大阪・難波と世界遺産を結ぶ特急「こうや」はなぜ車両が短い!? 外国人観光客にも人気の“レトロ特急”がじつは高性能過ぎる理由とは
世界遺産・高野山の麓「極楽橋駅」まで1時間20分の旅
大阪・ミナミの中心地にある「難波駅」をターミナルに、大阪府南部、そして和歌山県に至るエリアをカバーするネットワークを持つ私鉄が「南海電鉄」です。
この南海電鉄の路線で、和歌山県の「極楽橋駅」までを運行系統とするのが「高野線」です。

極楽橋駅は、平安時代に弘法大師(空海)が開いた「高野山」の玄関口となる駅で、南海電鉄では、難波駅と極楽橋駅を直結する「特急こうや」を平日は4往復、土休日は最大8往復運転し、高野山への観光需要に対応しています。
編成4両で、全席指定です。
難波駅から極楽橋駅までの所要時間は列車により異なりますが、おおむね1時間20分ほどです。
また極楽橋駅からは「高野山ケーブル」が終点の「高野山駅」を結んでおり、難波駅から高野山駅までは1時間40分ほどでアクセスできます。
さて、この特急こうやに用いられる車両は、JRや大都市近郊の私鉄で多く用いられる「20m級車」ではなく、やや短い「17m級車」となっています。一般論としては、車両が長ければ乗車定員も増え、それだけ輸送力もアップします。
ではなぜ、南海電鉄は特急こうやに17m級車を使っているのでしょうか。
その理由は、高野線の地理的な状況にあります。
高野線の本格的な山岳区間がはじまる高野下駅と終点の極楽橋駅とは、直線距離で約4.5kmですが、その標高差は400m以上と、鉄道にとっては極めて厳しい条件になっています。高野線はこの標高差をクリアするため、不動谷川に沿って西側に大きく迂回するようにアプローチします。
ただ不動谷川が作る渓谷を見下ろすように走るこの区間には、半径100m以下という急カーブが連続するため、20m級車では通過が困難です。そのため、急カーブに適合した17m級車が採用されているのです。

ただそうした急カーブをもってしても、この区間の最大勾配は50パーミル(水平距離1000mあたりの高低差が50m)と、日本の一般的な鉄道では屈指の急勾配となります。
この急勾配を克服するため、特急こうやは、4両編成すべてが電動車となっています。
ちなみにその車両は1983年から運用がはじまった「30000系」と1999年から運用がはじまった「31000系」で、“古い電車が多い”と言われる南海電鉄のイメージ付けにひと役買っています。
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