ADAS黎明期から開発に乗り出したキャデラック
エモーショナルな革新的デザインの追求と並行し、キャデラックはクルマをより便利で魅力的なものとすべく、黎明期から世界初の技術を次々と開発、実用化してきた。
その過程で誕生したエポックなコンセプトカーが、1959年に発表された「サイクロン」だ。月面着陸を夢みるアメリカ人のスピリットを反映したかのような、宇宙船を想起させるデザインで大いに注目を集めたサイクロンには、すでに自動運転の概念が盛り込まれていた。
フロントタイヤの前方、両サイドに備わる“ツインドーム”のなかには、他の車両や物体を検知し、光や音でドライバーに警告する探知ユニットを搭載。アクティブセーフティを追求すべくレーダー探知技術も導入するなど、衝突を回避できるごく初期のシステムを備えていた。いまや欠かせない存在となりつつあるADAS(先進運転支援システム)の先駆けともいうべき機能を、60年以上前のコンセプトカーで提案していたのだ。
そして1970年代以降、キャデラックは走る・曲がる・止まるというクルマの基本要素の追求と同時に、安全性と快適性を向上させる先進技術の開発に注力していく。
安全性においては、1974年にいまやスタンダードな装備となったエアバッグを世界で初めて導入。それだけにとどまらず、1996年にはエアバッグ展開通知機能を備えた業界初のテレマティックスシステム“オンスター”を発表する。これにより、万一、事故が発生した場合には、センサーが反応して直接、事故現場に支援を送ることができるようになった。
またキャデラックは、いち早くトラクションコントロールを搭載したブランドとしても知られる。これにより、雨の日などのすべりやすい路面でも人々は安心してドライブできるようになったのだ。
先進安全装置の開発にも積極的に取り組んできたキャデラックが、2000年に実用化した注目技術といえば、「デビル」が搭載した“ナイトビジョン・テクノロジー”だろう。
これは軍事用に開発されたシステムを自動車向けに応用したもので、クルマの周辺環境に対するドライバーの視認性を強化することに成功。現在、世界の高級車ブランドがフラッグシップモデルを中心に採用を進めていることからも、キャデラックの先見性が光る。
またキャデラックは、2012年に“スーパークルーズ”と呼称する先進のADASを発表している。
スーパークルーズは車載のカメラ、レーダー、そしてGPSを含むさまざまなセンサーをシームレスに統合するシステムで、特定の走行条件において車線の自動追従やブレーキおよび速度制御を可能とし、高速道路における渋滞や長距離ドライブにおけるドライバーの負担軽減を実現する。“高速道路において真の自動運転を実現させる世界初の技術”とうたわれるスーパークルーズは、現在、すでに北米地域の多くの高速道路においてハンズフリードライブを可能にしており、今後、世界的にスタンダードな装備となることが期待される。
●市販車開発の聖地でクルマの基本性能向上に挑戦
21世紀を前に、新たなデザインコンセプト“アート&サイエンス”を打ち出そうとしていたのと同じころ、キャデラックは市販車開発の聖地とされるドイツのニュルブルクリンクに開発車両を持ち込み、シャシー性能を大幅に引き上げるという革新的な挑戦をスタートさせた。走る・曲がる・止まるというクルマの基本性能を、あらためて追求しようという試みだ。
このチャレンジにより大幅に車体や足回りが強化されたキャデラックの各モデルは、ドイツ車をはじめとする世界のライバルをしのぐ走行性能を獲得するに至った。
ちなみに2008年には、6.2リッターV8スーパーチャージドエンジンを搭載する「CTS-V」を発表。ニュルブルクリンクで当時の4ドアサルーン最速記録をマークするなど、超一流のパフォーマンスを獲得することに成功している。
そんなCTS-Vが搭載し、注目を集めた技術のひとつが“マグネティック・ライド・コントロール”だ。
これは、電磁石とショックアブソーバー内の磁性流体を組み合わせたアクティブダンピングシステムで、流体内の磁力を変化させることでダンパーの減衰力を瞬間的に変えることができる仕組み。2002年の「セビルSTS」への初搭載以降、この先進的なサスペンション技術は進化を重ね、2022年現在では4代目へと進化、世界最速の応答性を誇る。
マグネティック・ライド・コントロールの美点は、パフォーマンス面だけでなく快適性においても効果を発揮すること。それは、フラッグシップSUVの「エスカレード」が搭載することからも明らかだ。クルマを速く走らせるだけでなく、クルマでの移動を快適にするということも、ラグジュアリーカーブランドであるキャデラックの使命なのである。
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キャデラックの歩んできた120年は、デザイン、テクノロジーともに常にオリジナルを追求し、未知の世界へと挑戦し続ける歴史であった。そんな彼らの姿勢は、キャデラック初の量産電気自動車となった最新モデル「リリック」にも色濃く受け継がれている。
エモーショナルなデザインとロジカルなテクノロジーを兼備するリリックは、まさにキャデラック120年の集大成と呼ぶにふさわしいモデルといえるだろう。
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