パーツごとに違う種類のチタンを使用して強度を高める
樹脂ケースとバンドが主軸であったG-SHOCKは近年、CMF(カラー・マテリアル・フィニッシュ)デザインの設計思想をもとに、ステンレススチールを使用したフルメタル系のモデルも数多くリリースしてきた。とくに2018年に登場したシルバーの「GMW-B5000D」はセンセーショナルで、大ヒットしたのは記憶に新しい。
そして、このフルメタルをさらに加速させた形になるのが、今回紹介する「MRG-B5000B」だ。もっとも大きな特徴として、ケースやベルト素材に“チタン”を使っているのが一番の特徴。そもそもG-SHOCKは耐衝撃性に優れた時計を作ることが最大の目的であり、軽量かつ強度が鉄より高く、腐食に強い特性を持つチタンを採用したことは納得の選択といえる。
ただし、その特性ゆえにチタンは加工が難しい。しかも一見シンプルなデザインに見えるがケースとベルトには3種類のチタンが使われている。まずケースとベゼルには「64チタン」をベースとした高硬度のチタンを、バンド部分には純チタンの約3倍の硬度を誇る「DAT55G」を、さらにもっとも衝撃を受けやすいベゼルトップ部分に純チタンの約4倍の硬度というコバルトクロム合金「コバリオン」を採用する念の入りよう。
とくに「コバリオン」はプラチナに匹敵する輝きを持つということだが、加工の工程における苦労を開発者に聞いたところ、
「硬くて傷つきにくく美しい鏡面を持つ素材ですが、硬いが故に加工が大変です。削り出しで作るしかないのですが、硬すぎて削る工具もすぐにつぶれてしまいます。そのため数を作るのが難しく、コストもかかりました」と話す。
もちろん、こだわったのは素材だけではない。G-SHOCKらしい新たな耐衝撃システム、それが新構造「マルチガードストラクチャー」だ。この点について、従来の構造との違いについて先の開発者の方に聞くと、
「『DW-5000C』をメタル化した『GMW-B5000』はケースとベゼル (ケースをカバーする部分)の間に1個の緩衝部品を挟むことで衝撃を吸収しています。この構造はベゼルが一体(1個のパーツ)だから可能でしたが、今回の『MRG-B5000』はベゼルが25個ものパーツに分かれているので同じ構造が取れませんでした。そのため緩衝部品を複数個所に配置して、衝撃を複数の点で吸収する構造を新たに開発しました」とのこと。
おかげでベゼルの細かい面まで研磨をかけることが可能になり、鏡面仕上げとDLC(ダイヤモンドライクカーボン)コーティングを施し、鈍く光るブラックの輝きを与えることに成功。アイコニックなモデルでありながら、まさに現代のフラッグシップG-SHOCKにふさわしい風格を漂わせる出で立ちとなっている。
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