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VIP仕様の“ロンドンタクシー”は後席がゴージャス「お金持ちをアピールせずに乗れるリムジン」の魅力とは

「目立ちたくない」VIP向けの高級カスタム車両

 イギリスでは、“ロンドンタクシー”をベースにカスタムした高級VIP仕様を購入することができます。手がけているのは、イギリス・ロンドンでアメリカ車の輸入を得意とするクライブ・サットン。1990年代はクライスラーやジープの正規ディーラーを営み、販売台数はヨーロッパでも屈指の実績を誇っていたという輸入車ディーラーです。

イギリスの輸入車ディーラーであるクライブ・サットンでは、“ロンドンタクシー”をベースとするVIP仕様のリムジンを販売中(C)Clive Sutton
イギリスの輸入車ディーラーであるクライブ・サットンでは、“ロンドンタクシー”をベースとするVIP仕様のリムジンを販売中(C)Clive Sutton

 クライブ・サットンは現在、シェルビー、ダッジ、ラムなどの正規ディーラーを営んでおり、自社でキャデラックやシボレー、アメリカ・フォードの右ハンドル車をイギリスへと輸入しています。また、右ハンドル仕様のアメリカ車を東南アジアやアフリカの一部へと輸出しているのだとか。世の中にはいろんな商売があるものですね。

 そんなクライブ・サットンが自社で手がけているのが、リムジン仕様へのカスタムです。ミニバンの高級カスタムは日本のショップも得意とするところですが、イギリスではメルセデス・ベンツのミニバンである「Vクラス」や商用車の「スプリンター」をVIP仕様へカスタムするのが流行っていて、同社も手がけているのです。

 そんなクライブ・サットンの最新作が、LEVC(London Electric Vehicle Company)のタクシー向けモデル「TX」をベースとするカスタムカーです。なお現在、ロンドンの街を走るタクシーにはさまざまな車両が用いられていますが、昔ながらの“ロンドンタクシー”のデザインは、TXのみが引き継いでいます。

 LEVCのTXは、レンジエクステンダーを備えた電気自動車です。航続距離は31kWhのバッテリーだけだと78マイル(約125km)、1.5リッター3気筒エンジンが発電する電力を使うと合計333マイル(約536km)の走行が可能だといいます。

 最近の富裕層は二極化が進んでいる模様で、目立つことを重要視する人もいれば、“目立たない”ことを重んじる人たちもいらっしゃいます。クライブ・サットンが手がけるVIP仕様のロンドンタクシーは、後者に向けたカスタム車両です。ロンドンタクシーを見て、まさかセレブが乗っているとは誰も思わないはず。パパラッチの目をあざむくにはうってつけのモデルです。

●高級フルサイズセダンと比べて若干お安め!?

 VIP仕様のロンドンタクシーは、リアシートの乗車定員を2名、3名、5名(折りたたみ式イス2席を含む)から選べ、内装には本革、本木目パネルがふんだんにおごられています。

 ルーフライナーはアルカンターラ製で、LEDを埋め込んだスターライト仕様を選ぶこともできます。要は、ベース車両であるロンドンタクシーのチープな部分を徹底的に高級化しているのですね。

 オーディオシステムは高音質なものへと入れ替えられ、本革はベントレーと同じものを、折りたたみ式のリアテーブルはメルセデス・マイバッハと同じものを装備しています。また、最近のロールス・ロイスのように、傘はボディにビルトインされる仕様となっています。

 20インチのリアモニターはAppleTVに対応したもので、USBやHDMIポートももちろん装備。またオプションとして、「PlayStation」や「Xbox」、5G対応モバイルルーターも用意され、移動中に車内でゲームを楽しむことも可能です。

 そのほかリアドアには、最新のロールス・ロイスと同様、ボタンひとつで閉めることができるオプションも設定されています。もっといえば、ロールス・ロイス「ゴースト」のドア機構と同じものです。加えて、リムジンらしくドライバーとリアシートを隔てるパーテーションを設けることもできます。

 気になる価格はベース車が6万5000ポンド(約1081万円)で、カスタマイズを含めると15万ポンド以上になる(オプションや仕様によって異なる)とのこと。セレブ御用達のロールス・ロイスやベントレーといった高級フルサイズセダンと比べると、若干お安く感じられます。

 お金持ちに見えないクルマにお金持ちが乗り、しっかり高級車しているというカスタムのコンセプト、実に面白いですね。

Gallery 【画像】VIPのためにカスタムされた“ロンドンタクシー”のリムジンを画像で見る(9枚)
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