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日本ファーストがカギ!? 米国No.1クリーナー市場を築いたShark(シャーク)新作の機能性と「高速PDCA」戦略とは【家電で読み解く新時代|Case.04】

ユーザーの潜在ニーズを掘り起こす戦略

 連載「家電で読み解く新時代」第4回では、家電スペシャリスト・滝田勝紀が、米国発の掃除機ブランドShark(シャーク)の日本市場における急成長の裏側を探る。

 新型コードレス掃除機「Shark PowerClean 360」の発表会と、SharkNinja日本法人・古屋和輝マネージング・ディレクターへのインタビューを通じて、その戦略的背景と未来の展望に迫った。

 2018年、米国のフロアケア市場でシェアNo.1を誇るSharkが日本に初上陸した。当初、アメリカ仕様の掃除機「EVOFLEX」シリーズを製品の重量とサイズを日本向けに小さく改良したが、それでもなお、日本の消費者からは「重い」「扱いづらい」という声が上がった。

 ヘッド部分だけで約1kgもある掃除機は、日本の住環境やライフスタイルに合わなかったのである。

Shark(シャーク)新作
Shark(シャーク)新作

 こうした初動の苦戦を受け、シャークニンジャは戦略を一新。「日本向けモデルをゼロから開発する」という大胆な舵を切った。

 古屋氏は当時をこう振り返る。

「前社長のゴードン・トム氏は元々ダイソン日本法人の初代社長でもあったため、その経験も参考に、シャークニンジャとして独自に日本人の生活様式や掃除の習慣を徹底的に掘り下げ、ユーザー自身も気づいていない潜在ニーズを探りました」

 その結果生まれた2020年のモデル「EVOPOWER SYSTEM」は、日本の約40世帯で毎週ユーザーテストを実施し、量産開始直前まで改良を重ねた製品だ。

 古屋氏は「日本の消費者と向き合い、多くを学びながら開発した、一から携わった我が子のような製品です」と語る。

 このモデルは軽量化と高い操作性でヒットし、「掃除機は普段隠すもので、掃除のたびに出さないといけない」という日本市場の固定概念を覆した。

 さらに、最新世代のEVOPOWER SYSTEM NEOシリーズは韓国市場にもそのまま投入され、LGやサムスンといった強豪が君臨する市場に風穴を開ける成功を収めた。

 古屋氏は「日本市場は屈指のコードレス先進国であると思います。お客様の要望も厳しい。だからこそアジア展開の鍵を握ります」と述べ、日本で磨かれた製品力が世界市場においても競争力を持つことを実証した。

日本市場参入時に投入された初期モデル。全体的に骨太で、ヘッドが約1kgもあり、重さと取り回しに関して日本の消費者から改善要望が寄せられた。
日本市場参入時に投入された初期モデル。全体的に骨太で、ヘッドが約1kgもあり、重さと取り回しに関して日本の消費者から改善要望が寄せられた。

戦略の集大成「PowerClean 360」の誕生

 2025年6月、シャークは日本市場で培ったユーザー志向の集大成とも言える新製品「PowerClean 360」を発表した。

 この製品の最大の特長は、全方向からゴミを逃さず吸引する「360°クリーニング」。

「掃除機を前後に動かした時、後ろに引くとゴミが残る」という従来のコードレス掃除機の弱点を克服するため、ノズル後方に「アクティブフラップ」を新搭載した。

 掃除機を前方に押すときにはフラップが後方に倒れ、後ろに引くときにはノズル前方に倒れることで、空気の通り道を作り、空気の流れを作り出し、後方のゴミも吸引する仕組みだ。

 また、iQセンサーやエッジセンサーといった先進技術を搭載し、ゴミの量や壁際を自動検知して吸引力を調整することで、効率的かつ徹底的な掃除を実現した。

PowerClean 360
PowerClean 360

 発表会場で古屋氏はこう述べている。

「掃除性能を最優先に考え、ゴミを取り残さず、かつラクに掃除を済ませたいという理想を叶える製品です」

 シャークが日本で培ったユーザー視点の開発力が、この新モデルに凝縮されている。

右が新モデル、左が従来モデルのヘッド。それぞれ後方に動かすと、新モデルがゴミを吸い込めるのに対し、従来モデルはゴミがヘッド後方部に溜まる
右が新モデル、左が従来モデルのヘッド。それぞれ後方に動かすと、新モデルがゴミを吸い込めるのに対し、従来モデルはゴミがヘッド後方部に溜まる

シャーク躍進の原動力は「ユーザーファースト」の高速PDCA

 シャークニンジャ日本法人の歩みを振り返ると、「日本の声をとことん製品に反映する」という一貫した姿勢が浮かび上がる。

 外資系メーカーでありながら、製品やアフターサービスのあらゆる面で日本の消費者から信頼を得る必要がある──古屋氏の前任であるゴードン・トム氏(前社長)はそう各方面に説き、本社にも柔軟な対応を取り付けたという。

 その結果、グローバル標準に無理に合わせることなく、日本独自の戦略を展開できたことが現在の成功につながっている。

 実際、古屋氏自身も米国本社と密に連携し、日本チームの提案をスピーディーに製品へ落とし込んできた。開発段階でのユーザーテスト徹底も、その象徴だ。

 こうした高速PDCAの文化は社内に根づき、「ユーザーの課題発見→製品で解決→市場からの評価→さらなる改良」というサイクルが他社に比べ格段に早い。

 家電分野において、日本市場はしばしば「ガラパゴス」と形容されるほど独自のニーズが多いが、シャークニンジャはむしろそれをイノベーションの源として積極的に取り入れている印象を受ける。

日本の住宅環境を考慮したスマートでコンパクトなヘッド。後ろにまっすぐ動かした時にも安定するよう、車輪が大きくなっている。
日本の住宅環境を考慮したスマートでコンパクトなヘッド。後ろにまっすぐ動かした時にも安定するよう、車輪が大きくなっている。

 実際、日本生まれの技術やアイデアが本国モデルにフィードバックされた例も少なくない。シャークニンジャ全体として見ても、日本市場は単なる一国のマーケットに留まらず、アジア戦略のキー拠点と位置付けられているようだ。

 古屋氏の「日本市場は屈指のコードレス先進国でアジア展開の鍵である」という言葉通り、日本で成功するプロダクトを創ればこそ他のアジア地域でも戦える、という確信が同社にはある。

 古屋氏によれば、シャークニンジャは全世界で「我々は小型家電ブランドではあるが、お困りごとを解決する会社である」という考えが浸透しており、製品開発にあたっては消費者が意識していない課題にまで踏み込んでいる。

 掃除という行為のハードルを下げ、掃除後も心地よさが続く製品を目指すユーザー視点に徹底的に寄り添い、細かなニーズを迅速に製品へ反映する体制こそが、シャーク躍進の最大の理由なのだ。

ブルーのLEDライトでゴミを視覚化する。
ブルーのLEDライトでゴミを視覚化する。

競争激化のコードレススティック市場で、シャークが狙う地位

 コードレススティック掃除機市場は2025年には年間350~400万台、金額ベースで約1,200億円規模に拡大すると予測される激戦市場だ。

 市場にはダイソン、パナソニック、シャープなど強力な競合が並ぶ。その中でシャークは、「ユーザー本位の発明で差別化を図る」という独自戦略で、2025年以降も台数金額とも拡大方向に推移すると予測する。

 かつて「ダイソン一強」と呼ばれた市場で、シャークは着実に頭角を現しつつある。

 その背景には、日本市場に深く根ざした製品開発力があることは間違いない。私は、今後もシャークの動向を注視し続けたいと思う。日本発のイノベーションが、グローバル市場を席巻する日は決して遠くないのかもしれない。

Gallery 【画像】シャーク最新クリーナーの実力を画像で見る(47枚)
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滝田勝紀
滝田勝紀
VAGUE家電統括プロデューサー
モノ雑誌の編集に15年以上携わり『デジモノステーション』編集長を歴任。現在は家電スペシャリストとして、国内外の最新テクノロジーを長年取材。All About家電ガイドやMakuakeエバンジェリスト、楽天ROOM公式インフルエンサー(フォロワー56万人超)など幅広く活動する。海外取材経験も豊富で、欧州家電メーカー本社や世界最大級の見本市「IFA」への造詣も深い。また、Z世代向けメディア運営やPR会社経営の傍ら、インテリアスタイリスト窪川勝哉氏とのユニット「𝒾𝓃𝒞𝒶𝒹𝑒𝓃𝓏𝒶」で家電開発も手掛ける。機能とデザインの両面から、心地よい暮らしのあり方を提唱している。

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