自分の“モノを見る視点”をつくった気がします」
今回手に取った「MTG-B4000」にも、徳田氏は共鳴を覚えた。特に興味を引かれたのが、素材同士の“ズレ”や、構造の重なりの見せ方だ。
「カーボンとメタルのパーツがあえてずらして重なっていたり、加工面がわざと不均一に処理されていたりする。これって普通なら“そろえたくなる”部分ですよね。でも、MT-Gはそこをずらすことで逆に完成度を高めている。これはクルマのデザインでも通じる部分です」(徳田氏)
異素材をどう“見せて”いくか。どう張り合わせ、どう段差を生かすか。さらには、時間がたっても色あせない愛着や物語をどう宿すか──それらすべてが、時計にもクルマにも問われる時代になっている。
「ズレているのに美しい。構造が語ってくる。そのあたりが、MT-Gの本質かもしれませんね」
そしてこう続ける。
「よく“骨格が美しい”という言い方をしますが、まさにMT-Gにはそれがあります。表層的なデザインじゃなくて、構造そのものが一貫しているから美しい。これは時計でもクルマでも変わらない真理です」
これからのデザインに求められる“強さ”
MT-Gも他のG-SHOCKと同じく、幾多の耐久試験を経て製品化されている。
それは振動や衝撃、水圧、静電気的負荷──そのどれもが、実用環境を想定した厳しい条件下で行われる。そして、その過程で見つかった課題をひとつひとつ改善することで、ようやく信頼に値する製品となる。
「自分たちの仕事でも同じような感覚があります。クルマのパーツって、たった1mmのズレが重大な事故につながることもある。でも、ただ厳密であればいいわけでもない。その“見せ方”が、安心や高揚感にも関係してくる。MT-Gにはそういう“語りたくなる安心感”があるんです」
さらに、MT-Gは“タフな外見”に反して、日常的な利便性にも富んでいる。
Bluetooth接続によりスマホアプリと連携し、タイムゾーンを自動で補正。海外渡航時のワールドタイム管理、位置情報の記録やスマートフォン探索機能など、スマートウオッチ的な機能も備えているのだ。
「プロダクトって、使い手がその背景を知ったとき、もっと好きになれると思うんです。ただの“高性能な時計”じゃない。その背後にある思想やプロセスが、ユーザーに伝わってくる。MT-Gはその点で、すごく現代的だと感じました」と、徳田氏は新作MT-Gの印象を話す。
そして、こう続ける。
「強さって、単に物理的に壊れないことじゃないですよね。“何があっても裏切らない”って感じられること。MT-Gはそれを感覚として持たせてくれる、希少な時計だと思います」
道具が語る未来へ
現代のプロダクトには、「都市」と「自然」という相反するフィールドをシームレスに行き来できる柔軟さが求められている。単なる機能性ではなく、どんな環境でも自分らしくいられる“場”をつくってくれる存在。
今回、徳田氏がMT-Gとの相性を考えて乗ってきたのは、DAMDが手がけた特別仕様のジムニー「JIMNY SAUDADE(サウダージ)」だった。フランスのクラシックSUVがもし存在したら──そんな空想から生まれたというサウダージは、アースカラーのボディとインダストリアルなディテールを併せ持つ、都市にも自然にも溶け込むたたずまいをしている。
武骨すぎず、洗練されすぎず。そのバランス感覚は、まさにMT-Gが持つ“構造美”と共振する。強さと軽やかさ。合理性と遊び心。異なる価値がひとつのフォルムに共存している。
都市と自然、機能と造形、実用と感性──すべてを横断しながら、自分だけの“スタイル”を形づくる。
MT-Gは、そんなこれからの時代にふさわしい「未来の道具」だ。









