アップルの牙城を崩す!? 人に寄り添うGalaxy AIがカギ! 関西万博で行われたサムスンのビジネス戦略分析とは――家電で読み解く新時代|Case.10
「人に寄り添う」Galaxy AIの戦略とは?
大阪・関西万博の会場で行われたパネルディスカッションでは、サムスン電子(韓国本社)とクアルコムコリアのキーパーソンが登壇し、「人間中心のAI」というテーマで語り合っていました。
そこで印象的だったのは、Galaxy AIは「機能のすごさ」ではなく、「人にとってどう使いやすいか」「暮らしの中で自然に役立つか」を重視しているという点です。
サムスン電子(韓国本社)のモバイル事業部を率いるチーム長ソン・インガン氏は、AIを使うには「簡単・安心・実用的」でなければならないと強調。「ボタンを押して設定を探すような使い方は過去の話。今は“気がつけばAIが助けてくれる”という形が理想です」と語っていました。
実際にSamsung Galaxy S25 Ultraでは、ユーザーの70%がAI機能を日常的に使っているとのこと。仕事でのメモ書き、写真の加工、翻訳やスケジュール管理など、AIが自然に“生活の補助線”のように働いているのです。

難しい言葉でなく、わかりやすいAIへ
今回のディスカッションで紹介された技術のひとつが「マルチモーダルAI」。聞きなれない言葉かもしれませんが、要するに視覚・音・動きなどを組み合わせて、状況を理解できるAIのこと。
人が目で見て、耳で聞いて、考えるのと同じように、AIも複数の感覚情報を組み合わせて動けるようにするという技術です。
もう一つが「オンデバイスAI」。これはスマホの中だけでAIが動く仕組みのことで、ネットにデータを送らずに済む分、スピードも速く、プライバシーも守られるというメリットがあります。
こうした工夫によって、GalaxyのAIは「早くて安心」「しかも賢い」。そして何より「難しくない」。使う人の立場に立った設計が、GalaxyのAIには詰め込まれているのです。

クアルコムが支える、安心で軽快なAIのしくみ
こうした最新のAI体験を可能にしているのが、スマートフォンそのものの性能向上です。
クアルコムコリアのキム副社長は、「AIを本当に役立つものにするには、開発者が自由にAIを活用できる仕組みづくりが欠かせない」と語っていました。
そのため同社では、AIがスマホ本体の中だけでスムーズに動くように、処理速度の高いチップを開発しています。さらに、開発者がAI機能をアプリに組み込みやすくするための「ツールセット」や「使いやすいAIモデル」も用意して、技術的なサポートを行っているとのこと。
また、AIが生活に浸透するほど、「どう安全に、どう責任をもって使われるか」も重要になります。
クアルコムコリアは、ユーザーのプライバシーを守るためのルールや、AIがどう動いているかの“見える化”にも積極的に取り組んでいるとのことでした。

iPhoneを“ハブ”にしてきたAppleへの挑戦
サムスン電子(韓国本社)のAI戦略の真の目的。それは、スマホの中心にある“エコシステム”の主役を、AppleからGalaxyに置き換えることにあると筆者は分析しています。
iPhoneは長年、「AirDrop」や「iMessage」など、Apple製品同士で連携できる仕組み=エコシステムを築いてきました。
誰かと写真を共有したい、作業をMacに引き継ぎたい──そんな時、iPhoneを中心にした環境は非常にスムーズです。そしてZ世代を中心に「みんなiPhoneだから」という理由で選ばれ続けているのも事実です。
これに対してサムスン電子(韓国本社)が打ち出しているのが、「AIでつながるGalaxy」というコンセプト。
スマホだけでなく、タブレット、イヤホン、スマートウォッチ、さらには家電やクルマにまで広がる“人に寄り添う連携”を新たなエコシステムに、GalaxyのAI基点で実現しようとしているのです。
Galaxyが目指しているのは、ユーザーが気づかないうちに助けてくれる“ユーザーの日常生活に完全に溶けこむAI”=アンビエントAI。
生活全体にそっと入り込み、必要なときにそばにいてくれる。そんな存在をスマホの中に宿そうとしています。

AIこそが、次の差別化になる
スマホの性能が飽和し、カメラの進化もひと段落した今、次にユーザーがスマホを選ぶ理由は何か。それが「AI体験」であるとサムスン電子(韓国本社)は見ています。
Samsung Galaxy Z Fold 7やSamsung Galaxy S25 Ultraなど最新のラインアップでは、写真を指で囲むだけで検索できる「かこって検索」や、通話内容をリアルタイムで文字に起こす「リアルタイム通訳」、映像の風切り音を消す音声編集AI「オーディオ消しゴム」など、生活のさまざまな場面に使えるAI機能が数多く搭載されています。
これらはすべて、「誰でも」「簡単に」「すぐに」使えることが大前提。だからこそ、機能の名前や仕組みはあえて難しくしない。体験そのものが自然であることを最優先にしているのです。
“Galaxyの思想”を草の根から伝えられる場所
こうしたGalaxyの思想を、より多くの人に体感してもらうための拠点が「Galaxy Studio Osaka」です。
大阪・なんばにあるこの施設では、最新のGalaxy製品が自由に体験できるだけでなく、クルーによるAI機能のレクチャーや、製品をつなげた生活のデモンストレーションが用意されています。
誰でも無料で立ち寄ることができ、「ちょっと試してみたい」「もう少し便利に使ってみたい」という気軽な気持ちで訪れることができます。
店内では、スマホとイヤホン、タブレット、スマートウォッチが連携して動く様子や、写真編集、AI通訳、スケジュールの整理といった日常的なシーンでのGalaxyの“寄り添い力”を実感できます。
ここにあるのは、売るための展示ではなく、伝えるための場。Galaxyが目指すAIの未来を、体験という形で一人ひとりに届けようとしている場所です。

“体験”で勝負するGalaxyの次の一手
今、スマートフォン市場は転換点に差しかかっています。iPhoneを中心とするAppleのエコシステムが強固である一方で、GalaxyはAIという新たな武器で「次の中心」に名乗りを上げています。
サムスン電子(韓国本社)は、ハードのスペックではなく、「どれだけ気持ちよく使えるか」「どれだけ日常に溶け込めるか」でGalaxyを選んでもらえる時代を目指しています。
それはAppleの“完成された囲い込み”とは異なる、“誰でも使えて共感できるAI体験”という道だと筆者は分析します。
今回の大阪取材を通して強く感じたのは、Galaxyが「テクノロジーの先」ではなく「ユーザーのすぐそば」を見ていること。技術の未来ではなく、体験の未来を見据えた戦略こそ、これからのスマホ選びの新しい基準になるかもしれません。
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