本州最北のケーブルカーってどこにある? 海面下140mまで降りる“正式な鉄道” 世界でも珍しい「地下ケーブルカー」とは
海面下140mにある坑道を見学
JR蟹田駅から、乗合タクシーのわんタクで津軽半島の突端、龍飛崎を目指します。

その日は乗客が多く、車内の座席はすべて埋まっています。一人旅の自分は助手席に座り、初めて訪れた津軽半島の景色を楽しみます。
わんタク定時便のほかに、津軽線の不通区間を走るJRの代行バスもありますが、代行というだけあり、基本は蟹田駅と三厩駅の下りは1日5便(休日は3便)、上りは3便走っているだけなので、三厩駅から先、龍飛崎方面に観光に行くにはわんタクを使うのが便利です。
途中、わんタクは津軽線の踏切なども通りますが、すでに遮断器は撤去されており、廃線まで秒読み段階ということがわかります。線路にも草がぼうぼうに生い茂っていて、なんだか寂しさを感じます。
蟹田駅を出発して1時間半、わんタクはほぼ定時の10時30分に青函トンネル記念館に到着しました。
記念館に入ると、受付の人が「あと10分でケーブルカーが出発しますよ。まだ乗れます」と津軽弁で教えてくれました。急ぎ記念館の入場料と体験坑道乗車券の特別セット1500円を支払い、建屋の隣りにある竜飛斜坑線の始発駅「記念館駅」に向かいます。
オレンジ色の小さなケーブルカー車両「もぐら号」に乗り込みます。車内は階段状に斜めになっていて、そこは普通のケーブルカーと変わりありません。平日の午前中にもかかわらず、その日は30人近くの乗客が乗っています。
車両の扉が閉められると同時に、静かに目の前の通風門が開いて、地下へのトンネルが姿を表します。
最大傾斜14度の斜坑を、ワイヤーに引かれてゆっくりと地下へと降りていきます。トンネルの中は薄暗く、湿った空気が漂います。鉄の車輪がレールを擦る音とともに、灯りが壁を照らしながら奥へ奥へと進んでいく光景は、たしかに地底探検のようです。
記念館駅を出発しておよそ7分、距離にして778m、海面下およそ140mにある「体験坑道駅」に到着します。駅を降りると、係員の案内で「体験坑道」を歩きます。
坑内には、トンネル掘削に使われた巨大なドリルや、当時の作業風景を再現した模型などが展示されています。

かつては、この竜飛側の斜坑から直接「竜飛海底駅」へと続く見学コースがあり、青函トンネルを走る列車を間近に見ることができたといいます。しかし、北海道新幹線の開業に伴い、2013年に龍飛海底駅の見学は終了。現在はこの体験坑道が唯一、一般客が青函トンネルの内部に足を踏み入れられる場所となっています。
40分ほど体験坑道を見学した後、係員とともにまた乗客全員でケーブルカーに乗り、地上へと戻りました。
竜飛斜坑線は、世界的にも極めて珍しい「海底トンネルへ通じる正式な鉄道(鋼索鉄道)」です。山を登るケーブルカーは各地にありますが、海の底へと下るケーブルカーは他に例を見ません。もともと工事用の設備を観光・教育用に転用し、いまも運行を続けているという点でも、世界唯一といっていい存在です。はじめて乗りましたが、かなり貴重な経験でした。
その後は併設の食事処でボリュームある龍飛海鮮丼2000円を食べて満足し、強風の中、重くなった身体で徒歩15分ほどの竜飛岬灯台に行き、その近くにある有名な階段国道を歩き、近くのホテルで立ち寄り湯で汗を流し、地元のお祭で獅子舞にスアマをもらった後、またわんタク定時便に乗って15時10分、1日の平均乗車人員が20人(令和4年)と、日本の新幹線の駅でもっとも乗車人員が少ないという奥津軽いまべつ駅で降り、15時35分発の新幹線で帰りました。
※ ※ ※
関東に住む人から見ると、津軽半島は距離的にも心理的にも非常に遠く、行くにはなかなかに敷居の高い場所ですが、今回実際に旅をしてみると、以外やスムーズに、そしてリーズナブルに移動ができることがわかりました。
本州最北にあるケーブルカー、竜飛斜坑線は、冬季は積雪と安全確保のため運休となります。2025年は11月7日までで終了、2026年は4月下旬から再開されるといいます。
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