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扇風機でもサーキュレーターでもない!? “空気の自動化”を実現した象印マホービン「2WAYサーキュレーター」とは

なぜ今、サーキュレーターなのか? 背景にある「気候変動」という大きな変化

 象印マホービンがサーキュレーターの開発をスタートしたのは2019年頃だそうです。今回の製品は、およそ6年という長い開発期間を経て誕生したことになります。近年の家電製品としては、この期間はかなり長い部類に入ります。

 しかし、その背景を考えると、この長さには明確な理由があります。

 いま、日本の住環境は大きな変化の渦中にあるからです。まず挙げられるのが気候変動の影響です。日本の夏は年々暑さを増し、猛暑日は珍しいものではなくなりました。一方で冬は暖冬と寒波が極端に入れ替わるなど、気温の変動が激しくなっています。

 こうした環境の中では、エアコンの使用時間は自然と長くなります。しかしエアコンにはひとつ弱点があります。それは空気の循環が得意ではないことです。冷たい空気は床付近に溜まり、暖かい空気は天井に滞留します。その結果、部屋の中には温度ムラが生まれてしまいます。

 この問題を解決する家電として注目されてきたのがサーキュレーターです。実際、ここ数年でサーキュレーター市場は大きく拡大しています。

 ところが象印マホービンがユーザーの使い方を調査したところ、興味深い事実が見えてきました。多くの家庭では、サーキュレーターを単なる空気循環の道具としてではなく、扇風機の代わりとしても使っていたのです。

 つまり人々は、空気を循環させる風と、人に当てる風という、異なる役割を同じ家電に求めていたのです。

RC-AA30は内部のルーバー構造を切り替えることで風の性質を変化させる。空気を遠くまで送り出す直進風と、人にやさしく広がる風を1台で実現している ※撮影のために前ガードを外して撮影してます
RC-AA30は内部のルーバー構造を切り替えることで風の性質を変化させる。空気を遠くまで送り出す直進風と、人にやさしく広がる風を1台で実現している ※撮影のために前ガードを外して撮影してます

扇風機とサーキュレーターは「似て非なる家電」

 ここで改めて整理しておきたいと思います。扇風機とサーキュレーターは似ているようで、実は設計思想が大きく異なる家電です。

 扇風機は人に風を当てて涼しさを感じるためのものです。そのため風は広がりながら柔らかく吹きます。一方、サーキュレーターは空気を遠くまで送り出すためのものなので、風は一直線に進みます。

 つまり、風を拡散させる扇風機と、風を直進させるサーキュレーターは、異なった設計思想を持つ家電なのです。

 通常のサーキュレーターを人に当てると風が強すぎて不快になることがありますし、逆に扇風機では空気を循環させる力が足りません。ここに多くの家庭が抱えてきた矛盾がありました。

 象印マホービンが出した答えは極めてシンプルでした。それならば、二つの風を一台で作ればいい。RC-AA30は内部のルーバー構造を切り替えることで、風の性質を変化させます。空気を遠くまで送り出す直進風と、人に心地よく当たる拡散風。この二つを一台の中で実現する仕組みです。

 しかし、この構造にたどり着くまでの道のりは簡単ではありませんでした。開発当初はサーキュレーターをベースに扇風機の風を再現しようとしましたが、どうしても柔らかい風を作ることができなかったそうです。

 そこで発想を逆転させることになります。扇風機をベースにして、直進する風を作る。このアプローチによって、最終的に七枚のルーバーを使った整流構造にたどり着きました。6年という開発期間は、この二つの風を成立させるための時間だったのです。

本当の革新は「空気の使い方の自動化」

 ただし、この製品の本当の革新は風の種類を切り替えられることではありません。より重要なのは、空気の使い方そのものを自動化した点にあります。

 サーキュレーターは便利な家電ですが、実は使い方が難しいものです。どの方向に向ければいいのか、どの角度で首振りをさせればいいのか。正しい使い方を理解している人は決して多くありません。

 象印マホービンの調査でも、冷房と暖房との組み合わせで風向きを変えて使っている人は半数程度しかいませんでした。

 そこでRC-AA30には、標準、夏、冬という三つの自動運転モードが用意されています。夏には床に溜まる冷たい空気を部屋全体に広げ、冬には天井付近の暖かい空気を下へと循環させます。

 ユーザーはモードを選ぶだけで、空気の流れが最適化されます。長年家電を見てきた立場から言えば、これはサーキュレーターのスマート化とも言える進化です。

RC-AA30には「標準」「夏」「冬」の自動運転モードを搭載。空気の流れを自動で最適化することで、サーキュレーターの難しい使い方を意識せずに利用できる
RC-AA30には「標準」「夏」「冬」の自動運転モードを搭載。空気の流れを自動で最適化することで、サーキュレーターの難しい使い方を意識せずに利用できる

部屋干しという日本の生活問題

 もうひとつ象印マホービンが注目したのが、部屋干しという生活習慣です。花粉や黄砂、PM2.5、突然の豪雨、さらには共働き世帯の増加など、洗濯物を外に干さない家庭は確実に増えています。サーキュレーターを購入する理由としても、部屋干しを効率よく乾かしたいという声は非常に多くあります。

 RC-AA30には、洗濯物をピンポイントで乾かすスポット乾燥と、広範囲をカバーするワイド乾燥という二つの乾燥モードが用意されています。

 この仕組みによって、空気循環の家電でありながら、扇風機としても衣類乾燥機としても機能します。ひとつの家電が複数の役割を担う構造になっているのです。

部屋干しニーズの増加にも対応。左上にあるスポット乾燥とワイド乾燥という2つのモードにより、洗濯物の量や配置に合わせて効率的に乾かすことができる
部屋干しニーズの増加にも対応。左上にあるスポット乾燥とワイド乾燥という2つのモードにより、洗濯物の量や配置に合わせて効率的に乾かすことができる

物価高と住宅事情の変化が生んだ家電

 ここで起業家としての視点からもうひとつ触れておきたいのが、物価高と住宅事情の変化です。家電の価格は上昇し、都市部では家賃も高騰しています。その結果、住宅は小型化し、家電を何台も置く余裕がなくなりつつあります。

 かつての日本では、扇風機、サーキュレーター、衣類乾燥機と、機能ごとに家電を揃えることができました。しかし今はそうではありません。限られたスペースと予算の中で、一台の家電がどれだけ多くの役割を果たせるかが重要になっています。

 RC-AA30は、まさにこの時代背景を象徴する家電です。これは単なる多機能家電ではありません。むしろ生活の中にある複数の課題を一台で解決する家電と捉えたほうが正確でしょう。

同社のシンボルマークである象さんマークもしっかりと中央に刻印されていて愛らしい
同社のシンボルマークである象さんマークもしっかりと中央に刻印されていて愛らしい

2万2000円は本当に高いのか

 象印マホービンの2WAYサーキュレーター「RC-AA30」の市場想定価格は約2万2000円(税込)です。サーキュレーターとして考えれば、確かに安い製品ではありません。量販店に行けば数千円で購入できるモデルもあります。

 しかし、この製品を単なるサーキュレーターとして見ると本質を見誤ることになります。この製品が担う役割は、空気循環、扇風機、衣類乾燥、そして冷暖房効率の改善と多岐にわたります。

 さらに言えば、家電を増やさずに済むという点や、限られたスペースを有効活用できるという意味でも、現代の住環境に対する解決策になり得ます。

 もしこれらの役割をそれぞれ別の家電で揃えるとしたらどうでしょう。扇風機、サーキュレーター、衣類乾燥機と買い揃えれば、当然コストもスペースも増えます。物価高が続く今の日本では、複数の家電を買うよりも一台で済ませるという考え方のほうが合理的です。

6年という長い開発期間を経て完成したRC-AA30。象印マホービン 商品企画部 企画グループの安藤裕樹氏が、その開発背景を熱く語った
6年という長い開発期間を経て完成したRC-AA30。象印マホービン 商品企画部 企画グループの安藤裕樹氏が、その開発背景を熱く語った

 そう考えると、この2万2000円という価格はむしろ、複数の家電をまとめた生活装置の価格とも言えます。

 サーキュレーターとして見れば高い。しかし住環境を整える家電として見れば、決して高いとは言えません。象印マホービンの2WAYサーキュレーターは、単なるサーキュレーターの新製品ではなく、空気家電の次の形を示した一台なのかもしれません。

Gallery 【画像】象印マホービンが初めて開発した「2WAYサーキュレーター RC-AA30」を画像で見る(11枚)

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