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「マジか!」ブルネイ王室に納車された31年前の“3人乗りスーパーカー”が約39億円で落札 特別な「白いマクラーレンF1」とは

ボディにはMシューマッハとLハミルトンのサイン入り

 2025年12月5日にUAE(アラブ首長国連邦)アブダビで開催されるRMサザビーズのオークションに、1994年式マクラーレン「F1」が出品され、高値で落札されました。

 マクラーレンF1は、単に世界最速のロードカーを目指して生まれたわけではありませんでした。

 設計を率いたゴードン・マレー氏と彼のチームは、当時のスーパーカーに見られた制約や欠点を克服し、フォーミュラ1の技術とカーボンファイバー構造を公道車へと直接移植することを目標としていました。

 その結果として誕生したのが、最高速度391km/hという驚異的な記録を樹立した伝説的マシン、マクラーレンF1です。

 BMW製6.1リッターV12エンジンが生み出す627馬力を、極めて小さな正面投影面積のボディに収めたこのクルマは、ル・マン覇者アンディ・ウォレス選手のドライブにより、自然吸気エンジンのモデルとしては、今なお破られていない最高速記録を打ち立てました。

 マクラーレンF1は、その革新性と走行性能の高さから、フェラーリ「250GTO」やアルファロメオ「8C 2900」などと並び、史上最高のロードカ一のひとつとして名を残しています。

 中央にドライバー席を配した三座レイアウト、エンジンルームの金箔断熱材、そして専用設計の超軽量ケンウッド製10連CDチェンジャーなど、細部に至るまで独創的な設計思想が貫かれていました。
 
 もともとこのクルマはレース参戦を目的としていなかったものの、開発段階で得た性能はレーシングフィールドでも十分に通用しました。

オークションに出品され、高値で落札された1994年式「マクラーレンF1」Sam Chick(c)2025 Courtesy of RM Sotheby's
オークションに出品され、高値で落札された1994年式「マクラーレンF1」Sam Chick(c)2025 Courtesy of RM Sotheby's

 ゴードン・マレー氏は当初、マクラーレンF1をレース仕様にすることを渋っていましたが、最小限の改良を施したGTR仕様として1995年のル・マン24時間レースに出場すると、初参戦ながら総合優勝を果たします。

 ヤニック・ダルマス選手、関谷正徳選手、JJ・レート選手のドライバー陣が駆るラザンテ運営の「ウエノクリニック」号が1位でゴールし、マクラーレンは1-3-4-5フィニッシュという圧倒的な結果を残しました。

 公道仕様のマクラーレンF1はわずか64台しか製造されませんでしたが、その中でも今回紹介するシャシナンバー014は特に注目すべき1台です。

 鮮やかなチタニウム・イエローの外装にブラックレザーとアルカンターラの内装を組み合わせたこのモデルは、当初ブルネイ王室に納車されました。その後、イギリスに戻され、マクラーレン・カーズ元ディレクターのデイビッド・クラーク氏を通じて新しいオーナーに渡り、マクラーレン本社でフルサービスを受けました。

 その後はアメリカに渡り、ニューヨークやカリフォルニアのコレクターによって所有され、BMW北米支社が整備を担当しました。2006年には新たなオーナーの手に渡り、当時の走行距離はわずか3224マイルでした。

 翌年、オーナーの要望によりマクラーレン本社で大規模なリビルドが行われ、ボディカラーはアイビスホワイトに変更。固定式リアウイングを備えた「ハイダウンフォースキット(HDK)」を装着し、GTR由来のフロントバンパーやスプリッター、LM仕様のフロントフェンダールーバーが追加されました。

 HDK仕様に改装されたF1は世界でわずか8台のみで、シャシ014はその最後の1台でした。

 さらに、ヘッドライトやエキゾースト、OZレーシング製のGTRスタイルホイールが新調され、内装もLM仕様へとアップデートされました。

 レース用シートやカーボンファイバーの多用により、よりスパルタンな雰囲気に仕上げられています。この改修費用は総額50万ドルを超え、作業工程は450枚以上の写真で記録されました。

 完成後、車両はノーマン・フォスター設計のマクラーレン・テクノロジーセンターで正式に引き渡されています。

 また、このクルマには興味深い逸話も残されています。

 再塗装前、ドアシルにはミハエル・シューマッハ選手のサインがありました。日付は1996年3月12日、彼がフェラーリでの初戦を終えた直後のことでした。

 その後の2007年、再塗装後にはもう一人の7度のF1王者、ルイス・ハミルトン選手がサインを残しています。ルーキーイヤーを戦っていた当時のハミルトンの署名は、左側のラゲッジコンパートメントに今も残されています。

 その後、このF1はアメリカ各地で実際に走らせながら楽しまれ、走行距離は1万2000マイルに達しました。2018年にはマクラーレン・フィラデルフィアでエンジンを降ろす大規模な整備が行われ、燃料タンクの交換などに5万ドル以上が投じられています。現在はデンマークのオーナーが所有しており、オリジナルのファコン製工具箱も付属しています。

 王室由来の希少な個体でありながら、マクラーレンによって公式にハイダウンフォースキットとLM仕様インテリアを与えられたこのシャシナンバー014は、F1の歴史の中でも特別な存在です。

 1994年式マクラーレン「F1」、最終的に2531万7500ドル(1USドル=155円換算で日本円で約39億2416万円)で落札されました。

Gallery 【写真】1台の値段が39億円超え!? 高値落札された「マクラーレンF1」を細かく見る(33枚)
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