静寂の滝に、星を撮る男がいた
潮の香りを背に、クルマは内陸へと舵(かじ)を切る。
風景はしだいに緑に包まれ、空気がすっと澄んでいく。たどり着いたのは「飛龍の滝」。その名の通り、龍が舞い降りるような二段の滝が、岩肌をなめるように流れ落ちていた。
滝のそばに、ひとりの男が三脚を構えて立っていた。星空写真家・宮坂雅博氏。星と対話するように生きてきた彼が、今宵(こよい)の“ステージ”を確認していたのだ。
宮坂氏が腕に巻いたのは、星座盤をダイヤルに重ねた「コスモサイン 星座盤モデル(AO4010-51M)」。
北緯35度の全天星座を正確に表現するために設計され、恒星や星座の位置をひと目で読み取れる精密設計となっている。
「今夜は、アークトゥルスがきれいに見えると思いますよ」
ふと、そんな言葉をこぼす宮坂氏。
「うしかい座の主星で、春の夜空を代表する星です。名前の由来は“熊を追う者”。でも僕にとっては、旅の目印みたいな存在なんです」
簡単な撮影レクチャーを受けながら星空観察への期待を高める。が、雲が多く滝からは夜空が見えなかった。
宮坂氏が過去に撮ってくれていたアークトゥルスと星空の写真を拝見し、ここでの星座観察は諦める。
そして僕たちは、星の声を聴きに、いよいよ西はりま天文台へ向かう──。
星をのぞき、時を見つめる
山道を登るたびに、宙はだんだんと日が沈み赤い夕焼けが姿を現す。
やがて現れたのは、日本最大級の望遠鏡「なゆた」を擁する西はりま天文台。標高約400メートル。
宙のコンディションは徐々に回復している。これなら…星空に期待できそうだ。
天文台に到着してすぐ、中へと案内された。そう、この旅の目的でもある「なゆた望遠鏡」との邂逅(かいこう)だ。
巨大なホールに通されると、そこには全長約12メートル、口径2メートルを誇る日本最大級の光学赤外線望遠鏡「なゆた」が鎮座していた。
まるで天を射抜くかのように伸びるその筒は、数億光年彼方(かなた)の銀河から届くかすかな光をも捉えるという。
圧倒的な存在感とともに、「人はどこまで遠くを見つめられるのか」という問いが、静かに胸に響いた。
望遠鏡のドームがゆっくりと動き出す。レンズの先に捉えられたのは、赤く光るアークトゥルス──先ほど宮坂氏が語った“旅の目印”だ。
「この星、地球に接近していて、秒速約122kmで近づいているんですよ」
そう宮坂氏は静かに教えてくれる。
宇宙のリズムは、決して人の都合では止まらない。
だが、われわれは“時間”を持っている。カンパノラの月齢表示が、今夜の満ち欠けをやさしく知らせるように。
人は宙を仰ぎ、時間を知り、そして願う。
夜が深まるにつれ、頭上には星が降るように広がっていった。
アークトゥルスも、月も、カンパノラのダイヤルのなかで確かに呼応している。
腕元にある「小さな宇宙」が、宙に浮かぶ「果てなき宇宙」とリンクする。そんな感覚が、この旅のすべてを静かに肯定してくれた。
星を腕に、時間を旅する
帰路、車窓にはいつの間にか朝の気配がにじんでいた。
あの満天の星空がうそのように、宙は優しいグラデーションを描いていく。
月齢を示すダイヤルが刻むリズムに導かれ、僕たちは宙を見上げ、星の呼吸を感じ、そして時間と向き合った。
いま、カンパノラを腕にしていると、「自分はどこにいて、どこへ向かっているのか」という問いが、静かに浮かんでくる。
それは単なる時間の確認ではなく、“生きる時間の意味”をそっと差し出してくるような感覚だ。
星を眺め、宇宙に思いをはせることで、むしろ自分という“点”が浮かび上がる──
それがこの旅の、本当の贈り物だったのかもしれない。
そして今日も、カンパノラのダイヤルは、宇宙を映し続けている。
※ ※ ※
宙の動きを可視化しようとした時計の原点に立ち返り、宙に思いをはせるために生まれた「カンパノラ」は、2025年で誕生から25周年を迎えた。
ブランドに冠した「カンパノラ」の名は、人々に初めて時刻を知らせるために打ち鳴らされた鐘に由来している。
雄大な宇宙と悠久な時間の流れに身を委ね、今という瞬間にあなたの時を刻むために。カンパノラは、これからもロマンとともに歩み続ける。
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