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なぜ釣り禁止エリアが復活!? 西伊豆漁港を「釣り天国」へ再生した日本初の「釣り場予約アプリ」が画期的な理由とは

●魚影の濃さは漁場をコントロールしているから?

國村さん:田子漁協で釣りを体験してみていかがでした?

VAGUE:とにかく景色がいいことと、魚が見えるほどの透明な海。そして、ゴミが落ちていないのが驚きです。

國村さん:野菜の無人販売所ってありますよね、あれを少しだけバージョンアップしたシンプルな仕組みを考えたんです。事業の主体は指定管理者である伊豆漁業協同組合 田子支所さん。ウミゴーは漁協さんが釣り場として管理するためのツールを開発してご提供している形です。

夏から秋にかけては、カンパチやイナダ、ワラサ、スズキなども漁港内を回遊。ソーダガツオはとくに良く釣れ、タチウオが現れる日もあるのだそう
夏から秋にかけては、カンパチやイナダ、ワラサ、スズキなども漁港内を回遊。ソーダガツオはとくに良く釣れ、タチウオが現れる日もあるのだそう

國村さん:ところで、利用料金の1時間300円ってどう感じました?

VAGUE:6時間釣りをするとして、駐車場込みで2400円。エリアトラウトの管理釣り場がだいたい5000円ですから、かなりリーズナブルと感じました。

國村さん:利用人数を最大30人に限定しているせいか、のびのび釣りが楽しめたという利用者が多いです。

VAGUE:ゆとりがあって、場所取りや割り込まれる心配がないってこんなにも快適なんだなと思いました。朝3時から釣りができるのはかなり嬉しいですね。

國村さん:釣り人として早朝の“朝マズメ”は絶対に外せません。24時間開放でスタートして現在は夜間だけ21時クローズに変更しましたが、開始時間にはこだわりました。

VAGUE:魚影の濃さにも感動しました。

國村さん:水深が約20メートル以上と深いことと、漁港の半分以上が釣り禁止であることが作用しているんです。釣りが出来ないエリアがあるからこそ魚が釣りきられることがないため、豊かな釣り場の持続が可能になります。巡り巡って釣り人のベネフィットを高めてくれているわけです。

VAGUE:そんな魅力的な釣り場がどうして釣り禁止になったのでしょうか。

國村さん:多くの釣り人が集まるということは、様々な人もやってきてしまいます。ルールのない釣り場は無法地帯になってしまい、マナーの良い釣り人さんもいらっしゃるものの、やはりルールを守れない方々が目立ってしまうという悪循環があったんです。

VAGUE:それが吹き出すかのようにトラブルが起きてしまい、とうとう釣り禁止になってしまった。

國村さん:首都圏に住んでいたときは沖堤に通っていたほどの釣り好きで、2022年に憧れの港が点在する釣り天国の西伊豆に移住。「思う存分釣りをするぞ!」とワクワクしていた矢先の出来事だったので落胆したのですが、「なんとかできるかもしれない」と思ったのが始まりでした。

VAGUE:海釣りを始めたいという人は多いんですけど、一緒に行ってみようよっていう場所がないんです。

國村さん:このままでは自分が釣りをする場所がなくなってしまいます。それに、田子地区ではダイビングや釣り客の多くが、商店や食事処を利用していました。釣り禁止になって静かにはなったものの、商店の売上が落ちるなど地元の経済にも悪影響が出たと聞いています。

VAGUE:地元の美味しい食事を楽しんだり、お土産を選んだりするのも釣り遠征の楽しみのひとつです。

國村さん:ごく一部が無茶をしてしまうと、釣り人全部が地元から目の敵にされてしまうのが現実なんです。

●そして釣り天国の復活へ

VAGUE:漁港はそもそも、漁業者などプロの方々が費用を持ち寄って運営している場所です。

國村さん:そこに釣人がフリーライドしていることがそもそも不自然。釣人も利用者の一員として、最低限の費用は釣り場維持のために拠出すべきだと思うんです。

VAGUE:ただ、釣人が漁協にお金を届ける仕組みがない。

國村さん:漁港にはゲートもないし、早朝から夜まで受付を常駐させるわけにもいきませんよね。そこで思いついたのが、アプリを介し釣り場として漁港を使った分だけ利用料としてお金を落とす仕組みの活用なんです。長年、IT業界でデザイン開発をしてきた経験が役立ちました。

赤崎堤防から眺める朝焼け。早朝3時から釣りができるのも嬉しいポイントです
赤崎堤防から眺める朝焼け。早朝3時から釣りができるのも嬉しいポイントです

 そうこうしているうちに、地元で生まれ育ち同じ思いを抱いていた西伊豆町役場の松浦城太郎さんと出会い、アプリのモックアップ(試作)を見せたら「水産庁が提唱する“海業”の流れにも沿っている。

 日本中の課題解決につながるかも!」と話が進み、漁協や役場に企画を説明していくフェーズに入っていきました。

VAGUE:港には様々な立場の人が関わっていて課題は多そうです。

國村さん:地元の方だって釣りが好きだし、なにより子どもたちが釣りや自然に親しめる場所がなくなってしまうのは悲しいですよね。漁協に通っては課題を伺い、ひとつひとつ解決したうえで、町議会で条例を改正していただきました。こうして2024年の7月31日、約1年の休止期間を経て釣り場が再開されました。

●少しずつでも着実に良くなっている田子漁港

VAGUE:田子漁港で釣りをしていて一番うれしかったのは、自然豊かな風景のなかのんびり過ごせたこと。一度は釣りから離れた人にこそ体験してほしいです。

國村さん:客層ががらりと入れ替わり、「景色がキレイなので釣れなくても楽しいね」といったマインドの方が増えました。いままでみんな嫌な思いを我慢しながら釣りをしていたんでしょうね。

VAGUE:ウミゴーは1周年を迎えましたが、今後の展望は?

國村さん:「花壇を作ってほしい」と地元の方から言われたときは感無量でした。

VAGUE:どうしてですか?

國村さん:以前は挨拶をしても無視するような釣り人が多く、ゴミは捨て放題で荒れた雰囲気のため地元の人でも気軽に近寄れない場所だったんです。

VAGUE:地元の方とおしゃべりしてたら、「海が見える借家が空いてるから引っ越してきたら?」と魅力的なオファーをいただきました(笑)

國村さん:いまでは地元の方の散歩コースにもなって、花を飾りたくなるような居心地のいい場所にまで変化したというわけです。

VAGUE:今年2024年の夏にはお隣の仁科漁港も「海釣りGO」を活用した釣り場になるそうですが、ぜひ全国へも広がってほしいです。

國村さん:初年度から取り組みの価値が認められたのは奇跡だと思っています。「西伊豆町の海は誰もが安心して楽しめる釣り天国です」と胸を張れる場所にしていきたいですね。

Gallery 【画像】「えっ…」アプリの予約で超快適!生まれ変わった海釣りフィールドを見る(27枚)

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