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86やスープラとは違う!? トヨタの“自社開発スポーツカー”どうやって出来る? GRヤリス&GRカローラが生まれる場所! 謎に包まれる「GRファクトリー」とは【Behind the Product #07】

GRヤリスが生み出される拠点、トヨタ自動車元町工場内にある専用工場「GRファクトリー」とは

 2020年に登場した「GRヤリス」。すでに4万台以上を発売、2024年4月からは“進化型”が投入されています。
 
 GRヤリスはスバルとの共同開発された「86/GR86」、BMWと共同開発された「GRスープラ」に続く、トヨタの重要なスポーツ戦略車の1台ですが、この2台と大きく異なるのはトヨタが“独自”で開発・生産を行なうモデルである事でしょう。
 
 すでにそのポテンシャルの高さは筆者(山本シンヤ)をはじめ様々な自動車メディアで発信済みですが、どのように生産が行なわれているかは、実はあまり知られていません。

GRヤリスが生み出される拠点、トヨタ自動車元町工場内にある専用工場「GRファクトリー」
GRヤリスが生み出される拠点、トヨタ自動車元町工場内にある専用工場「GRファクトリー」

 そこで今回は、GRヤリスが生み出される拠点、トヨタ自動車元町工場内にある専用工場「GRファクトリー」を見学してきましたので、報告したいと思います。

 ちなみに元町工場の操業開始は1959年と歴史を持つ工場です。

 かつてはクラウンをはじめとするFR系を中心に生産を行なっていましたが、直近はトヨタの新たなチャレンジカーボンモノコックのレクサスLFA、燃料電池車のMIRAI、更にBEVのbZ4X/スバルソルテラ/レクサスRZなどを形してきた工場でもあります。

 GRファクトリーもその一つと言えるでしょう。

 では、GRファクトリーはどのような挑戦を行なっているのでしょうか。

 それはレーシングカーと同じような高精度・高バランスを量産(と言っても、普通のトヨタ車の量産規模からすると非常に少ない)できる所です。

 このGRファクトリー立ち上げ時にGRカンパニープレジデントだった友山茂樹氏は、「スポーツカーはたくさん売れる物ではありません。多品種/少量生産はトヨタが最も苦手とする部分です。『いいスポーツカーを開発し、適切な価格で売れる力を持つ事』、実はそれができる自動車メーカーは、モノ作りの力がシッカリあると思っています」と語っています。

 それを実現させるファクトの一つが、ベルトコンベアを用いたライン生産ではなくセル生産方式を採用している事でしょう。

 元々「セル生産方式」の意味は少人数、もしくは一人で製品を完成させる作業形態ですが、GRファクトリーはこれらの工程を分割してそれぞれの工程の間をAGV(無人搬送車両)で連結。

 その結果、変種・変量でも生産性を落とすことなく対応可能にしています。

「GRファクトリー」の様子
「GRファクトリー」の様子

 車両の組み立てはトヨタの各工場から集められた精鋭たちが担当しています。

 当然、他の量産ラインよりも人の手による作業工程が多いですが、ロボットが得意な所、人間の手が得意な所をシッカリと把握し、各々の強みを活かすことこそが精度アップに繋がると言う考え方によるものです。

 ちなみにボディの溶接、サスペンション取り付けやアライメント測定などの工程では、正確な位置決めを行なうための様々な計測・工夫を行なうのはもちろん、その計測データを元に相性の良い部品(計測して確認)を組み合わせて使用することで、トータルで公差を限りなくゼロに近づけています。

 GRヤリスの開発責任者である齋藤尚彦氏は「これをやるキッカケは、開発時に試作車同士を乗り比べると、『こっちは良いのに、こっちはダメ』と言う事例があった事です。調べてみると、部品単体では問題ないのに車両トータルではバラつきが出てしまう。

 要するに『部品同士にも相性がある』と。それらを揃えることで本来求める精度を無駄なく実現しています」と教えてくれました。

 その結果、GRファクトリーは従来では職人による手作業しか実現させることができなかった「高精度組み立て」と「量産」を融合させることに成功したと言うわけです。

「GRファクトリー」の様子
「GRファクトリー」の様子

 以前、開発ドライバーを務めた石浦宏明/大嶋和也選手にGRファクトリーについて聞くと、「性能のためにかなり細かい要求をしましたが、シッカリ製品になっているのは工場の皆さんの努力の結果です」、「試作車10台のばらつき試験をしたが、我々でも『クルマを変えた』と言われなければ解らないレベル」と、この生産精度の高さに驚いたそうです。

 ただ、ここまで聞くと「モリゾウこと豊田章男氏の肝いりプロジェクトだから、採算度返しなんじゃないの?」と勘ぐる人もいると思いますが、ハッキリ言わせてもらうが豊田氏はそんな甘くないです。

 社会情勢や景気に左右されないスポーツカービジネスの一番大事な事は「ビジネスとして成り立たせること」です。GRファクトリーも黒字運営できるように設計されています。

 齋藤氏は「少量生産でもコストを上げない、その実現のための特効薬はありません、とにかく『現地現物』と『TPS(トヨタ生産方式)』を愚直にやることでした」と語る。つまり、GRヤリスは大量生産が得意なトヨタの少量生産への“挑戦”でもありました」と教えてくれました。

 ちなみに今回見学はしていませんが、GRヤリスの直列3気筒ターボ「G16E-GTS」は。トヨタ自動車下山工場が担当しています。

 同工場は少量多品種の混流生産ラインを持っていますが、この経験・知見がGRヤリスのエンジン生産に活かされています。

 高性能エンジンを高精度で量産、それも手が届く価格に収めながらと言う無理難題はどのようにクリアしたのか? 齋藤氏は「こちらも生産ラインと同じく『知恵』、それに尽きます」と教えてくれました。

 その一例を記すと、各部品の重量合わせや組み付け精度などを理想値に合わせるための工夫、クリーンルームを用いなくてもコンタミ(製品に混入した不純物)を防止できる工夫などにより、他のエンジン生産の邪魔することなく他のエンジンとは比べものにならない高精度を両立。

「GRファクトリー」の様子
「GRファクトリー」の様子

 更にGRヤリスのエンジンは通常のエンジンより組み付けが難しい工程がいくつかあるそうですが、それも様々なカイゼンや作業者の技術力でカバー。

 その結果、組み付け時間も全て工程内に収められていると言います。

 つまり、メルセデスAMGのように一人の職人が最初から最後まで責任を持って組み上げる作業(One man One engine)を、GRヤリスのG16Eは混流ラインでエンジン製造に関わる“全て”の担当者によって実現しているのです。

 完成したGRヤリスは、工場を出て元町工場内にあるテストコースで全車走行テストを行ないます(通常のトヨタ車は抜き打ちで検査を行なうくらいの頻度)。

 テストドライバーはそのための訓練を受けたメンバーが勤め、細かい部分までチェック。気になる部分があれば再調整が行なわれます。

 つまり、納車時のオドメーターの積算距離は「信頼の証」と言ってもいいと思います。

 そんなGRファクトリーでは、現在GRヤリスに加えてGRカローラの生産も行なわれています。

 その生産能力は約2100台/月(ホモロゲ―ションの年間2万5千台生産から算出)ですが、残念ながら需要に対して供給が追い付いていないのも事実です。

 高精度生産を行なうためタクトタイム(一つの製品の製造にかける時間:GRファクトリーは10~13分程度)をこれ以上縮めるわけにもいかず。となると、後は工場の増設しかないのかなと。

組み立てられた直後には時速120キロでテストを行う
組み立てられた直後には時速120キロでテストを行う

 ちなみに筆者は進化型GRヤリスを注文した1人です。

 ディーラーへの搬入日から逆算すると、取材日前後に生産された可能性が大きいとの事。

 当日、生産されているクルマをチェックしていると、筆者がオーダーしたグレード、ボディカラー、インテリアカラー、トランスミッションのクルマを発見しました。

 あの時のクルマが自分のクルマだと信じて、納車を待ちたいと思っています。

Gallery 【画像】「えっ…!」これが「謎のGRファクトリー」です。画像を見る!
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