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なぜ飲料のキリンが“呼気デバイス”を売るのか? 30秒の呼吸で体の燃料を見る新デバイス「ルーメン」

食べた。動いた。で、体はどう反応した?

 私はVAGUE編集の傍ら、キックボクシングの非常勤インストラクターとしても活動しています。自分でも練習し、試合に向けて体重を管理する。そのなかで、いつも気になるのが食事と運動の組み合わせ。

 体重計に乗れば、昨日から何kg増えたか、減ったかは分かる。けれど、昨日の食事や練習に体がどう反応したのかまでは、その数字だけでは読み解けません。

「これ、自分に合っているのか?」。体調管理を続けていても、疑問は残るわけです。

 キリンホールディングスが日本で展開するルーメンは、いま体が主にどんなエネルギー源を使っているかを、呼吸から知ろうというウェルネスデバイス。先日の発表会で説明を聞き、体重以外の手掛かりが得られるかもしれない、と興味を持ちました。

約30秒。呼吸から体の“燃料”を見る

 使うのは、手のひらに収まる本体と専用アプリ。本体は約102×42×32mm、約75gで、持ち歩きも想定したサイズです。

呼気を測定するルーメンの実機。専用アプリと組み合わせて使用する。
呼気を測定するルーメンの実機。専用アプリと組み合わせて使用する。

 アプリの案内に沿ってデバイスから息を吸い、約10秒止める。そして、ゆっくり吐く。測定は約30秒。iOS/Android対応のアプリとは、Bluetoothで連携します。

 鍵になるのは、呼気中の二酸化炭素。糖質と脂質では、エネルギーとして使われる際の二酸化炭素の出方に違いがあります。キリンによると、ルーメンは呼気中のCO₂濃度などを測り、独自のアルゴリズムで糖質・脂質の利用傾向を推定する仕組み。

 ただし、研究施設などにある専門的な呼気ガス分析装置とは、測定方法も用途も別です。基礎代謝量や消費カロリーをそのまま測る機器でもない。日常で繰り返し測り、その時々のエネルギー利用の傾向を見るためのもの、と理解しておきたいところです。

専用アプリを確認しながら呼気測定を実演する福田萌子さん。
専用アプリを確認しながら呼気測定を実演する福田萌子さん。

「脂肪燃焼」の文字に飛びつかない

 結果は、1〜5の独自指標「ルーメンレベル」で表示。数字が小さい側は脂質、大きい側は糖質の利用が多い傾向を示します。減量中なら、小さい数字を目指したくなるかもしれない。ここは注意が必要です。

 商品説明を担当したキリンホールディングスの金子裕司氏は、「1が良くて5が悪いという点数ではありません」と説明しました。状況によって、体が使うエネルギー源は変わる。ひたすら1を目指すものではないのです。

 瞬間的に強い力を出す場面もあるキックボクシングを続ける私には、この説明が印象に残りました。脂肪を使っていれば、それでいいのか。何のために食べ、何のために動くのかを抜きにすると、数字だけを追いかねません。

 そもそも「脂肪燃焼」と表示されても、体脂肪がどれだけ減ったかは分からない。減量成功のお墨付きでもありません。食事や運動の前後で、どう変わるか。見たいのはその傾向であって、1回ごとの“健康の成績表”ではない、ということです。

糖質・脂質の利用傾向を表示するアプリ画面の例。ルーメンレベルは1~5で示され、数字の大小が健康の優劣を表すものではない。
糖質・脂質の利用傾向を表示するアプリ画面の例。ルーメンレベルは1~5で示され、数字の大小が健康の優劣を表すものではない。

測ったあと、何を食べるか

 数字を見て、終わり。それでは少々もったいない。ルーメンのアプリは測定結果や日々の記録、設定した目標をもとに、食事や運動のヒントも示します。

 発表会後の質疑で紹介されたのは、糖質・たんぱく質・脂質の摂取バランスや食事メニュー、運動内容を踏まえた食事の提案。画面例にはパーソナル栄養プラン、食事記録、レシピなどが並んでいました。

 測った結果を、次の食事や練習にどう生かすか。私が使い道を感じるのは、むしろこちらです。ただ、仕事もあれば練習の都合もある。アプリの提案を日常にどこまで取り入れられるかは、使い続けて確かめたいところ。提案どおりに動ける日ばかりではありませんから。

福田萌子さんも感じた、呼吸の難しさ

 トークセッションに登壇したのは、日常でルーメンを使っている福田萌子さん。興味深かったのが、使い始めには一定の時間で息を吸い、止めて、吐く動作を難しく感じた、という話でした。

 測定を通じて、普段の呼吸の浅さに気付いたという福田さん。これは本人の感覚ですが、数値を見る前に、いったん立ち止まって呼吸に意識を向ける時間ができる。その体験も、慌ただしい日常を振り返るきっかけになったようです。

 会場ではアプリ画面をスクリーンに映し、呼気測定を実演。食事を取った後の福田さんの結果について、金子氏は食事前からの変化や、その後の時間経過も合わせて見ることが大切だと説明しました。

 同じ人でも、測るタイミングが違えば結果は変わる。ほかの人と数値を競うより、自分がいつ、何をしたときに、どんな傾向が出たか。そこを見ていく道具なのでしょう。

トークセッションに登壇した福田萌子さん。使い始めには、一定のペースで呼吸する難しさも感じたという。
トークセッションに登壇した福田萌子さん。使い始めには、一定のペースで呼吸する難しさも感じたという。

飲料のキリンが、なぜ呼気測定を?

 飲料や食品の会社が、なぜこのデバイスを。発表会で示されたのは、従来の「飲む・食べる」に「測る・知る」を加える考え方でした。

 ヘルスサイエンス経営企画部 新事業開拓室 室長の津川翔氏が語ったのは、一人ひとりが自分の状態を知り、自分に合う健康行動を選べる未来。そのための新しい取り組みが、ルーメンです。

 キリンは2023年、開発元のMeta Flow社に出資。技術や日本市場での事業性などを検証し、国内の独占販売権を取得しました。同社によると、CVC活動の投資先との協業から本格的な事業化へ進んだ初の事例とのこと。

 企業としての狙いは分かりますが、では、私たちの暮らしでどう使えるのか。食事や運動を選ぶ際に、自分の体がどう反応したかという情報が加わる。その先を見たいと思います。

日本展開について説明したキリンホールディングスの金子裕司氏(左)と津川翔氏(右)。
日本展開について説明したキリンホールディングスの金子裕司氏(左)と津川翔氏(右)。

続けるには、手応えも手軽さも欲しい

 運動も食事管理も、今日頑張ったから明日すぐに結果が出る、とは限りません。途中で自分を振り返る手掛かりがあれば、続け方を考えやすくなるはずです。

 私も、つい体重に目が向く一人。練習の内容や食事、休息まで含めて考える際に、別の情報が加わるなら知りたい。ただし、そのための測定が続かなければ始まらない。

 金子氏は、食卓やベッドのそばなど、すぐ使える場所に置く方法を紹介していました。福田さんも、測るタイミングを決め、日常のルーティンに組み込むことが大切だと話します。

 測定は約30秒でも、アプリの準備や記録は必要。その手間と費用に見合う気付きが得られるか。便利そう、で終わらせず、実際に使って確かめたい部分です。

測定後にアプリを確認する使用イメージ。数値を日々の食事や運動の記録と照らし合わせることが活用のポイントになる。
測定後にアプリを確認する使用イメージ。数値を日々の食事や運動の記録と照らし合わせることが活用のポイントになる。

体重計の数字、その先を知りたい

 今回確認したのは、あくまで発表会の説明と実演。長期使用による体重や体調への効果を、私自身が検証したわけではありません。また、ルーメンは医療機器ではなく、疾病の診断・治療・予防を目的とした製品でもありません。

 2026年9月30日からMakuakeで先行販売を開始。発表時の案内では、期間は11月13日22時までで、本体と1年間のアプリ利用料を含む応援購入価格は3万4800〜4万9800円(税込)。2026年12月末までのお届け予定です。

 一般販売の開始時期は発表時点で未定。本体は4万5800円、アプリ利用料は月額1180円または年額1万2000円(いずれも税込)を予定しています。本体代だけでなく、使い続ける費用も見ておきたい。

 体重計の数字は気になる。でも、それだけでは分からないこともある。食べたものや練習の内容を、呼気から得られる情報と照らし合わせたら、何が見えてくるのか。キックボクシングを続ける私がルーメンに期待するのは、そこです。

【製品・購入情報】
商品名:ルーメン
サイズ:約102(高さ)×42(幅)×32(奥行)mm
重量:約75g
測定時間:約30秒
専用アプリ:iOS/Android対応、Bluetooth連携
充電:USB充電式
付属品:ドッキングステーション、USB充電ケーブル、トラベルポーチ、取扱説明書

Gallery 【画像】飲料のキリンが展開する“呼吸で測る”デバイスの画像を見る
三宅隆
三宅隆
VAGUE編集長
1978年生まれ。モノ・ライフスタイル誌等の編集部を経てWebメディア『VAGUE』編集長に就任。スイスで行われる世界最大の時計見本市「Watches & Wonders Geneva」を取材するなど、腕時計からモビリティ、最新家電、アウトドアまで大人の審美眼にかなうモノを幅広く追究。自らもキックボクシング歴17年の非常勤インストラクター(KNOCK OUT GYM)として活動し、ビジネスパーソンにウェルネスを提唱。「自分らしく輝く」ために自らをデザインする前向きな生き方の基準として、心身を整える実践者の視点を交え、自分らしい豊かさへの指針を発信中。

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