ブロンズウォッチを“育てる”楽しみ? 記念パーティーで一目惚れ購入した150年の歴史が息づくダイバーズの魅力とは
今年で150周年を迎えたアメリカのウォッチブランド
1875年にニューヨークで創業し、今年で150周年を迎えたアメリカのウォッチブランド「BULOVA(ブローバ)」。
その節目を祝うフィルム上映パーティーが先日、東京・銀座で開かれました。会場となった小さな映画館にはさまざまなゲストが集まり、ブランドの歴史を辿る映像がスクリーンに流れるたび、150年という重みが観客に静かに伝わってくるようでした。

この日のために来日したのは、ブローバのマーケティングマネージャーを務めるスーザン・C・チャンドラー氏。彼女がブランドの哲学や記念モデルへの思いを語り、華やかな祝祭ムードのなかにも、歴史を受け継ぎ、次の時代へとつなぐ決意が感じられる特別な夜になりました。

そんな空気に包まれた会場で、私の目を強く惹きつけた一本がブロンズケースの「ミルシップ(98A324/オリーブグリーン)」。展示台の上でスポットライトを浴びるその姿に心を奪われ、気づけば購入を決めていました。
軍用開発に端を発した「幻のダイバーズ」
「ミルシップ」は1950年代、アメリカ海軍の要請で開発されたプロトタイプ・ダイバーズウォッチをルーツとします。1957年前後にわずか9本の試作品が製造され、実際に水深約120mでの潜水テストにも成功したが、軍への制式採用には至りませんでした。
結果として市販されなかったものの、その存在は米海軍艦船局の機関誌にも大きく取り上げられ、“幻のダイバーズ”として知られることに。
この歴史的モデルを復刻したのが2021年の第一弾。そして2025年、ブランド創業150周年を記念し、ケース素材をブロンズへとアップデートした最新作が登場しました。今回の「オリーブグリーン」は、ミリタリールーツを色濃く感じさせる落ち着いたトーンが特徴になっています。

スペックシートを見たとき、まず気になったのは15.4mmというケース厚。数字だけ見ればボリューム感が少し気になります。
ところが実際に腕に乗せてみると、意外なほど収まりがいい。それもそのはず、この厚みは大きくせり上がったドーム型サファイアクリスタルの頂点までを含めた数値。
計ってみたところ、ガラスを除いた実際のケース厚は約11mmに過ぎず、シャツの袖口にも引っかからないスマートな着け心地。ブロンズケースの重量感を感じさせながらも、決して過度ではない絶妙なバランスに仕上がっています。
自然のなかで育った色合い
この夏、私は「ミルシップ グリーン」を海へ、山へ、川へと連れ出しました。ブロンズという素材は、環境に応じて色味が変化していく“育てる楽しみ”があります。
数か月の使用で、ピンクがかった銅色は落ち着きを増し、グリーンダイヤルと驚くほど自然に調和する深みのある色合いへと変化しました。

さらに興味深かったのは、ケースと異なり、裏ぶたとリューズ、そして尾錠の色がほとんど変化しなかった点です。
これらにはブロンズではなく、耐腐食性に優れた別素材が使われていると考えられます。防水性能の低下を防ぐという実用面での理由はもちろんあるでしょうが、それだけでは説明しきれません。
特に尾錠にブロンズを使わなかったのは、腐食リスクを避けつつも製品全体のコストバランスを考慮した結果だと思います。
ブローバは常に“コストパフォーマンスに優れた時計づくり”を哲学として掲げており、その思想が細部にまで貫かれていると実感させられました。

もうひとつ、この時計を特徴づけるのがベゼルです。一般的な逆回転防止式ではなく、両方向に回転する仕様を持ちながら、誤作動を防ぐために「押し込まなければ回らない」という独特の構造を採用しています。
つまり通常はベゼルがわずかに浮いた状態でありながら、防水200mをしっかり担保しているのです。
この仕組みは軍の要求を満たすために考案されたものであり、現代に復刻されてもなお驚きを感じます。道具としての合理性と、技術者たちの知恵の結晶を実感させるギミックでしょう。

またミルシップでもうひとつ注目すげきが、6時位置に備えられた“モイスチャーインジケーター”です。特殊な紙が浸水を感知すると色が変わる仕組みで、ダイバーの安全を守るために考案されました。
当時の技術者たちがいかに真剣に命を預かる道具を作ろうとしたか、その精神が現代にまで受け継がれています。

ブロンズケースと並んで感心したのが、付属のストラップ。コーデュラナイロンの表地にシリコンラバーを裏打ちしたベルトは、見た目のタフさと装着感の快適さを両立します。
今夏はアウトドアでかなりハードに使い込みましたが、糸のほつれや型崩れは一切なし。
汗や水に晒されてもシリコンが肌へのあたりを柔らかく受け止め、ストレスなく着け続けられました。ここにも「日常でしっかり使えるダイバーズ」を目指すブランドのこだわりが表れています。
150周年にふさわしい一本
銀座のパーティー会場で出会い、その場で購入し、自然のなかでともに時間を過ごした「ミルシップ」。
数カ月間使い込んでみて思うのは、これは単なる記念モデルではなく、“これからをともに歩む一本”だということ。ブロンズケースは刻一刻と表情を変え、持ち主の時間や環境を写し込んでいきます。
歴史的背景を持つデザインと、現代的な実用性を兼ね備えたこの時計は、まさに150周年を迎えたブローバの姿勢を象徴していると感じた一本でした。
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