進化した「コスモグラフ デイトナ」と新・薄型ドレスウォッチ―― 2023年「ロレックス」新作は見逃せない逸品ぞろい
●フェアをリードするロレックス
バーゼルからジュネーブへ。2021年から新作発表の場を移した世界No.1ブランドのロレックスは、昨年秋に発足したWWG運営のための非営利の財団「Watches and Wonders Geneva Foundation(WWGF)」の会長職も務める、この高級時計の祭典のリーダー的存在。どのブースよりも多くの人を集めていた。
●最大の話題はやはり新“コスモグラフ デイトナ”!
そしてジュネーブ3年目となる2023年の新作は、この立場にふさわしい魅力的な新作がいくつも登場した。世界中の時計好きの間でいちばん話題になった新作はやはり、今年誕生から60周年を迎えて一新された、ロレックスでも人気No.1のスポーツクロノグラフ「オイスター パーペチュアル コスモグラフ デイトナ」。

アイスブルー文字盤のプラチナ製ケース&ブレスレットモデルがモデルオイスターコレクションでは史上初のトランスパレントケースバック(シースルーバック)になったことが大きく報じられているが、一番のニュースはそこから眺めることができるロレックス自社開発・自社製のクロノグラフムーブメントCal.4130に代わり、その進化版のCal.4131が搭載されたこと。
Cal.4130との最大の進化は、エネルギー効率に優れたクロナジーエスケープメントの採用。また自動巻きローターのベアリングが増え、巻き上げ効率のアップも図られたと思われる。
またプラチナ製モデルしか鑑賞できないが、ムーブメントの装飾に「ロレックス コート・ド・ジュネーブ」というパターンが新たに採用されているのも特徴。

プラチナ製モデル以外でもわかる外装面では、文字盤のインデックスやインダイヤルの仕様が微妙にアップデートされたこと。ただこれは単体ではよくわからないレベルだ。
また、セラクロム製のベゼルにケースと同素材の縁が付いた。これはセラミックより柔軟性のあるメタル素材で耐衝撃性を向上させる狙いのよう。どれも、常に最良最善を追求して改良を重ねるロレックスの姿勢がよくわかる、着実な進化と言えるだろう。
●新コレクションから“新定番”スモセコモデル
そして今年2023年のロレックスの新作で、筆者が最も驚いた、また個人的に注目したのが「パーペチュアル1908」と名付けられた自動巻き、スモールセコンド付きの薄型モデルだ。

スモールセコンドタイプの秒表示。特徴的な時針と両刃の剣のような分針。そしてアラビア数字とバーをミックスしたアワーインデックスの組み合わせは、アンティークロレックスを知る人なら1930年代のモデルを思い浮かべるかもしれない。
だがマニアではない普通の人には、シンプルで薄型でクラシックなこのデザインはとても新鮮なはず。
現在、高級時計の世界はラグジュアリースポーツウォッチが大人気だが、次のトレンドはクラシックなシンプルウォッチだと筆者は考えている。この「パーペチュアル 1908」はそのトレンドを先取りしているように思う。

クラシックの新解釈ともいえる文字盤デザイン。直径39㎜というケースサイズも絶妙。また見た目はケース厚9.5㎜というスペックよりかなり薄い印象だ。© Rolex/Ulysse Frechelin
しかも搭載されている薄型自動巻きムーブメントCal.7140はこのモデルのために開発された完全新設計。薄型ながら日差±2秒と非常に高精度で、今後さまざまな機構をプラスできるベースムーブメントとしての資質も充分にある。
さらに「パーパチュアル 1908」の「1908」は「ロレックス」というブランド名が商標登録された年に由来する。このネーミングもこのコレクションの今後の展開を期待させるもの。
「オイスター」とはまた違う、ロレックスを代表するモデルとして、このコレクションはますます発展するに違いない。