「えっ…木が服を着る!?」江戸時代から続く風光明媚なスポット、日本の三大庭園【岡山の後楽園】で見られるレアな冬景色とは
●松の木が服を着る? 岡山「後楽園」のレアな冬景色とは
岡山県の「後楽園」は、偕楽園や兼六園と並ぶ日本三名園として定番の観光スポットです。
江戸時代にかつての藩主によってつくられましたが、日本の伝統的な造園技術や美意識が感じられることから評価が高く、ミシュラン・グリーンガイド・ジャポンでも三つ星を得ています。
たとえば、広々とした園内は池や滝、築山などが水路で結ばれており、能舞台などもある美しい景観は見どころです。

また、早春の水仙にはじまり、春には梅や桜、ツツジ、牡丹、芍薬、サツキが咲き、夏は菖蒲やハス、サルスベリ、秋はカエデやイチョウの紅葉など季節の自然を楽しむことができます。
さらに、茶つみや月見のほか夜間ライトアップなど、趣を変えて様々なイベントが行われるのも魅力的です。
季節の風物詩を楽しみに多くの近隣の人が後楽園を訪れますが、そんな後楽園で冬の間に面白い光景を見ることもできます。
なんと、園内に立ち並ぶ松の木が「服」を着ているのです。
実は、稲藁で織った菰(こも)が松の幹に巻きつけられているのですが、こうした作業は「菰巻き(こもまき)」と呼ばれます。
松の菰巻きは毎年10月中旬に行われており、冬の訪れを告げる行事としてニュースにもなる風物詩なのです。
松をよく見ると、人の胸から頭ぐらいの位置に菰が巻かれており、その菰が外れないように藁縄で結えてあります。松からすれば下のほうがくるりと包まれているので、腹巻きをしてもらっているように見えるかもしれません。
菰巻きされた松は全部で240本ほどですが、あたたかそうな松が並んでいる景色は自然に対する思いやりも感じられるようです。
●いったい何のため?松の菰巻きとは
菰を巻いたまつは一見あたたかそうに見えますが、こうした作業は松を寒さから守るために行われているのではありません。
じつは菰巻きとは、松につく害虫を退治する伝統的な方法です。
普段松の枝葉にいる害虫は、寒くなると枝から土に降りて冬を越します。その習性を利用して、松の幹に菰を巻きつけることで温かい菰の中に害虫を誘導しているのです。

こうした薬剤を使わない害虫駆除は江戸時代から伝わるもの。朝晩が冷え込みだす立冬の頃に菰を巻くといわれますが、今回の菰巻きは2024年10月16 日に行われました。
実際に作業をする際は、はっぴ姿の造園業者の人たちが、松の木1本ずつに菰を巻きつけ縄で縛っていきます。その場面に通りかかった人たちはカメラを構えることも多く、さらに外国人観光客の姿もみられました。
実際に菰巻きを見た人からは、人手を通した情緒が感じられる、冬が来たなと思うといった感想があがっているようです。
また、ネット上でも「1本、1本というのは大事なこと」「毎年大変な作業をお疲れさまです」という技術の大変さを労う声が多く見受けられます。
さらに、海外から訪れた人は、日本ならではの知恵に感心する人も多いようです。
たとえば、「害虫駆除のために化学薬品等を使わず松を守る菰巻を初めて知った」「自然を大切にする日本人らしい素晴らしいものだと感じた」という声が後楽園に寄せられているといいます。
加えて、なかには「菰をまく高さまで揃えていて、見た目も美しく、素敵だと思う」と、菰巻きの作業を讃える人もいるようです。
なお、菰巻きでおびき寄せた害虫は、春の暖かさで動き出す前に菰ごと焼却して処分します。
そのため、松を巻いていた菰を取り外すことになりますが、そのタイミングは冬眠していた虫が穴から出てくるという啓蟄の頃です。
こうした菰を焼き払う作業は「菰焼き」といい、こちらも春を迎える年中行事。2025年の啓蟄は3月5日ですが、後楽園では2月19日に菰焼きが予定されています。
菰を巻いたままの松が見られる期間について、後楽園事務所の担当者は次のように話します。
「菰焼きは令和7年2月19日(水)に行う予定ですので、菰を巻いている松を楽しむことができるのは令和7年2月18日までとなります」
※ ※ ※
後楽園は、江戸時代の姿をほとんど現在に伝えているといわれる、風光明媚なスポットです。そんな空間で見られる松の菰焼きは、タイムスリップしたような感覚を覚えるかもしれません。
VAGUEからのオススメ

タイヤの選び方が変わるーーデザインによる世界観の表現と性能とを両立したブリヂストン REGNO「GR-XIII B Edition」で“大人のドレスアップ”【PR】