本革シートよりも布シートのほうが高級だった時代がある!? いまと昔で大きく変わったクルマの価値観の「なぜ?」
前席が本革、後席が布シートというクルマも存在していた
本革シートといえば、現代のクルマの高級な装備の代名詞的な存在です。
布シートに対して、一段上の装備品としてオプションとして用意されることが多く、標準装備とする車種は、おおむね高級車と呼ばれるようなステイタス性の高いクルマばかりとなっています。
しかし、自動車の歴史を振り返ると、常に本革シートが布シートの上にあったわけではありません。実のところ自動車が普及し始めた黎明期は、本革シートよりも布シートの方が高級という時代も存在していました。

クルマが発明され、世に普及していったのは1900年代初頭のこと。
当時のクルマのシートは、そのほとんどが本革張りでした。これは、馬車をルーツに、その御者のシートを流用した結果といえます。
なぜ馬車のシートが本革だったのかといえば、理由は簡単、丈夫だったから。
シートは乗員の乗り降りで、さんざんに擦られます。直射日光にもさらされ、雨で濡れてしまうこともあります。そんな過酷な馬車の御者のシートを布で作ってしまえば、すぐに傷んでしまいます。そのため馬車の御者のシートは基本的に本革シートとなっていました。
そして黎明期のクルマは、そんな馬車の延長という存在。自動車が登場したばかりのころは、そのほとんどがルーフのないオープントップモデルで、屋根があっても簡易的な幌だったため、シートも当然のように本革が採用されていました。
しかし、1910年代から20年代の車両には、ベロアなどの生地が使われはじめました。それはおもに高級車でした。

このころからルーフを持つ箱型ボディのモデルが登場し、そうしたクルマはシートが雨に濡れることを気にする必要がなくなったためです。
また、前席は本革シートでありながらも、後席に布シートを備えるクルマもありました。これは、後席に座る偉い人用の席は布シートということを意味します。つまり本革シートよりも、布シートの方が高級と考えられていたのです。
いまの価値観だと不思議なようですが、ちょっと冷静になって考えれば当然のことといえるでしょう。本革シートは丈夫ですが、表面が硬いし、夏はベタベタし、冬は冷たくなります。ただ座るだけであれば、ソフトで手ざわりもなめらかな布シートのほうが快適であることは間違いありません。
つまり、耐久性よりも快適性を優先するのであれば、布シートのほうが良いという時代だったのです。
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