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“空気清浄メーカー”の先へ――ブルーエアが“エアウェルネス”ブランドに進化した本当の理由とは【家電で読み解く新時代|Case.26】

Blueair Classic。スチールボディの本体は単機能空気清浄機として米国家電製品協会(AHAM)による空気清浄機の性能評価CADRの数値で世界最高基準を記録していた
Blueair Classic。スチールボディの本体は単機能空気清浄機として米国家電製品協会(AHAM)による空気清浄機の性能評価CADRの数値で世界最高基準を記録していた

空気は“性能”から“QOL”へ——ブルーエアのメッセージ進化

 日本の空気清浄機市場は成熟している。ユーザーは賢く、除去率やCADRといった数値的スペックだけで商品を判断しない。そこにこそブルーエアは勝機を見出している。室﨑社長は言う。

「日本の消費者は“高い清浄能力”はすでに前提として理解しています。だからこそ、空気の質が睡眠・学習・日常生活全般にどう影響するか、その観点から伝える必要がある」

 これは筆者自身も強く共感するポイントだ。家電スペシャリストとして20年以上製品を見てきたが、時代が変わるたび「性能の壁」は必ず存在する。一方、“性能の意味づけ”は無限に進化できる。

 今回の「Sleep Collection」——「DreamWell™ Humidifier H38i」(加湿器)、「Mini Restful™ 空気清浄機 and Sunrise Clock SC9i」、「2-in-1 Pro 加湿空気清浄機 DH5i 」——すべてがこの思想の延長線上にある。

 睡眠は人生の1/3を占める。環境づくりを空気からアプローチする。この発想は、空気清浄メーカーの常識を超えた領域だ。

 テクノロジーはより静かに、より気配を消す方向へ進み、ユーザーが意識しないまま生活を整える方向へと向かっている。この哲学は、インテリアと家電の境界線が溶け始めている今の時代とも、非常に親和性が高い。

左から「DreamWell™ Humidifier H38i」(加湿器)、「Mini Restful™ 空気清浄機 and Sunrise Clock SC9i」、「2-in-1 Pro 加湿空気清浄機 DH5i」
左から「DreamWell™ Humidifier H38i」(加湿器)、「Mini Restful™ 空気清浄機 and Sunrise Clock SC9i」、「2-in-1 Pro 加湿空気清浄機 DH5i」

睡眠、温度、湿度、データ——空気デザインの未来地図

 ブルーエアは次の10年をどう見ているのか。その答えはシンプルかつ明確だった。

「空気清浄、湿度、温度のコントロールによるQOL改善です」

 湿度はすでに商品ラインアップが整い始めている。温度——ヒーター・ファン付きモデルの登場はその第一歩と言える。そして次のキーワードは「データ」だ。

 IoT連携はすでに進んでいるが、ブルーエアが次に重視しているのは“睡眠データ”との連動だと推測する。筆者の経験上、空気品質と睡眠の相関は極めて高い。

 呼吸数、浅睡眠、深睡眠、室温・湿度——これらは一つのパッケージとして解析されて初めて意味を持つ。

 ブルーエアは「空気をきれいにするメーカー」から「生活環境を最適化するデザインメーカー」になろうとしている。ここには、グローバル家電企業が持つべき次世代戦略が凝縮している。この方向性は、世界的な空調メーカーの進化とも共鳴している。

 ダイソンが「空気×睡眠」に注目した新製品を発売したり、フィリップスは早い段階から睡眠ヘルステック企業を買収したなど、家電メーカーがヘルスケアに注力する流れを思い出す人も多いだろう。

 ブルーエアもそれらと同じ潮流に乗っているが、彼らのアプローチはもっと「生活者目線」に寄っている。

インテリアとの調和も意識した北欧デザインによる美しい製品が揃っている。それらの製品は専用アプリと連携してデータ連動している
インテリアとの調和も意識した北欧デザインによる美しい製品が揃っている。それらの製品は専用アプリと連携してデータ連動している

社会貢献活動とブランド滞在時間——“こどもの空気研究所”の次なる進化

 ブルーエアは社会貢献活動にも積極的だ。日本では「こどもの空気研究所」として情報発信を行い、子どもと家族の空気環境をテーマにしたコンテンツを継続的に公開している。室﨑社長は、この活動の未来をこう語る。

「きれいな空気は子どもだけに必要なものではありません。“エアウェルネス研究所”のような形に発展させたい」

 これは非常に重要な視点だ。ブランドは単に「買われるもの」ではない。“滞在時間”を持つことで初めて価値が深くなる。人々が空気について考え、正しい知識に触れ、習慣を見直す——その時間がブランド体験になっていく。

 そして、この“正しい情報の提供”にこそ、ブルーエアの未来がある。メーカー主導でありながら、教育的で押しつけがましくない。そこに北欧系ブランド特有の「距離の取り方」が生きている。

2019年から続けている『こどもの空気研究所』。ブルーエアの社会貢献活動を紹介している。空気や子育てをテーマに続けているオウンドメディアも多くの読者に読まれている
2019年から続けている『こどもの空気研究所』。ブルーエアの社会貢献活動を紹介している。空気や子育てをテーマに続けているオウンドメディアも多くの読者に読まれている

ブルーエアはどこへ向かうのか——結論:空気を最適化する“健康の基盤ブランド”へ

 室﨑社長は最後にこう言い切った。

「ブルーエアはこれから一層、あなたの健康状態を最適化する空気を提供するブランドになります。」

 この言葉に、すべての未来が凝縮されている。清浄力は当然。湿度・温度・睡眠との連動も当然。そのうえで、空気を軸にした“生活の最適化”という新たな価値が立ち上がる。

 空気は目に見えない。だからこそ、企業側の哲学と構造がもっとも反映される。

 今回、室﨑社長の話を通じて感じたのは——ブルーエアは単なるプロダクト企業ではなく、生活者の身体と空間の未来をデザインする企業へ進化しつつある、という確信だ。その挑戦は、これからの10年でさらに加速するだろう。

Gallery 【画像】ブルーエアの最新ラインナップを画像で見る(24枚)

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