カッコイイ伊達男が集まる最新ファッショントレンドがわかる「ピッティ」とは【ブランドの旅】
着飾った「ピーコック」と呼ばれる男たちの正体は?
さて、ピッティという言葉をすでにご存知の方の多くは、その会場内を歩くお洒落な男性達のスナップ写真をメンズ雑誌で見た、という方々ではないでしょうか。ピッティの門をくぐることが出来るのはアパレル関係者が中心のため、一歩中に入ればそこはファッションショーのランウェイのような雰囲気です。

彼らのスナップを掲載したメンズ誌の登場により、日本でもピッティという単語の知名度が飛躍的に上がりました。わたくしが通い始めた25年前は、スナップを撮影する人(ましてや本職のカメラマンの方)の姿はほとんど無く、来場者も基本的にビジネススタイルで、かっちりしたスーツに身を固めた方々が多かったと記憶しています。
その中でも、色合わせやシルエット、素材感などでそれぞれの個性が感じられる人々がいて、その頃からわたくしはカメラを持って声をかけ、写真を撮らせて頂いていました。帰国後はそれを現像して、フォトアルバムにまとめ、お店のお客様方にお見せしていたものです。
年を重ねても、体型がモデルのようでなくても、鮮やかな色合いのアイテムや上質の素材の品をさらりとかっこよく着こなす彼らの装いをまとめたアルバムは、ファッションの生きた見本帳のようでもありました。
●伊達男たちの祭典
ここ10年ほどでしょうか。急激に参加者の装いのカジュアル化が進み、また、スナップを撮るカメラマンたちの数が増えるにつれ「自身の着こなしを発信する」ことを目的としたブロガーやインスタグラマー、「自社イメージをPRする」目的でモデルを雇って会場内を闊歩させているブランドなどが多く見受けられるようになりました。とくに会場内でもっとも大きな建物に続く通路は「撮りたい」「撮られたい」人々で溢れています。
「目立ってなんぼ」的な世界になっているため、そのファッションもだんだん奇抜なものになっており、中には「それはもはや仮装では?」と思うようなスタイルの人たちも増えています。中には1日に5回も6回も着替えては会場内を練り歩き、スナップを撮られている人も。そうした人々は「ピーコック(くじゃく)」と呼ばれているようです。

●ピッティは物語に出会う場
ピッティでは、作り手がその場でデモンストレーションをしたり、デザイナー本人が商品の説明をしてくれることもあり、写真やカタログでは得ることが出来ない刺激も溢れていました。いわゆる「紳士服」以外にも傘やステッキ、靴べら、革小物などの身の回り品、そして店で使う紙袋(ショッパー)やハンガーを作る企業のコレクションも展示されています。
印象的だったのはカエルのコインケースです。なんと、本革。カラフルで、そしてちょっと生々しいそのコレクションはピッティの中でも異彩を放っていました。立ち止まって眺めていると、デザイナー自ら「どんな思いでこれを作り出したのか」を語り始め……。
「これは、ある国へ害虫駆除のために他国から連れて来られたカエルたちなのです。思惑通り害虫をどんどん食べてくれたものの、今度はこのカエルが大繁殖し、現地の生態系を壊し始めてしまった。これではいけないと、今度はそのカエルを駆除し始めたのです。自分たちの都合で連れてきておいて駆除する、こんなひどい話はないですよ。私はこの問題を世界に提起するためにこのコインケースを作っています」と。
一見するとただ奇をてらっただけの面白アイテムのようなそれは、「環境保護と動物愛護」を訴えるという真剣なテーマを背景にしていたのです。
一般的には、多くのブランドにとっての国際見本市の役割は「各国からやってくるショップのバイヤーたちに、自社商品のPR、そして自社イメージを広く認知させる」ことだと思うのですが、こうした思わぬアイテム、物語との出会いは、ピッティならではだと感じました。
世界規模でコロナ禍の影響を受けている現状としては難しいですが、また情勢が良くなれば是非、あのピッティの熱気と刺激の輪の中に飛び込んでみたいものです。
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