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なぜ俳優・賀来賢人を起用? フィリップスのシェーバー戦略が日本の“ひげ剃り体験”を変化させる可能性とは【家電で読み解く新時代|Case.03】

コンパクトシェーバー700シリーズは、携帯性に優れ、外出先や旅行中でも本格的な深剃りが可能。鼻毛カッターも付属している。
コンパクトシェーバー700シリーズは、携帯性に優れ、外出先や旅行中でも本格的な深剃りが可能。鼻毛カッターも付属している。

世界No.1が日本市場でトップを狙う理由

「なぜ今、フィリップスは日本攻略に本腰を入れるのか?」――インタビューの中で筆者はBas氏に率直に問いかけてみた。ご存知の通り、フィリップスは電動シェーバー分野で世界123カ国に展開し、85年以上の歴史を持つ世界シェアNo.1のブランドだ。

 しかしながら、その実力に反して日本国内でのシェアは長年伸び悩んできた。同市場(年間約500億円規模)の8割近くはパナソニックやブラウンといった往復式シェーバーが占めており、回転式のフィリップスは後塵を拝する状況が続いていたのである。

 日本人男性は昔から往復式(いわゆる網刃シェーバー)に慣れ親しんでおり、その深剃り性能への信頼感もあって、回転式の肌当たりの良さを訴求してもなかなか食指が動かなかった背景がある。

 また「深剃り=往復式」という根強いイメージや、国内メーカーへのブランドロイヤリティなど、市場固有のハードルも存在した。

 Bas氏はそうした文脈を踏まえ、「日本のお客様は非常に品質に厳しく、要求水準が高い。しかし同時に、新しい価値にも敏感で、納得すれば受け入れてくれる市場で、それはアジア全体を攻略することにも直結する」と分析した。

 フィリップスにとって日本は単なる一国市場ではなく、“世界一の座を盤石にするために攻略すべき最重要市場”という位置づけなのだろう。

1939年のワンヘッドシェーバーから、85年にわたり、時代に合わせて最先端のシェーバーを開発してきている
1939年のワンヘッドシェーバーから、85年にわたり、時代に合わせて最先端のシェーバーを開発してきている

新アンバサダー賀来賢人が象徴する「大人の男」の夢

 また、同社は「現在フィリップスは日本でマーケットリーダーではないが、日本のユーザーの心はつかんでいると考えている」と自信を見せるなか、それを多くの方々に知らせるためのインフルエンサーの起用についても重要視しているとBas氏。

 発表会では新アンバサダーの賀来賢人さんが登壇し、最高峰モデルを手にフィリップスの新製品発表会で抱負を語った。

 その狙いについてBas氏は「賀来さんは30代半ばにして国内外で活躍し、洗練とチャレンジ精神を兼ね備えた存在。同世代の男性が憧れるストイックな魅力が、我々のブランドビジョンと重なります」と説明する。

 実際、賀来さん自身も発表会のステージで新アンバサダー就任の喜びを次のように語っている。

「フィリップスの電動シェーバーって、きちんとした大人が持つイメージがあったので、それにふさわしい自分になれたのかなと思うと素直に嬉しかったです」。彼にとってフィリップスのシェーバーは“成熟した男性の証”のように映っていたようで、そのイメージと自身の成長が重なる起用となったことが伺える。

 新CM撮影の裏話では、賀来さんが疾走するシーンに10回以上テイクを重ねたことや、カメラとの距離を自分で調整しながら走る難しさに「まるでアクションシーンのようだった」と語る場面もあった。

 同CMは、静かにひげを剃るシーンと全力で駆け抜けるシーンという対照的な二面性を描いており、「リラックスしているようで、どこか緊張感もある。不思議な感覚でした」と撮影を振り返っている。

 自身が役柄ではなく“賀来賢人本人”として出演する内容にも最初は照れがあったそうだが、「カメラの前でも自然体でいられて新鮮だった」と述べ、作品としての仕上がりにも手応えを感じているようだった。

 CMのラストでは「剃って身だしなみを整え、走り出す。その流れの中に“次の自分へ進んでいく”というメッセージが込められています」と明かし、次なる挑戦へ踏み出す男性像を自ら体現してみせた。

 実際賀来さんは「英語を本格的に学び、海外作品への挑戦という夢に年々気持ちが強くなっている」と語っており、フィリップスというグローバルブランドと、グローバルな舞台に挑む意欲を示していた部分が重なるのが印象的だった。

新アンバサダーの俳優・賀来賢人さんが発表会に登壇し、新製品を手にブランドの魅力をアピール
新アンバサダーの俳優・賀来賢人さんが発表会に登壇し、新製品を手にブランドの魅力をアピール

フィリップスは日本で新たな時代を切り拓くか

 フィリップスの新型シェーバー「i9000 プレステージ ウルトラ」と「コンパクトシェーバー 700シリーズ」は、それぞれが異なる角度から日本のユーザーにアプローチする“双璧”と言える。

 前者は最先端テクノロジーで深剃りの常識を覆し、後者は発想転換でシェービングシーンを拡張する。Bas氏とのインタビューを通じて感じたのは、フィリップスが単に製品を売るのではなく、日本人男性のライフスタイルそのものに変革をもたらそうとしている点だ。

 グローバルNo.1企業のプライドと、日本市場へのリスペクトが融合し、生み出されたこれら新製品と戦略は、まさに「新しい技術と長い歴史の融合」である。

 家電ジャーナリストとして長年フィリップスの挑戦を取材してきた筆者から言えば、2025年は同社シェーバー事業にとって日本で飛躍するターニングポイントとなるかもしれない。

 かつてない深剃り性能と洗練のユーザー体験、そしてそれを支える確かな戦略と情熱。これらが実を結ぶなら、フィリップスが日本のシェーバー市場でトップの座を獲得する日も遠くないだろう。

Gallery 【画像】賀来賢人を起用の理由は? フィリップス発表会の模様を画像で見る(43枚)
「カチッ」と日常をオフに。至福の時を刻む、マインドフルネス
滝田勝紀
滝田勝紀
VAGUE家電統括プロデューサー
モノ雑誌の編集に15年以上携わり『デジモノステーション』編集長を歴任。現在は家電スペシャリストとして、国内外の最新テクノロジーを長年取材。All About家電ガイドやMakuakeエバンジェリスト、楽天ROOM公式インフルエンサー(フォロワー56万人超)など幅広く活動する。海外取材経験も豊富で、欧州家電メーカー本社や世界最大級の見本市「IFA」への造詣も深い。また、Z世代向けメディア運営やPR会社経営の傍ら、インテリアスタイリスト窪川勝哉氏とのユニット「𝒾𝓃𝒞𝒶𝒹𝑒𝓃𝓏𝒶」で家電開発も手掛ける。機能とデザインの両面から、心地よい暮らしのあり方を提唱している。

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