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“ワイドボディ”をまとったフェラーリ「512BB」がオークションに登場! 英国のディーラーがカスタムした「ワケありスーパーカー」の正体とは?

ワンオーナーの希少な右ハンドル仕様

 2025年4月9日、イギリスの帝国博物館で開催されたH&Hクラシック・オークションズに珍しいクルマが出品されました。それが、1977年式のフェラーリ「512BB」の“ワイドボディ”仕様。

 その車両解説を読み込んでみて驚きました。なんとイギリスのフェラーリディーラーがカスタマイズを手がけた1台というではありませんか。今では考えられない経緯で誕生した貴重かつ面白い車両です。

H&Hクラシック・オークションズに出品されたフェラーリ「512BB」のカスタム車両(C)H&H Classics
H&Hクラシック・オークションズに出品されたフェラーリ「512BB」のカスタム車両(C)H&H Classics

「512BB」は、1976年のパリサロンで発表された2代目の“ベルリネッタボクサー”です。

 前身に当たる「364GT4BB」と同様、ピニンファリーナのレオナルド・フィオラヴァンティがデザインを担当。「364GT4BB」と同様、印象的なシルエットが特徴的でした。

「364GT4BB」に対して、9Jアロイホイール(7.5Jから拡大)に対応すべく拡幅されたリアトレッドや、高速走行時のリフト(浮き上がり)を抑えるフロントスポイラーが大きな違いといえるでしょう。

 ミッドシップに搭載される、ほぼ5リッターに拡大された12気筒エンジンは最高出力264kWを発生。油圧クラッチ、ドライサンプ潤滑システム、そして強大なトルクを獲得し、0-60mph(0-96km/h)を5.5秒、最高速度は188mph(約302km/h)を誇りました。

 1976年から1981年の間に929台が販売され、そのうちイギリス向けの右ハンドル仕様はわずか101台が生産されただけでした。

 マラネロ・コンセッショナーズ・アーカイブから提供された情報によると、シャシー番号21331の当該車両は、1977年1月12日に発注されました。

 ロッソ・キアーロにネロ(黒)レザーの内装と赤いカーペットで仕上げられ、3か月余りでマラネロ・コンセッショナーズ(当時のフェラーリディーラー、現在のマラネロ・セールス)のイーガム施設に納車されました。

 購入者であるアラン・モレロ氏の手元に「512BB」が納車されたのは、1977年8月1日のこと。そして、当該車両は、今回のオークション出品に至るまでモレロ氏が所有し続けたワンオーナー物件です。

●ディーラーでカスタムしたモデルでも価格は控えめ?

 当時、マラネロ・コンセッショナーズの従業員だったヴィンス・メッズーロ氏は、当該車両である「512BB」の納車前点検をおこなった本人で、33歳のモレロ氏の邸宅に届けました。

 パンサー「J72」やキャデラック「フリートウッド」など全8台のクルマとともに保管されていた当該車両は、メッズーロ氏の手で生涯にわたって整備され続けてきました。

 メッズーロ氏とモレロ氏は、互いにシチリア系の祖先を持つことから親交を深め、メッズーロ氏がマラネロ・コンセッショナーズを退職後も「512BB」はメッズーロ氏の手で整備されてきました。

 そんな「512BB」が納車されてから1年足らずして、モレロ氏は多数のカスタマイズをマラネロ・コンセッショナーズに依頼。おそらく、シャルル・ポッツィとNARTが1978年のル・マン24時間耐久レースに参戦した際のマシン、フェラーリ「512BB コンペティツィオーネ」からインスピレーションを受けたのでしょう。

 マラネロ・コンセッショナーズの板金職人であるバリー・メリマン氏の手によって、フロントとリアのアルミ製フードはフロント9J、リア11Jのアロイホイールを収めるためにブリスターフェンダー化。両サイドのドアの後方にはNACAダクトが装着されました。

 リアフェンダーに設けられたエアアウトレットは、後の「288GTO」の姿を予感していたかのよう。

 コンペティツィオーネスタイルのリアウイングを装着できるようにするためかエンジンフードからはバッジが取り除かれ、新たに4連ウェーバーのエアファンネルが見えるプレキシガラスがおごられています。

 もちろん、エキゾーストもカスタムオーダー品に交換されています。

 オーナーのモレロ氏が当該車両にステレオを決して取りつけなかったことは、エンジンとエキゾースト音を満喫するためだったのでしょう。

 ブリタックス製のマルチポイントハーネスも取りつけられ、ドライバーの視界で赤い警告線が最上部に来るよう、タコメーターはハウジング内に傾けて装着されています。

 モレロ氏の手元にあった他のフェラーリは何度も入れ替わりましたが、この「512BB」だけは残り続けたといいます。ちなみに現在の走行距離は6000マイル(約9600km)に満たないそうです。

 整備記録簿はすべて残っており、最近ではシリンダーヘッドをオーバーホールし、ナトリウム封入バルブが組み込まれたことが記載されています。また、不調だったオドメーターも交換された、とのことです。

 そんな貴重な「512BB」の“ワイドボディ”仕様ですが、予想落札価格は15万ポンド~17万ポンド(約2779万円〜3149万円)と控えめ。これはフェラーリにとって禁断のカスタマイズ車両だからでしょうか?

Gallery 【画像】「えっ…!」これが英国の正規ディーラーが“改造”したフェラーリ「512BB」の“ワイドボディ”仕様です(25枚)

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