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なぜカーナビには「ヘディングアップ派」と「ノースアップ派」がいる? 北向き表示でどうして理解できるの!? カーナビ誕生42年の歴史が生んだその理由とは

1981年に初めて登場したカーナビは長らく「ルート案内」がなかった

 カーナビは、デジタルデータ化された地図を使い、GPS衛星からの電波や車速パルスなどをリンクさせることで正しい現在地をディスプレイ上に表示させるアイテムです。

 その上で地図データから目的地を絞り込み、ルートを探索して案内することがカーナビの基本機能です。

カーナビの表示は進行方向を上にする「ヘディングアップ」にする人が多いのではないだろうか
カーナビの表示は進行方向を上にする「ヘディングアップ」にする人が多いのではないだろうか

 このカーナビは、自家用車だけでなく営業車やトラックなども含め、いまやほとんどのクルマに搭載されています。最新の道路地図やリアルタイムの交通情報などが反映されるスマートフォンの地図アプリを使う人も多いですが、それでもカーナビそのものは、車載機器として必須のアイテムになっています。

 カーナビの歴史は、いまから42年前の1981年に遡ります。

 ホンダが世界初の地図型カーナビとして「ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータ」を開発し、それを2代目「アコード」に搭載して発売したのです。

1981年に登場した「ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータ」。世界初のカーナビとしてIEEEに認定された。地図として使ったフィルムが左端に見える
1981年に登場した「ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータ」。世界初のカーナビとしてIEEEに認定された。地図として使ったフィルムが左端に見える

 当時はGPSもないため、スタート位置を自分でセットすることからはじめ、地図は当時のドライブマップとして売れていた昭文社製「マップル」をフィルム化したものをエリアごとに1枚ずつ差し替えて使っていました。

 このホンダ・エレクトロ・ジャイロケータは、今のカーナビのようなルート案内はせず、地図上を光でたどる自車位置を視認しながら目的地へと進んでいったのです。

「ルート案内をしないカーナビなんてどうやって使うの?」なんて声が聞こえてきそうですが、当時は自分の位置が地図上に表示され続けるだけでも驚嘆ものだったのです。ただ、目的地の方向は自分で判断する必要があったため、それをを知るためにも地図は北が上の「ノースアップ」を採用していました。

 その後パイオニアが、1990年に地図をデジタルデータ化してCD-ROMに収め、GPSを使うことで自車位置を自動的に地図上に表示する「AVIC-1」を発売します。マツダもこの年にデビューした「ユーノス・コスモ」に、三菱電機製のGPSで現在地を測位するCCS(カーコミュニケーションシステム)を登場させています。ただ、いずれもルート案内をしないこともあって、地図は北を上としていました。

 その流れが大きく変わったのは、ルート案内機能備えるようになってからです。

 これが可能となったとき、自車位置を基準として地図を回転させる「ヘディングアップ」が初めて登場しました。最初は地図は北が上であることが当たり前だった時代。「北が上でない地図なんて使い物になるのか?」と思いましたが、カーナビがルートを案内してくれるので、分岐点さえ気にしていれば目的地に到着できることに感動したことを憶えています。

 この発想は、ひとつはそれまでの紙地図の時代でも、進行方向に合わせて地図を回転させて使う人が少なからず存在しましたが、その使い方にヒントがあったということ。もうひとつのヒントは、欧米人がよく使う道案内方法でした。

 日本人が地図を描くときは、多くがルート全体を描いて、その途中で分岐点を書き加える方法で対応します。それに対して欧米人の多くは、地図全体を描くこととはせず、現在地から分岐点を追加して目的地までのルートを描きます。この方法をカーナビに採用したのがヘディングアップだったのです。

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