VAGUE(ヴァーグ)

“可能な限り修理する” メンテナンスの観点から考える「グランドセイコー」の価値とは?

●「資産価値を永続するブランドとは、時計を直し続けてくれるブランドである」

 この数年で、時計のセカンドマーケットは大きく伸びている。復刻モデルが増えたことで、そのオリジンとなるヴィンテージウオッチに対する注目度が高まっているという理由もあるし、サザビーズやフィリップスといった著名なオークションハウスが高級時計のオークションを積極的に手掛けているため話題性が増したということもある。そしてこういったニュースには、“資産としての腕時計”という話題が付きまとう。

 今や高級時計は、資産価値を意識して選ぶ時代にもなっている。では“グランドセイコーの資産価値”はどうなっているのだろうか?  

銀座4丁目のシンボルである“時計塔”は、服部時計店があった場所であり、現在は「セイコーハウス銀座」として、日本から世界へとセイコーブランドの情報を発信する場となっている。こういった聖地があることも、グランドセイコーの価値を高めるのだ。
銀座4丁目のシンボルである“時計塔”は、服部時計店があった場所であり、現在は「セイコーハウス銀座」として、日本から世界へとセイコーブランドの情報を発信する場となっている。こういった聖地があることも、グランドセイコーの価値を高めるのだ。

 大前提として、こういったセカンドマーケットで価値を維持し続けるためには、まずは安心できるメンテナンス体制を完備していなければならない。機械式時計は定期的にメンテナンスやオーバーホールを行えば、数百年でも使い続けることができ、価値を正しく保ち続けることになる。すなわち資産価値を永続するブランドとは、時計を直し続けてくれるブランドであるということだ。

 その点、グランドセイコーは安心である。グランドセイコーの時計のメンテナンスやオーバーホールは、セイコーのグループ企業のひとつ、「セイコータイムラボ」の中に設置された「グランドセイコーサービススタジオ」が担当する。個々の時計は使用状況などが全て異なり、不具合箇所や修理に必要とする部品なども異なるため、製造時期に関わらず一旦預かり、一本一本、状態を確認した上で、修理できるよう最大限取り組んでいるという。

 修理前の検査項目は50を超え、状態を確認した上で、高い専門技術を持った修理技能士がCCDカメラ装着した顕微鏡(マイクロスコープ ビジュアライジング システム:MVS)を駆使して、1/100㎜、1/100mgの精度で作業を行う。またオリジナルの状態を保ったまま修理を行うことをモットーとしている。

 ヴィンテージウオッチの世界では、オリジナルに忠実であることが最も価値がある。単に修理をすればよいのではなく、どのように修理をしているかも重要で、外側からは見えないムーブメントのオリジナル性も厳しくチェックされる。グランドセイコーも同様で、グランドセイコーサービススタジオの修理対応に基づいて、オリジナルに徹底的にこだわることで、その価値をさらに高めるのだ。

「グランドセイコーフラッグシップブティック 銀座」は、優雅な雰囲気の中でグランドセイコーの時計たちを選ぶことができる。店内には積み重ねてきた歴史を知ることができるライブラリーもある。愛する時計を深く知ることで愛着が湧く。それもまた価値を高めることになる。
「グランドセイコーフラッグシップブティック 銀座」は、優雅な雰囲気の中でグランドセイコーの時計たちを選ぶことができる。店内には積み重ねてきた歴史を知ることができるライブラリーもある。愛する時計を深く知ることで愛着が湧く。それもまた価値を高めることになる。

●ケースについた傷もパルスレーザーで溶接して埋め戻し研磨する

 オリジナリティを維持したまま動き続けることは資産価値を高める大切なポイントになるが、ケースやブレスレットといった外装の美しさも、長く愛していくための重要なポイントになる。そもそも腕時計は、常に傷がつく危険がある。多少のスレ傷程度ならは味わいにもなるが、大きな打痕は時計の美観を損ねてしまうし、使っている本人からしてもうれしいことではない。

 一般的なメンテナンスにもケースなどを磨き直すサービスがあるが、深い傷まで完全に消そうとするとケースのフォルムを崩してしまうことになる。特にグランドセイコーのケースは、美しい平面と稜線が特徴なので、これがダレてしまうと魅力は半減してしまう。

 そこで考案されたのが「レーザーレストア」という技術を活用した「外装リペアポリッシュサービス」。これは深い傷が入った所にケースと同じ素材の線材をパルスレーザーで溶接して埋め戻し、再びザラツ研磨とバフがけを行うことで傷を直すというテクニックで、ステンレススティールやチタンだけでなく、ゴールドなどの貴金属素材でも対応できるという。

 これならグランドセイコーらしいケースの特徴的なフォルムはそのままに、美しさを保ち続けることができるので、いつまでも愛着を持って使い続けることができるし、価値も永続するということになる。

 こういったグランドセイコーの美しさをいつまでも永続させるという姿勢を裏付けるように、銀座4丁目の「セイコーハウス銀座」の中にある「グランドセイコーフラッグシップブティック 銀座」では「グランドセイコー ファイン ビンテージウオッチ」というサービスを展開中している。

 これは「V.F.A」と呼ばれる高精度モデルや初期の手巻きモデルなど、1960~70年代初頭に製造された機械式のグランドセイコーを、「グランドセイコーサービススタジオ」の技能士がオーバーホール、精度調整をした高品質なヴィンテージモデルのこと。グランドセイコーの“可能な限り修理する”という信念を強く実感させるこのサービスは時計愛好家から支持されており、具体的な価格については、モデルやコンディションによっても大きく異なるが、世間に流通しているヴィンテージウオッチと比べ決して安くないという価格であっても常に品薄状態だと聞く。

外装の深い傷を直す画期的な技術を活用した「外装リペアポリッシュ」。同素材で傷を埋めてから磨くため、シャープな造形美を崩すことはない。
外装の深い傷を直す画期的な技術を活用した「外装リペアポリッシュ」。同素材で傷を埋めてから磨くため、シャープな造形美を崩すことはない。

 素晴らしいアフターサービス体制があるからこそ、愛着を持て長く使っていくことができる。それこそが最大の資産価値であり、高い満足に繋がるのだ。グランドセイコーは一生モノ。それは紛れもない事実であり、その価値はいつまでも永続するのである。

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