緻密な職人ワザが施されたインパクトある“逆さ富士”
高速道路でも一般道でも、終始、なめらかな走りを味わわせてくれるフライングスパーでのドライブは快適のひと言だ。車内では窪川さんとベントレーや建築に関する話題で盛り上がる。
そうこうしているうちに雨も上がり、正面に印象的な建造物が見えてきた。静岡県富士山世界遺産センターのシンボルともいうべき木格子で組み上げた“逆さ富士”だ。
「“逆さ富士”というと、一般的には山梨県側にある湖の湖面に映り込む富士山を思い浮かべますが、本物の富士山をバックに建つこちらでは、あえて木格子の外壁で“逆さ富士”を表現し、それを富士山の湧水を引き込んだ水盤に映り込ませることで、水面に正対の富士山が浮かび上がるようにしています。このファサード(建物正面外観)を観るために、海外からも多くの人が足を運んでいるのもうなずける出来栄えです」(窪川さん)
“逆さ富士”がモチーフのファサードは、底部の直径が10m、上部の直径が46m、高さは46mという楕円形。その周囲を、富士ヒノキを切り出してつくった木格子で囲んでいる。
「写真で見たときは単なる円すい形の建物だと思っていたのですが、しっかりと富士山に見せるために末広がりの楕円形になっています。周囲の木格子に使われる木材も、建物自体の曲線やひねりを考慮し、3次元加工によって削り出されたものを使っている。単に木材をまっすぐ切り出しただけの角材では、この凝った形状は表現できなかったでしょう。見る者を圧倒するインパクトの陰に、実は緻密な職人ワザが施されています」(窪川さん)
さらに興味深いのは、この“逆さ富士”がインパクトのある外観の演出だけでなく、建物の内側にも機能性を持たせていることだと窪川さんは続ける。
「“逆さ富士”の内部は、1階から5階の最上階まで、ゆるやかならせん状のスロープでつながっています。この斜路を最上階目指して上がっていく間に、スロープに映し出される数々の展示を鑑賞できるという仕組みですね。
そして、最上階まで上った先に展望ホールがあり、天気がいい日には大きなピクチャーウインドウの先に刻々と表情を変える富士山の雄大な姿を鑑賞できます。建物全体で富士登山を疑似体験できるようになっているんですね」(窪川さん)
●サルーンとスポーツカーの顔を併せ持つ
かねてから鑑賞したかった“逆さ富士”に盛り込まれた技術やアイデアを満喫した帰路は、再び窪川さんがフライングスパーのステアリングを握って都心へと走らせる。
実際に走らせてみると、フライングスパーはサルーンとしての顔と、スポーツカーの顔、双方を併せ持っていると窪川さんは指摘する。
「リアシートでくつろぎながら移動するときはショーファーカーそのもので、まるでVIPにでもなったかのような心地よさを味わえます。特に高速道路での移動時は、新幹線に乗っているかのようにスムーズで、揺れもほぼなく快適でした。
それに対して、ステアリングを握っているときはスポーツカーのようですね。ボディは大柄ですが小さなカーブが続くワインディングでも小気味よく向きを変えてくれますし、この手のサルーンでイメージしがちなヨタヨタと不安定な挙動もない。それでいて、路面の凹凸を乗り越えてもゴツゴツと突き上げる衝撃がないのは不思議な感覚でした。
建築と同じくらいクルマが好きということもあって、これまでドイツ車やアメリカ車、そして日本車などを何台も所有してきましたが、フライングスパーはどれにも似ていません。イギリスのラグジュアリーカーならではの色気を、見た目でも走りでも感じさせてくれる。世界的に高い評価を得ているのも納得ですね」(窪川さん)
インパクトある建築物の秘密を探るべく、英国有数のラグジュアリーサルーンで出かけた今回の旅。それは、大人の知的好奇心を満たす至極の時間となった。
●BENTLEY FLYING SPUR V8
ベントレー フライングスパー V8
・車両価格(消費税込):2546万5000円
・全長:5325mm
・全幅:1990mm
・全高:1490mm
・車両重量:2480kg
・エンジン形式:V型8気筒ツインターボ
・排気量:3996cc
・駆動方式:4WD
・変速機:8速AT(デュアルクラッチ式)
・最高出力:550ps/5750〜6000rpm
・最大トルク:770Nm/2000〜4500rpm
・最高速度:318km/h
・0-100km/h加速:4.1秒
●BENTLEY
https://www.bentleymotors.jp/models/flying-spur/
●取材協力
静岡県富士山世界遺産センター
静岡県富士宮市宮町5-12
https://mtfuji-whc.jp/
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