「Apple Watch Ultra」でアウトドア市場に参戦! 新作群に見るAppleのスマートウォッチ戦略とは
競合他社の「皮膚温」へのアプローチも気になる
しかし、Appleもそんなことは当然分かっている。実は、Apple Watchでは、温度を計るセンサーをふたつ搭載していて、皮膚温を測定しながら、ディスプレイ側の環境温度も測る仕組みになっているのだ。
「いまは空気の温度が何度だから、皮膚温にどんな影響があって――」と測定値を補正することで、皮膚温を意味のある数値指標に変えるというアプローチをしている。ゆえに寝ている時の腕が布団の下だろうと、上だろうと問題ないわけである。
その上で、睡眠スケジュール内で4時間以上の睡眠をした場合の測定した体温を記録する。その変動によって、女性の周期的な体調変化を推測していくという理屈だ。
皮膚温の計測機能というのは、実はすでに一部のスマートウォッチで搭載されていた。例えば、「Fitbit(フィットビット)」の上位モデルである「Fitbit Sense」などが良い例である。なお、同社は2021年1月にGoogleに買収されている。同社が22年秋の発売を予告した「Google Pixel Watch」も、皮膚温測定機能が搭載されるかどうかは、気になるところだ。
さて、以前「Apple Watch 6」が「血中酸素ウェルネス」と称して「SpO2(動脈血酸素飽和度)」の測定機能を搭載したあとには、多くのメーカーがこぞってSpO2を測定できる新製品を発表した。今回も、Apple Watchの対応をうけて、皮膚温測定機能を搭載した製品が増える可能性は高いと思う。
スマートウォッチ市場は、今後の将来性が期待されており、そのなかでも女性ユーザーの伸び率に期待をかける声は、メーカーの発表イベントなどでも少なからず耳にするものだ。Apple Watchの皮膚温測定機能が、この市場の起爆剤になるのか否か、今後に注目したい。

「SE」は衝突事故検出への対応が大きいか
米国の物価高や、円安が進む昨今、日本国内のユーザーにとっては普及価格帯モデル「Apple Watch SE(第2世代)」の重要性も高い。こちらは2020年に発売された第1世代から2年ぶりの刷新となった。GPSモデルなら価格は3万7800円~であり、アウトドア向け機能や、常時表示ディスプレイ、皮膚温センサーといった「付加価値」に興味がなければ、十分満足できる仕様ではある。
一方、シリーズを共通しての新機能である衝突事故検出機能は、SEもしっかりサポートした。高重力加速度センサーや、ハイダイナミックレンジジャイロスコープ、気圧計など複数のセンサーを活用して、万が一の自動車事故の衝撃などを感知。操作がない場合に――通信に必要な条件を満たしていればだが――緊急SOS発信を自動で行ってくれる。
昨今は日本国内でも、HUAWEIや、OPPO、シャオミ、Amazfitなど、中国企業が展開する低廉なスマートバンドや、割安ながらも多機能を備えたスマートウォッチなどの選択肢が増えた。歩数や活動量が知りたい、運動時の心拍数が知りたいというユーザーにとっては、1~3万円あれば、さまざまな製品は入手できてしまう。

こうした時代において、Apple製スマートウォッチの入り口として「Apple Watch SE」が重要な役割を担っている状況は変わらない。従来もOSレベルでのiPhoneとのシームレスな連携や、使い勝手の良さといった魅力を備えていたが、今回のアップデートではそこに万が一の衝突事故に備える「お守り」という訴求力も加わったわけだ。
もちろん、このような万が一のお守り機能にどこまで価値を見出せるかは人によるだろう。しかし、Apple Watch SEでスマートウォッチデビューを考えるユーザーにとって、いままで以上に魅力的な端末になったことは間違いない。
こう見ると、ハイエンドモデルでは手付かずだったアウトドア市場に参入し、スタンダードモデルでは皮膚温測定機能によって女性ユーザーの拡大を図り、入門機ではきっちり機能の底上げをしてきている。初見では、どうしてもApple Watch Ultraのインパクトに目が行きがちだが、Appleとしてはマーケット全体を視野に入れており、アウトドア市場へのチャレンジを含めて、堅実な展開をしてきたことがよく分かる。
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