実用車でありながら心が動く! 新型セレナは心地よさを感じられるミニバン
クルマにはざっくり分けてふたつの種類があるよな、と僕(嶋田智之)は常々思っています。ひとつは趣味のクルマ。スポーツカーやヒストリックカーなど、所有することや操縦することを楽しむためのクルマたちです。
もうひとつは、あえて言葉をあてはめるなら、道具としてのクルマ。日々の暮らしを豊かにしてくれたり、趣味を楽しむために役立ってくれたりするギア、実用色の濃いクルマのことです。もちろんその両方をいい具合に兼ねているクルマも存在してはいるのですが、ミニバンはどうかといえば、あきらかに後者に属すると言っていいでしょう。
そして道具にもふたつの種類があると思うのです。役立ってくれはするけれど、特に心が動かされはしない道具。もうひとつは、使うことで心地よさが感じられる道具です。同じ“使う”のであれば、やっぱり後者であってほしいものですよね。
普段はあまり考えることのない由無し事を並べたのは、2026年2月に発売されたマイナーチェンジ版の日産「セレナ」に、ようやく試乗できたからなのでした。2022年11月に登場した6代目セレナの持ち味をさらに大きく膨らませたような新型は、まさしく使うことに心地よさを感じられるミニバンだったのです。
人を威嚇しない、大人っぽさと穏やかさが共存するクリーンな新デザイン
セレナというクルマについては、今さらクドクドとした説明は不要でしょう。とりわけファミリー層からの支持が高く、長いこと日産の屋台骨を支え続けてきた存在ですから、これまでも街中で見かけることの多いモデルでした。しかし、新型はセレナであることははっきり分かるものの、パッと見た瞬間からの印象が違います。
フェイスリフトが行われ、ベーシックなモデルは水平基調、上級モデルは日産初となるV字型の非対称グリルとされているのですが、どちらもクリーンな印象で、そこがとても好ましく感じられるのです。
ミニバンにはどういうわけか──分かっていますがあえて触れません──ちょっとギラついているコワモテなクルマが多い印象です。しかしながら、僕は昔からその手の顔つきが好きになれませんでした。人を幸せにするためのクルマが人を威嚇してどうする? という感覚が拭い去れないからです。
近頃の日産は、姉にあたる「エルグランド」もそうですが、シュッと引き締まってはいるものの少しも威嚇的ではない、大人っぽさと穏やかさがすんなり共存するたたずまいです。雰囲気いいな……と、ひと目で気に入りました。
Google連携できるNissanConnectが標準装備
今回のマイナーチェンジでは、パワートレインをはじめとするメカニカルな部分には大きな変更点はありません。原動機は第2世代のe-POWERと2リッター直列4気筒自然吸気エンジンの2本立て、駆動もFWDと2モーター4WD(e-4ORCE)の2本立てです。試乗したのはシリーズ最上級グレードの「LUXION」(ルキシオン)で、こちらはe-POWERとFWDの組み合わせのみという設定です。
ドライバーズシートに収まってみました。基本的にマイナーチェンジ前と大きく変化のない水平基調のインパネ周りは、必要なモノについては整然とレイアウトされた物理スイッチで、運転中の操作がさほど頻繁ではない部分はタッチパネルで、とバランス良く分けられていて、相変わらずの分かりやすさ、扱いやすさです。DとRそれぞれのレンジには異なる突起部があって、ブラインドタッチすら可能なボタン式シフトセレクターも扱いやすい印象です。
大きく進化しているところ、それはこのLUXIONには標準で──ちなみにハイウェイスターVやXVパッケージにはオプションで──最新のNissanConnectが備わっている点です。Google搭載のため、ナビゲーションは多くの人が使い慣れているであろうGoogleマップそのもので、地図やデータは常に最新のものに自動更新されるし、検索機能はおそらく世界一優秀でしょう。
さらには「OK Google!」のGoogleアシスタントでエアコンの温度を上げ下げしたり、近くのコンビニを探してナビで誘導してもらったりと音声操作も可能です。あまり親しくない人などを乗せているときに音声コマンドを入れるのがちょっと照れくさい世代ではあるのですが、僕はナビに関してはGoogleマップ派なので、今回は自分のGoogleアカウントでログインして保存済みの目的地までいっさいの面倒なしに走るなど、かなり便利に使うことができました。
スマホとシームレスに連携してくれるのって、地味だけどかなりありがたい機能だと思うのです。細かいことではありますが、充電用のUSBポートがすべてタイプCに統一されたのも、時代にマッチしています。ワイヤレスでのApple CarPlayも、小難しい設定抜きであっさり接続でき、すんなり作動します。
趣味の分野ならともかく、日常ではできるかぎり面倒なことを避けたい僕としては、そうしたもろもろは大感激。おそらく多くの人が同じような感覚をお持ちではないでしょうか。
「テーラーフィット」がかなえるストレスフリーな室内空間
もうひとつ、シートにも触れておくべきでしょう。LUXIONには「テーラーフィット」と呼ばれる専用のシート表皮が使われています。これは日産が本革を超える新素材として開発した、新世代のポリウレタン系合成皮革です。一般的な合成皮革は、見た目はそこそこ高級でも、手触りが硬かったり変にペッタリしていたりします。しかしこれは、ずいぶんしっとり滑らかな質感なのです。ストレッチ性にも優れているようで、座った瞬間に体になじみます。だから、心地よい!
試乗当日は暑くも寒くもなく快適な日和だったので確認できなかったのですが、熱を伝えにくい性質を持っているようで、夏=蒸れる、冬=冷たいという合成皮革の弱点を大きくカバーしているのだとか。これまた目立たない部分ではありますが、快適であることに開発陣がこだわったひとつの証しといえるところでしょう。
ほかのグレードには2+3+3の8人乗りもありますが、LUXIONは2+2+3の7人乗り。2列目はそれぞれ独立したキャプテンシートです。1列目と2列目には疲れにくいゼログラビティシートが全車標準採用されています。
今回の試乗では300kmちょっとしか距離を稼ぐことができなかったとはいえ──ぼっちドライブだったので──ドライバーズシートはとても快適。僕たちのような職業としては距離が短かったわけですが、疲れたという感覚はまったくありませんでした。
シートのできが良いか悪いか。それはクルマ全体の印象をガラッと変えてしまうと言っても過言ではないほどの重要な要素です。その点、新型セレナはだいぶ上々、グランツーリスモを駆るのに似た気分で、長距離をたっぷり走ってみたい気持ちになりました。
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