VAGUE(ヴァーグ)

悠久の知と静寂 日本最古の学舎「足利学校」で時間を味わう

 次なる目的地は、「史跡 足利学校」である。室町時代中期に関東管領・上杉憲実によって再興され、かつては3000人もの学徒を擁したこの場所は、宣教師フランシスコ・ザビエルに「日本国中最も大にして、最も有名な坂東の大学」と言わしめた、日本における知と教育の原点である。

  • かつての学徒たちが真理を追い求めたその場所で、袖口のカンパノラ「星響」が微かに時を刻む振動が伝わってくる

 門をくぐり敷地内に入ると、街の中心部にありながら、まるで隔絶された別世界のような深い静寂に包まれる。観光地特有の喧騒は一切なく、例えるならば歴史ある大図書館の閲覧室に足を踏み入れたときのような、ピンと張り詰めた知的な空気が漂っている。

 儒教の教えが息づくこの場所では、参観者自身も自然と歩みを緩め、心のトーンを落ち着かせざるを得ない。

 美しく手入れされた日本庭園を前に、方丈の縁側に腰を下ろす。あるいは、静謐な和室の畳の上で足を崩し、ただ無心に庭の木々を眺める。

  • 見上げれば、3月の柔らかな陽光が降り注ぎ、肌をなでる風もすっかり春の温もりを帯びている。冬の鋭さはどこへやら、吹き抜けるのは心地よい春の吐息だ

 足利学校が数世紀にわたって守り抜いてきたこの圧倒的な「静寂」は、現代人が最も渇望しながら、日常では最も手に入れにくい贅沢である。

 視界に入るのは、静止したように見える庭園の風景だけ。耳から入ってくるのは、鳥のさえずりと風の音のみ。スマートフォンを取り出し、未読のメッセージやSNSのタイムラインを確認する行為は、ここでは明らかなノイズである。

 足利学校という「知と時間を継承する」空間に身を置くことで、訪れる者は完全に日常のストレスから解放され、自己の心のウェルネスを整えていくのである。

旅の終着地 天空テラスの夜景と、静寂に響く「星響」

 足利学校での知的な時間を終え、再びステアリングを握り、旅の最終目的地である大岩山の「天空テラス(天空西公園)」(足利市)へと向かう。

 関東平野を一望できるこの高台で、マセラティのエンジンを切り、夕日が沈みかけ、空が茜色から深い藍色へと変容していく壮大なパノラマを眺める。

  • 茜から藍へ。天空のパノラマに響くカンパノラ「星響」が、旅の終わりを静かに告げる

 眼下の街並みは、やがて光の海へと移り変わっていく。周囲のノイズがすっと消え、山頂には澄み切った空気と、圧倒的な静寂だけが残る。

 スマートフォンのバックライトで時間を確認する衝動を抑え、あえて視線を遠くの美しい夜景に向けたまま、腕元にあるカンパノラの2時位置、ゴールドのプッシュボタンを静かに押し込む。

「キンキンキン、キントンキントン……」

  • カンパノラ初となるデュラテクトDLCを施したバンドとケースは、光を吸い込み、宇宙の深淵なる神秘をその身に宿している

 高く澄んだ音と、低く深みのある鐘の音が、天空テラスの静かな空気の中に波紋のように広がる。視界が奪われた暗闇の中で、聴覚だけを頼りに時間を認識するこの体験は、非常に私的で濃密な行為である。

 それは「時間を測る」のではなく、「積もる時間」を俯瞰する感覚であり、忙殺される日常から完全に切り離されたサンクチュアリを構築する。

  • カンパノラ「星響」が奏でる最後の鐘の音が、夜の空気に溶けていく

 この足利を巡る旅程は、単なるドライブではなかった。官能的なエンジン音、巴波川のせせらぎ、物外軒の水琴窟が奏でるかすかな反響音、そして足利学校の知的な静寂。

 これら音風景の連なりを経て、最後に「星響」の澄み切った鐘の音を聴くとき、時間は成熟した大人にのみ許された、究極のウェルネスへと昇華する。

「時は、聴くものだった。」

 その真理を体現する時計とともに、上質な時の流れを自らの人生に刻み込んでいく。それこそが、情報過多の現代において、日常の腕元でマインドフルネスを取り戻す唯一の作法なのである。

「星響」について詳しく知りたい方はこちら

カンパノラ 25周年記念「星響」コレクション その他の限定モデル

 本稿で旅のお供としたミニッツリピーターに加え、「星響」コレクションには、ブランドの粋を集めた残り2つの特別なモデルがラインナップされている。

匠の技が息づく小宇宙 「メカニカル」

モデル名:25周年記念限定モデル「星響」メカニカル(NZ0004-57E・限定150本)
価格(消費税込み):132万円
スペック:Cal.Y513 機械式(精度-5~+10秒/日)、日常生活用防水、厚み14.0mm/横幅42.0mm、ケース・バンド:ステンレス(デュラテクトDLC・ブラック色)

  • 25周年記念限定モデル 「星響」 メカニカル(NZ0004-57E・限定150本)

 スイスのラ・ジュー・ペレ社製ムーブメントを搭載した機械式時計である。会津塗の伝統工芸士・儀同哲夫氏が手作業で仕上げた漆塗り文字板を採用しており、きらめく螺鈿(らでん)細工とプラチナ粉の蒔絵(まきえ)によって、漆黒の宇宙空間に瞬く無数の星々が美しく表現されている。

 ケース全体を覆うデュラテクトDLCの深淵な黒と、随所に配されたゴールドのアクセントが絶妙なコントラストを生み出し、ひとつとして同じ表情を持たない芸術品へと昇華されている。手首の動きに合わせて微細に光を反射する文字板は、持ち主にだけ語りかける特別な小宇宙そのものである。

複雑機構の極致 「グランドコンプリケーション」

モデル名:25周年記念限定モデル「星響」グランドコンプリケーション(AH4084-51E・限定250本)
価格(消費税込み):50万6000円
スペック:Cal.6772(精度±20秒/月)、日常生活用防水、厚み16.5mm/横幅43.0mm、ケース・バンド:ステンレス(デュラテクトDLC・ブラック色)

  • 25周年記念限定モデル 「星響」 グランドコンプリケーション(AH4084-51E・限定250本)

 ミニッツリピーターに加え、月の満ち欠けを示すムーンフェイズ、2100年まで修正不要のパーペチュアルカレンダー、そしてクロノグラフという4大複雑機構を凝縮したカンパノラの技術の結晶である。

 ミニッツリピーターが奏でる高低2つの音が響き合う様を視覚的に表現した文字板が特徴で、電気鋳造技法による精緻な意匠が施されている。他モデル同様、ブランド初となるオールブラックのデュラテクトDLCケースにゴールドカラーのパーツをあしらい、時空を超えた宇宙の調和を体現している。複雑極まりない情報を美しく整理した機能美と、圧倒的な存在感が魅力である。

[LOCATION]
・アストルカフェ
・足利学校
・物外軒
・大岩山 天空西公園 天空テラス

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「カンパノラ」を詳しく知りたい方はこちら

「星響」について詳しく知りたい方はこちら

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三宅隆
三宅隆
VAGUE編集長
1978年大分県生まれ。ライフスタイル誌等の編集部を経てWebメディア『VAGUE』編集長に就任。スイスで行われる世界最大の時計見本市「Watches & Wonders Geneva」を取材するなど、腕時計からモビリティ、最新家電、アウトドアまで大人の審美眼にかなうモノを幅広く追究。自らもキックボクシング歴17年の非常勤インストラクター(KNOCK OUT GYM)として活動し、ビジネスパーソンにウェルネスを提唱。「自分らしく輝く」ために自らをデザインする前向きな生き方の基準として、心身を整える実践者の視点を交え、自分らしい豊かさへの指針を発信中。

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