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翻訳スマートグラス体験の衝撃! 家電スペシャリストが「眼鏡としてのG2」を購入した理由とは【家電で読み解く新時代|Case.31】

スマートグラスを“ガジェット”から“眼鏡”にしたEven G2

 Even G2は、中国・深圳を拠点とするEven Realitiesが開発した、視界の中に必要な情報だけを映し出すスマートグラスだ。レンズ内にはマイクロディスプレイが内蔵され、通知やテキスト、簡易的な情報確認ができる。

 たとえば翻訳。相手の英語や中国語などが、視界の手前に日本語字幕のように流れていく。たとえばナビゲーション。目的地までのルートが視界を邪魔しない形でガイドされる。

 さらに会話AI。会話途中に必要な補足情報などをAIが都度提供してくれる。いわゆる“驚き”のためのARではなく、日常の“流れ”を止めない道具として設計されているのが特徴だ。

 表示は常時主張するものではなく、「必要なときだけ、必要な分だけ」現れる設計だ。音声入力やジェスチャー、指輪型のコントローラーによって操作する仕組みで、外見や装着感は限りなく普通の眼鏡に近い。

 カメラが非搭載であることは、機能としては引き算に見えるが、社会実装の観点ではむしろ“必須の足場固め”だと筆者は見ている。

 カメラ付きスマートグラスが常に抱えてきたのは「撮られているかもしれない」という不安であり、その疑念は、眼鏡という存在と決定的に相性が悪い。かつてGoogle Glassがその象徴だった。先端性はあっても、一般の人が街で装着するには、明らかな違和感が先に立ってしまった。

フレームはパンタ型とスクエア型の2種類。カラーはグレー、ブラウン、グリーンの3色展開
フレームはパンタ型とスクエア型の2種類。カラーはグレー、ブラウン、グリーンの3色展開

“売るための最短ルート”を選ばないJUN GINZAの倫理

 私は数多くのガジェットメーカーが作ったウェアラブルガジェットを見てきた。だが正直に言えば、その多くは“未来”を語る以前に、装着した瞬間に「これ、日常では無理だな」と感じさせるものだった。餅は餅屋。

 ファッションはファッションのプロが、腕時計は腕時計のプロが、そして眼鏡は眼鏡のプロが認めたものでなければ、生活に根付かない。

 そんな当たり前の結論を、私はずっと現場で唱え続けてきた。そして今回、Even G2が「眼鏡のプロの棚」に並ぶ――その意味は、発表会のスペック表よりもずっと大きい。

 JUN GINZAでEven G2の話を聞いていて、最初に強く印象に残ったのは、米盛さんの“距離の取り方”だった。新しいテクノロジーを前にしたときにありがちな高揚感も、未来を過剰に語るテンションもない。むしろ慎重すぎるほど慎重だ。だからこそ言葉が刺さる。

「売るだけなら手間をかけずに済むが、その体験が“正しい見え方”でないと世の中に根付かない。眼鏡店としてこれまでやってきた信頼が、ぐちゃぐちゃになっちゃう」

 ここで重要なのは、米盛さんが「売れるかどうか」を起点に話していない点だ。むしろ逆で、「売れるようにしてしまった結果、失敗体験が増えたら終わる」という危機感のほうが強い。

 だから店頭販売にこだわる。眼鏡測定とレンズ作りの工程を“購入の儀式”として引き受ける。ここに眼鏡店ならではの倫理がある。

JUN GINZAの代表取締役 米盛健氏
JUN GINZAの代表取締役 米盛健氏

スマートグラスは「正しく見えていないと評価される資格がない」

 Even G2は、単なるディスプレイ付きのガジェットではない。視界の中に情報が重なる道具である以上、左右の見え方の違い、目の高さのズレ、焦点位置のズレが、そのまま使い心地に直結する。

「驚きや衝撃は、いずれ慣れる。だから大事なのは、どれだけ“楽にするか”だ」

 米盛さんは、検査機器が示すデータだけを“正解”として押しつけない。むしろデータを、経験で「弱くしたり、高くしたり」して調整していくと言った。ここが眼鏡店としてのこだわりだ。

 これは生活の中で“快適に使える状態”にチューニングするからだ。右と左、どちらが見やすいか。上下にズレていないか。焦点が合っているか。必要ならプリズムも入れる。

 筆者自身、ディスプレイ部分は度数と関係が薄いと思い込んでいたが、その前提はあっさり覆された。度が合った瞬間、文字の輪郭が一段と際立つ。

 見やすさは当然として、疲れ方が変わる。「見える」ではなく「楽になる」。この差は、ガジェットのレビューでは見落とされやすい。

 私は家電の世界で何度も見てきた。発表会で拍手が起きる派手な機能ほど、生活には意外と残らない。生活に残るのは、静かに、確実に、面倒を減らす仕組みだ。スマートグラスがもし次のインフラになり得るとしたら、その条件は「すごい」ではなく「しんどくない」だろう。

オーダーメイドの眼鏡と同様、丁寧にレンズを作成してくれる
オーダーメイドの眼鏡と同様、丁寧にレンズを作成してくれる

日本語と英語が“目の前に流れてくる”――翻訳スマートグラス体験の衝撃

 Even RealitiesのCEOであるウィル(Will)氏との会話の文脈も、米盛さんの思想を補強したという。言葉は、日本人の多くにとって最大のハードルだ、と。日本の魅力を海外に伝えたい、地方の価値をもっと外に向けて届けたい、そう思っても、英語などが壁になる。

 もちろん英会話を学ぶ努力は尊い。だが現実として、学び始めてビジネスで通用するレベルになるまで何年、下手をすれば何十年もかかる。それでは遅い。だからこそ、テクノロジーで“行動できる人”を増やすべきだ――この発想は、私にも強く刺さった。

 取材時の体験も衝撃的だった。日本語を話しながら、英語が目の前に表示されるモードで試したときのことだ。会話が、ほぼリアルタイムで文字化されていく。

 その逆も然り、相手の英語が日本語にどんどん同時翻訳される衝撃は、スペック表では伝えられない。翻訳という行為が“身体の外側から内側”にスムーズに移った感覚だった。

 もちろん完璧ではない。通信環境にも左右されるし、日本語ナビが未対応など課題もある。だが、完璧になるのを待っていたら、何も始まらない。

 米盛さんが繰り返し語っていたのも、そこだった。人類がこれを何に使うのか。使う人が増えれば、加速的に使いやすくなっていく。これはスマートフォンの歴史が証明している。最初のiPhoneがコピペすらできなかったことを、私たちはもう忘れかけている。

実際に装着したり、レンズを矯正した形での視認性なども確認できるので、安心して購入することができた。取材は1月初旬だが、実際の納期は2月中旬以降(筆者)
実際に装着したり、レンズを矯正した形での視認性なども確認できるので、安心して購入することができた。取材は1月初旬だが、実際の納期は2月中旬以降(筆者)

“生活に溶ける設計”とプロの伴走で購入を決めた

 最後に、購入者としての実務的な話もしておきたい。Even G2は、リング(操作デバイス)と眼鏡本体、レンズ一式を含めて、私が見た範囲では15万円以上の設計になった。

 決して衝動買いの価格ではない。だからこそ「試してから購入検討してもいいですか」と私が慎重になったのも当然だ。

 しかし米盛さんは、装着と調整のプロセス自体が“検討の材料”になることを理解していた。リングの号数も、その場で10号を確かめ、抜けない・きつすぎないラインを探っていく。

 充電も、専用ケースに入れてUSB-Cで行う。フル充電で2日使える設計で、寝るときは外す。こうした運用のリアリティが見えると、「続けられる道具かどうか」の判断がつく。

操作用のリングについてもサイズバリエーションは豊富に用意されている。筆者は左手人差し指に装着し、親指で操作するために10号サイズを選んだ
操作用のリングについてもサイズバリエーションは豊富に用意されている。筆者は左手人差し指に装着し、親指で操作するために10号サイズを選んだ

 私はAIが“当たり前の相棒”になる時代に、なるべく早く視界のレイヤーでAIとつながりたい。英語を完璧に話せない自分でも、世界の人々と当たり前のコミュニケーションを成立させ、情報を取りに行ける身体にしたい。

 Even G2は、そのための道具になり得る――そう確信できたのは、米盛さんが“伴走者”としてリスクを引き受けてくれたからだった。

製品仕様
●Even G2 主要スペック
・重量:36g
・素材:チタン+マグネシウム合金
・度数範囲:-12.0 ~ +12.0D
・視覚:HAO™ 2.0光学システム+3Dフローティングディスプレイ
・主要機能:会話サポート/翻訳(29言語)/AIダッシュボード/ナビ
・操作:スマートリング/ジェスチャー/音声
・防水防塵:IP65
・バッテリー:本体2日+ケース7回充電(数週間分)
・価格:Even G2:99,800円(税込)~ /Even R1:41,800円(税込)
※レンズ代などは別途

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