映画『60セカンズ』でお馴染みの“エレノア”は「コピーし放題!?」 米国の裁判所がお墨つきを与えたシェルビー「GT500マスタング」ベースのレプリカとは
「GT500マスタング」の改造車“エレノア”の著作権は誰のもの?
映画の劇中に登場する車両の中で、“エレノア”ほど名を馳せた存在は少ないかもしれません。“エレノア”とは、フォード「マスタング」をベースとするシェルビー「GT500マスタング」の改造車です。

“エレノア”は次の4本の映画に“出演”しています。
『60セカンズ』のオリジナル版(1974年公開)に始まり、ニコラス・ケイジ主演のリメイク版(2000年公開)、オリジナル版の監督H.B.ハリッキ自身が出演したメタ映画『ザ・ジャンクマン』(1982年公開)、そして、ジョージ・ルーカス風に再構築された『デッドライン・オート・セフト』(1983年公開)まで、ハリッキ監督とその遺族は“エレノア”を徹底的に活用してきました。
しかし2025年5月、アメリカの控訴裁判所は映画『60セカンズ』シリーズに登場するシェルビー「GT500マスタング“エレノア”」について、著作権による保護を認めないという判決を下しました。
これにより、ハリッキ監督の遺族がレプリカ製作を制限する権利は完全に失われることになります。
今回の訴訟は、シェルビー社がハリッキ監督の未亡人であるデニスを相手取って起こしたものです。デニスは最初の3作品の著作権に加えて、2000年のリメイク版に登場する“エレノア”についても商品化権も所有していました。
実は双方の争いは、今回が初めてではありません。過去にもシェルビー社が製造した「GT500E」レプリカをめぐり、激しい法廷闘争を繰り広げていたのです。
以前、双方の和解が成立した後、シェルビー社、そしてシェルビー社とライセンス契約を結んでいるクラシック・レクリエーションズ(Classic Recreations)が「GT500-CR」という新たなレプリカの製造を開始しました。
これに対し、ハリッキ側は和解協定違反として訴訟を起こし、他のレプリカビルダーに対しても同様の法的措置を取り続けてきたのです。
結果、シェルビー社はこれに対抗すべく、逆に訴訟を起こすという展開になりました。
●自由に“エレノア”風レプリカを製造・販売できる!?
今回の判決で重要な役割を果たしたのが、“タウル・テスト”と呼ばれる判定基準です。
これは映画『バットマン』の初代バットモービルの無許可複製をめぐる「DCコミックス対マーク・タウル事件」で確立された基準。同基準では、著作権で保護されるキャラクターとして認められるには、3つの条件を満たす必要があるとしています。
ひとつは、物理的特徴と概念的特質の双方を備えていること。次に、登場するたびに同一キャラクターとして認識できるほど明確に描写され、一貫した特徴や属性を示すこと。そして、際立った独自の表現要素を含んでいること、です。
今回、裁判所は“エレノア”について、これらの条件を満たしていないと判断。“エレノア”が敗訴した最大の理由は、映画内での描写に一貫性がなく、擬人化された特徴を持たないということでした。
つまり“エレノア”は、特徴的な発言や行動をせず、固有の性格も示さない“小道具”に過ぎないと判断されたのです。
裁判所は、非人間キャラクターが『ナイトライダー』シリーズの「ナイト2000」ほどの知性を持つ必要はないとしながらも、人間や、人間に近いキャラクターとの相互作用を通じて示されるなんらかの主体性が必要だと指摘しました。
残念ながら、“エレノア”にはそうした要素が欠けており、結果として単なる“小道具”という判定を下されることになったのです。
今回の判決は、法的な観点から見れば理にかなったものであり、レプリカビルダーにとっては朗報です。今後、各社が自由に“エレノア”風のレプリカを製造・販売できることになり、ファンの皆さんにとってはより多くの選択肢が生まれることでしょう。
“小道具”に過ぎないとはいうものの、“エレノア”は半世紀にわたって自動車文化に刻み込まれたモデルであり、その存在感は今後も決して色あせることはないでしょう。
久しぶりに映画『60セカンズ』をチェックして“エレノア”の魅力を再認識してみてはいかがでしょう?
VAGUEからのオススメ
ブローバが腕時計の常識を曲げてから10年…「CURV(カーブ)」10周年モデルが証明した小径化による究極のフィット感とクリエイション【PR】