史上最小のレクサス 新型「LBX」世界初公開 “小さな高級SUV”の開発陣を奮起させた「強烈なダメ出し」とは?
原型はほぼ残っていないレクサス専用のプラットフォーム
レクサスがイタリア・ミラノでブランニューモデル「LBX」を発表しました。すでに車名と外観の一部は公開されていましたが概要は明かされておらず、「一体どんなクルマが登場するのか?」と話題だった、このLBX。フタを開けてみれば、意外にもそれはブランド初のコンパクト・クロスオーバーSUVだったのです。
目指したのは「本物を知る人が、素の自分に戻って気負いなく乗れるクルマ」だといいます。例えるなら、それはハイブランドのスニーカーのようなものでしょうか。肩ひじ張らずに乗って出かけられるけれど、実は内外装の質は高く、走りも小気味よい、というような……。
さて、LBXは一体どんな風にそのコンセプトを具現化しているのでしょうか? 実際にミラノで実車をチェックしてきたので、早速解き明かしていきましょう。
全長4190mm、全幅1825mm、全高1560mm(ただし、シャークフィンアンテナがつかない日本仕様は1540mmになるとのこと!)というサイズのSUVフォルムは、何よりまずプロポーションとスタンスに目がいきます。足元のタイヤのサイズは225/60R17、もしくは225/55R18と大径で、かつフェンダーいっぱいまで張り出していて迫力満点です。
このプロポーションに、グリルフレームを持たず、造形でスピンドルを浮かび上がらせた“ユニファイドスピンドル”と呼ばれるフロントフェイス、キャビン側に引くことでノーズを長く見せるフロントピラー、たくましく隆起したフェンダーに対してキャビンをグンとコンパクトに絞り込んだ安定感たっぷりのリアビューなどが相まって、見た目の印象はとても力強く、カタマリ感に満ちたものに。弱々しいところなど皆無の、まさにクラスレスな存在感を発揮しています。
車両の基本骨格は、お馴染みTNGAプラットフォームの“GA-B”を使っています。それはトヨタの「ヤリスクロス」などと同じものですが、開発責任者である遠藤邦彦チーフエンジニアいわく「原型はほとんど残っていません」というほどのレクサス専用開発版となります。
面白いエピソードがあります。実は当初、LBXはすでに実績のあるGA-Bをそのまま活用する方向で開発が進められ、デザインも描かれたそうです。ところが、このコンパクト・クロスオーバーのコンセプトを提唱していた当時の豊田章男社長が、それを見て寂しそうな顔で「これだったらいらないな……」とポツリ。「やれることしかやらないんだな」という言葉に、開発陣はすべてを見直す決意をしたそうです。
やれること以上のことをやる。常識を打ち破る。その意気込みで、すべてが見直されることになります。
具体的には、まず前述した外径の大きなタイヤを装着するためにホイールベースが22mm伸ばされており、そのためフロントサスペンション周辺はほぼ設計が改められています。タイヤを前に出すためにキャスターが寝かされ、バネ下重量軽減のためにナックルは軽量・高剛性のアルミ鍛造品に。アッパーサポートも上級モデルと同じ入力分離型とされ、操縦性と快適性を両立させています。
遠藤チーフエンジニアによれば、「キャスターが大きいので直線でのスタビリティが高く、それでいてコーナーでも普通ならアンダーステアになるような領域でもしっかり旋回力が出て、意のままに走れるクルマになっています」とのこと。見た目に違わぬ走りを実現できているということですね。
さらに室内に目を向けると、着座位置が15mm下げられています。単にヒップポイントを下げるだけにとどまらず、ステアリングやペダル類の角度をそれに合わせて立てるなど、ドライビングポジションを徹底的に見直しているのです。
このインテリアは水平基調とされ、ダッシュボードからドアトリムまで回り込んだ造形で開放感を演出しています。センターディスプレイをあえて下の位置に置いたのも、視界を広げてコンパクトカーの室内で広々と過ごしてもらうため。空調の吹き出し口もデザインの中に入れ込むことでスッキリ感を強めています。
クオリティも、さすがはレクサス。ニーサポート周辺までソフトパッドで覆うなど、見た目だけでなく実際の使用シーンにおいても心地よく感じられるよう配慮が行き届いています。
ドアのアンラッチ機構に“e-ラッチ”を使っているのも特徴。ドアを開けるときの所作をエレガントに演出してくれます。そしてそのドアを閉めると、今度は「バスッ」という重厚な閉まり音に驚きが。本当に細かいところまで、配慮が行き届いているのです。
前後席間のスペースは十分ですが、どちらかといえば前席優先のモデルといっていいでしょう。一方、ラゲッジスペースは9.5インチのゴルフバッグを手前側に入れられるよう左右をしっかりえぐってあります。その点では、兄貴分である「UX」よりも使い勝手に優れるといってもいいかもしれません。
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