「スピードタイマー」新作はブラックのイケメンウオッチ 限定の機械式モデルで知る“セイコー”の歴史
●往年のクロノグラフ開発の象徴的な名品を継承する機械式クロノグラフ
140年を超えるセイコーの歴史のなかでも間違いなくマイルストーンのひとつとなっているのが1964年のオリンピック東京大会だろう。
スイスブランドに独占されていた当時の状況に風穴をあけるべくセイコーが作り上げたのは、0.01秒単位での計測を可能にする高精度の機械式ストップウオッチ。
以降セイコーは一気呵成に世界に知られる存在へと発展を遂げていくわけだが、その躍進ぶりを体現したのが、垂直クラッチを搭載した世界初の自動巻きクロノグラフとして登場した「1969 スピードタイマー」だ。
競技用ストップウオッチ開発で培った技術を応用した名品は、60年代のセイコーのクロノグラフ開発の象徴となり、やがてその名前は2021年に生まれた機能性クロノグラフ、セイコー プロスペックス“スピードタイマー”へと引き継がれていく。
さてこのスピードタイマーの最新作として、この冬、精悍な表情をたたえたリミテッドモデルが登場する。
ムーブメントは「元祖」スピードタイマー以来の伝統である垂直クラッチとコラムホイールを備えたメカニカルクロノグラフムーブメント“キャリバー8R46”。
ケースにダイヤル、ストラップまで黒で統一、ダイヤルの目盛りにホワイト&レッドを散らしたスタイリッシュな配色が目を惹くが、このカラーコードにはもうひとつのマイルストーンである1972年の冬季オリンピック札幌大会が関わっている。
●マットブラックにホワイト&レッド。印象的なカラコードに秘めた物語とは
極寒の環境下で開催される冬季スポーツでは、陸上や水泳といった競技とはまったく異なる電子計時システムが必要となる。札幌大会にて開催の6競技35種目に使用された計時装置はじつに26機種583個、装置を繋ぐケーブル長は合計100kmにも及んだという。
当時、すでに計時方法は手動計時からクオーツによる電気計時へと完全に移行していたが、機材トラブルに備えたバックアップとして機械式時計による手動計測も実施。そのために特別に製作されたストップウオッチが、じつに今回の新作のデザインのモチーフとなっているのだ。
つや消しのブラックダイヤルに白で刻まれたミニッツトラックと数字は、雪中でもはっきりとした判読性を求めてのもの。
目盛りと9時位置のクロノグラフ積算計はそれぞれ12カ所に朱赤を差して視認性をアップを図る一方、通常赤色が使われることの多いセンタークロノグラフ針は白色とすることで誤読を防いでいる。
またそのセンタークロノグラフ針はダイヤル外周部に届くほど長く、ダイヤル面側に緩やかに曲げられているのだが、これは目盛りと針先との距離を限界まで接近させることで正確な時を読み取れるようにとの配慮から。
他にも、指先で軽く押せるよう広くフラットな形状に設計されたプッシュボタン、ストラップ裏面のカーフレザーのライニングには劣化を抑えるコンシール加工を施すなど、スポーツウオッチらしい実用的な工夫がそこここに散りばめられている。
一見何気ないオールブラックモデルに見えて、その実おもわず周囲に語りたくなるストーリーがたっぷり詰まった本モデル。国内150本の限定と聞けば、悩んでいる暇はないかもしれない。
●製品仕様
■セイコー プロスペックス スピードタイマー メカニカルクロノグラフ 限定モデル
品番:SBEC019
価格(消費税込):38万5000円
ケース径:42.5mm
ケース厚:15.1mm
ケース:ステンレススチール(ブラック硬質コーティング)
ストラップ:カーフ
ガラス:デュアルカーブサファイアガラス(内面無反射コーティング)
ムーブメント:メカニカルクロノグラフムーブメント キャリバー8R46
パワーリザーブ:45時間
防水性能:日常生活用強化防水(10気圧)
限定数量:世界限定600本 うち国内150本
発売日:2023年2月10日