「ダウンジャケットは家で洗う」が常識に!? パナソニック×ゴールドウィンの協業から見える戦略的な狙いとは【家電で読み解く新時代|Case.22】
“最も持たれている上着”に刺す成長ドライバー
国内ドラム式洗濯乾燥機におけるパナソニックの販売台数シェアは約35%である。目標は2026年度に40%。このギャップをどう埋めるかが経営テーマであり、その答えのひとつが「ダウンを家で洗う」という新常識の提案である。
パナソニックくらしアプライアンス社 ランドリー・クリーナー事業部 商品企画部 部長 久保和彦氏は、次のように述べる。
「消費者が求めているのは、単なる“便利”ではなく、暮らしの中で本当に必要とされる機能です。ダウンジャケットのような、多くの人たちに“最も所有されている上着”を自宅で適切にケアしたいというニーズに、家電側から明確な解を出す時です。」
ダウンジャケットは所有率が高く、冬の上着として出番も多い一方で、家庭洗濯への不安とクリーニングコストの高さが弱点となっている。
この課題解決に応えることが、台数ボリュームが大きい秋冬の買い替え動機を直接刺激する。結果として、40%への“あと5ポイント”を現実的に積み上げる導線になる。

「家で洗える」を仕立てる設計と監修体制
製品開発の中核を担ったのが、パナソニック くらしアプライアンス社 ランドリー・クリーナー事業部 商品企画部 五明愛望氏である。五明氏は専用コースの狙いをこう語る。
「中わたが濡れ切る前に表面汚れへ先手を打ち、やさしい機械力で洗い切ること、そして段階的に脱水を立ち上げて中わたの偏りを抑えることを両立させました。家庭で安心して選べる“ダウンの正解”を、コースとして作り込んだのです」
協業パートナーとして監修に入ったのが、THE NORTH FACEなどのアウトドアブランドを持つゴールドウイン。開発本部テック・ラボ 柴田徹氏は、アパレル側の要諦をこう整理する。
「やさしく全体を洗う・複数回の十分なすすぎ・乾燥途中でほぐすという“手洗いの三原則”を、機械側のシーケンスに落とし込めた意義は大きい。非フッ素系撥水の普及で“こまめなケア”が重要になった今、正しい洗いの自動化は衣類のロングライフに直結します」
協業は2021年頃から立ち上がり、アパレルの実践知と家電の制御・メカ設計が擦り合わされた。対象は一般的なダウンジャケット(〜約800g目安)やベスト等で、1着ずつの運用を前提とする。
防水・シームテープ加工品などは対象外とし、“洗える”の線引きも明確にした点が実装品質を支えている。

やさしく濡らす→確実にすすぐ→段階的に脱水
専用コースは大きく三段で設計される。第一にやさしいシャワー+ゆり洗いで表面汚れを泡で攻め、中わたが濡れ切る前に勝負をつける。
第二にすすぎは複数回+中間脱水。ここでしっかり排水してから再立ち上げる制御が“脱水失敗”を避ける。
第三に最終脱水は回転数を段階的に上げることで、洗剤残りを防ぎながら偏り抑制と水切りを両立する。五明氏は言う。
「やさしい機械力だけでは汚れに負けますし、強すぎれば中わたを壊す。泡(水の質)×動き(機械力)×時間(シーケンス)のバランス設計が本質です」
柴田氏も仕上がりを評価する。
「手洗いよりも“再現性が高い”というのが実感です。途中で中わたをほぐすという“人の作法”も、家庭で実行しやすい形で組み込めています」

泡・低振動・ヒートポンプが決め手
コースを下支えするのが、日常洗いでも効く基礎技術である。スゴ泡洗浄は、泡生成ボックスと循環ポンプで高密度の泡をかけ続ける思想だ。五明氏はこう補足する。
「泡を繊維の奥まで届かせ続けることで、強い機械力に頼らずに汚れを浮かせることができます」
さらに低振動設計(吊りスプリング+ダンパー、3Dセンサー制御)が脱水の立ち上がり失敗を抑え、集合住宅の床でも扱いやすい安定感を担保する。
乾燥はトップユニット構造のヒートポンプと熱交換器の自動洗浄で時間・省エネ・性能持続を両立する。専用コースの“洗い上がり”を最終的に決めるのは乾燥品質であり、ここでも風路効率とメンテ性の作り込みが効いている。

“上手に洗える自由”を家に取り戻す
ダウンジャケットを家で正しく洗えるようになったことで、暮らしはまず手間と時間、費用の負担が確実に下がる。クリーニングに依存せず、汚れやニオイが気になった時にその場で対処できるため、着用サイクルが途切れない。
清潔と性能を自宅で維持できる。保温力の低下や撥水の劣化といった実害に即応でき、衣類のコンディションをシーズン中ずっと高い水準で保てる。
さらに、環境負荷と家計への負担を同時に軽くする。輸送を伴う外部クリーニングが減り、乾燥工程の省エネ化とも相まって、CO₂と電気代の双方に効く選択となる。
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