「Apple Watch Ultra」でアウトドア市場に参戦! 新作群に見るAppleのスマートウォッチ戦略とは
アウトドアウォッチ市場への本格参戦
Apple Watchとしては、「Series 8」「SE」「Ultra」の3機種が用意された。
なかでも目を引くのは、新しく追加された「Ultra」だ。同機は、米国国防総省が定める物資調達基準の「MIL-STD 810H」に準拠するテストをクリアした耐久性を備えており、登山やダイビングなど、過酷な環境下でも使える。また、グローブの装着を考慮し、「アクションボタン」という物理ボタンも追加されている。
ほかにも、バッテリー持ちが通常モードで最大36時間まで強化されていたり、画面輝度が最大2000ニトになっていたり、L1+L5の高精度2周波GPSに対応したり――と屋外利用を前提にしたからこその魅力は多い。
ただし、Appleの公式サイトでの販売価格は、12万4800円(消費税込、以下同)から。選択肢もGPS+Cellularモデルのみ。ウォッチでありながら、iPhone 14の128GBモデル(11万9800円)よりも高額だ。アウトドアシーンに特化したニッチなラインナップと捉えるべきだろう。
そもそも、スマートウォッチ市場全体としては、Apple Watchはトップシェアを誇る。例えば、市場調査会社Counterpoint Researchによれば、2022年Q1時点におけるグローバルの出荷シェアは、Appleが36.1%を占めたとされる。

競合他社がひしめく業界へのチャレンジ
しかし、“アウトドア向けのスマートウォッチ”という視点では、Appleは後発だ。この辺りは、米国の「Garmin(ガーミン)」や、フィンランドの「Suunto(スント)」、中国の「Amazfit(アマズフィット)」、そして日本の「カシオ」などが得意としてきた市場である。
例えば、ガーミンが複数展開する上位モデルのなかから「fēnix 7 Sapphire Dual Power」のバッテリー持ちと価格を見てみよう。同機は、スマートウォッチモードで約18日間、文字盤でのソーラー充電を組み合わせればさらに+4日間ほど駆動する。GPSモードに切り替えても、約57時間駆動し、ソーラー充電を組み合わせれば+16時間ほど駆動する。これでメーカー直販サイトでの定価は、12万1000円だ。
こうした競合と比べてみると、12万円台というApple Watch Ultraが、アウトドア向けスマートウォッチのジャンルにおいては、ずば抜けて高額なわけではないという事実も見えてくる。Apple Watchならではの使用感などは、付加価値としてどう評価されるのか。そして、通常モードで36時間、低電力モードを有効にして最大60時間使えるというスタミナで、どこまで対象ユーザーに訴求できるのかという点は、今後の市場の反応が気になるところだ。
「8」は、女性ユーザーに訴求する起爆剤になるか
一方、「Series 8」は、GPSモデルが5万9800円~。ウォッチとして決して「安価」とは表現しづらい価格帯ではあるが、一般ユーザーとして手を伸ばしやすい範囲に収まっていることは確かだ。ラインナップとしても、主力製品はこちらと見るべきだろう。

注目すべき新機能は、「皮膚温」の測定が行えるようになったことだ。Apple Watch Series 8では、0.1℃単位で皮膚温を測定でき、ヘルスケアアプリと連動して、女性の周期的な体調の変化を理解するのに役立つようになった。
ここで、勘の良い人は、測定できるのが「体温」ではなく、「皮膚温」とされていることに気づくはずだ。この皮膚温は環境変化の影響を受けやすい指標でもあり、扱いが難しい。例えば、気温の変化や、手が布団のなかに入っているのかどうかなどでも、容易に変動してしまうからである。
そもそも、人の体温を計るときには、「深部体温」を測定するのが正確であり、本来ならば、耳や、口、直腸などで計るべきとされる。よくある体温計を脇に挟む測定方法も、10分以上の時間をかけて「平衡温」を測定するか、数十秒程度で平衡音の予測値を表示するか、といった仕組みになっている。これが女性の基礎体温測定になると、さらに起床時に安静状態のまま計る必要も出てくる。
要するに、手首での測定というのは、体温の基本について少し調べたことがある人からすれば「そんなデータで本当に役立つのか?」、と疑問を抱きかねないチャレンジにも思えるわけだ。
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