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歴史をまとう時間とは? 「TSUGU 京都三条」に宿る“優雅な滞在の哲学”を探る

建築そのものが、物語の主役となる

 静かな朝の京都・三条通。石畳に影を落とす近代建築が、まるで時間の中に沈んでいるように佇んでいる。

 1914年竣工、辰野金吾と片岡安の手による洋風建築。この建物は、かつて日本生命の京都支店として、まちの経済と文化の一角を支えてきた。

 そして今、百年を超える時を継ぎ、「TSUGU 京都三条」として新たな命を宿している。歴史と建築と、人の営みが静かに交差するこのホテルには、ただ泊まる以上の体験がある——

静かな贅沢が息づく。泊まること自体に意味がある宿
静かな贅沢が息づく。泊まること自体に意味がある宿

 改装設計を担ったのは、気鋭の建築家・関祐介。石張りの外観と、露出したコンクリートの内部が対話するように構成された空間は、重厚でありながらどこか呼吸がしやすい。

 4階にあるLIVING+KITCHENには、特筆すべき“抜け”がある。かつての壁をくり抜き、窓のフレーム越しに旧尖塔の意匠が切り取られる構図は、まるで額装された歴史。

 支配人である西村望実さんは、その瞬間をこう語る。

「あの窓の向こうに映る尖塔を見たとき、まちの時間軸がふっと現代と交差したように感じました。ここに泊まる人にも、建物の記憶と対話してもらえたらうれしいですね」

歴史と向き合う“泊まれる文化財”という挑戦

 全国のTHE SHARE HOTELSのなかでも、「TSUGU 京都三条」が特別な理由。それは、宿泊という体験が“建築そのものと向き合う行為”になるからだ。

「他の地域のTHE SHARE HOTELSでは、地域との交差点やカルチャーの発信を担う意味合いが強いのですが、ここはまず建物そのものが主役。100年を超えて残されてきた空間に“泊まる”こと自体が、すでに一つの行為として完結しているんです」

支配人・西村望実さん
支配人・西村望実さん

 ジュニアスイートは、その思想が凝縮された空間。アーチを描く窓、天井高の気持ちよさ。それらすべてが“飾らない贅沢”を表現している。

「ここでは“ラグジュアリー”って、キラキラした装飾ではなく、“素材の記憶を感じること”なんだと思います。五感が静かにひらいていく感覚です」

 西村さんがこの場所に惹かれた理由は、建築だけではない。彼女は保険会社で営業職を経験。数字とマニュアルに追われる日々から、“人に寄り添う接客”を求めてTSUGUへと転職した。

「ここでは“型どおり”ではなく、“その人らしさ”を活かした接客が大切にされています。マニュアルの外側にある対話こそが、旅の余白になると思っていて」

“飾らない贅沢”を表現したジュニアスイート
“飾らない贅沢”を表現したジュニアスイート

 近代建築とスタッフの“ひととなり”が交差するこの場所では、宿泊そのものが“人との関係性”を再構築する時間へと昇華していく。

感性を携えた旅人が集う場として

 開業当初から多くの外国人がホテルにやってきた。特に欧州圏の建築ファンやカルチャー感度の高い旅人が訪れ、建物に感嘆の声を漏らすという。

「まるでヨーロッパの文芸宿のよう」「静かな美術館のような滞在」——そんな言葉が、館内に静かに響く。

 ゲスト専用サイトに掲載のローカルガイドでは、スタッフがひとつずつ地域のお店に許可をとって紹介。決して派手さではなく、“人の営み”が重なり合うように、まちとの接点を丁寧に描いている。

カルチャー感度の高い旅人を迎える
カルチャー感度の高い旅人を迎える

「私たちがつくっているのは、観光施設ではなく、“まちの風景の一部としてのホテル”なんだと思っています。目立たず、でも記憶に残る、そんな存在でありたいですね」

 コロナ禍のあいだ中断していた地域との接点も、いま再び息を吹き返している。

 近代建築ウィーク、京都モダン建築祭、KG+(KYOTOGRAPHIE)への参加など、文化的な文脈と接続しながら、地域とともに時間を育んでいる。

 2023年秋、京都モダン建築祭では2日間で700名超が来場。そのなかには、ホテルの前を日々通り過ぎるご年配のご婦人の姿もあったという。

「“ここ、気になってたけど敷居が高くて…でも今日は来れてうれしい”と声をかけていただいたときは、胸が熱くなりましたね。地域に開かれていることが、いちばんの誇りです」

 ある日、まちの方からこう言われた。

「この建物がホテルになると聞いたときは、少し寂しかった。でも、こんなふうに丁寧に使ってくれて、このまちで働いてくれて、ありがとうねって思ったんよ」

 その一言が、いまも西村さんの背中をそっと支えている。

TSUGU 京都三条の時を超えた存在感
TSUGU 京都三条の時を超えた存在感

 TSUGU 京都三条。

 それは、ただ眠るための宿ではない。刻まれた時間と、交わされた声と、素材の記憶に包まれる——静かな贅沢の極みが、そこにはある。この秋、歴史をまとう旅をひとつ。あなた自身の「継ぐ」を、このまちで見つけてみてはどうだろう。

Gallery 【画像】百年の時を継ぐ「TSUGU 京都三条」を画像で見る(23枚)
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