VAGUE(ヴァーグ)

AI・PCの勝負は“性能”ではなく“寄り添い方”へ! VAIOが磨いてきた「使いやすさの本質」とは

VAIOは“懐かしいブランド”ではなくなった

 ソニー時代のVAIOは尖っていて、洒落ていて、持つこと自体がひとつのステータスだった。だが、独立後のVAIOは、その華やかさをいったん手放したように見えた。

 コンシューマー市場では存在感が薄れ、「知る人ぞ知る」ブランドへと後退した印象を持った人も少なくないだろう。

 しかし、その裏側でVAIOは別の筋力をつけていた。法人市場だ。今回の内覧会で示されたのは、国内法人向けノートPC出荷台数が直近4年で約3倍に伸びたという実績である。

 さらにノジマグループ入り以降は、個人向けへの再挑戦としてノジマ全店舗展開、ドコモ全店舗での販売、マイスター制度やShop in Shopの導入まで打ち出している。

 つまりVAIOは、いま再びコンシューマー市場へ戻ってきたのではない。法人で鍛えた実力を携えて、ようやく“戻る準備が整った”と見るべきなのだ。

法人市場での躍進を裏付けるデータ。国内法人向けノートPC出荷台数は、2021年度比で約3倍(312%)という驚異的な伸びを見せている
法人市場での躍進を裏付けるデータ。国内法人向けノートPC出荷台数は、2021年度比で約3倍(312%)という驚異的な伸びを見せている

 会場に並んだ新色の天板を眺めていると、その変化は象徴的に見えてくる。鮮やかなカラーリングは、単なる見た目の遊びではない。

 いまやPCはオフィスの机に置きっぱなしの道具ではなく、カフェにも、出張先にも、時には家庭のリビングにも持ち込まれる。仕事道具でありながら、人に見られる“持ち物”でもある。

 その前提に立ったとき、色も質感も、もはや贅沢ではなく機能の一部なのだ。約1kgを切る軽さと複数のカラー展開を両立させてきたVAIOの進化は、そうした働き方の変化をかなり真面目に受け止めた結果でもある。

“人間の不便を諦めなかった”ことが重要だ

 今回発表された「VAIO SX14-R」と「VAIO Pro PK-R」は、インテル® Core™ Ultra シリーズ3プロセッサーを搭載し、全構成でCopilot+ PCに対応する新モデルだ。

 NPU性能は現行比で最大50TOPS、動画再生時の駆動時間は最大約20.5時間、最軽量構成では約948gを実現した。スペックだけを見れば、たしかに“AI PCらしい進化”である。

 だが、VAIOの価値はそこだけではない。軽い。長く持つ。静か。会議しやすい。細かな設定にすぐ手が届く。そうした一つひとつは派手ではない。けれど毎日使うPCにおいては、派手な新機能よりも、こうした“当然あるべき快適さ”のほうが、はるかに効く。

 しかも厄介なのは、こういう不満ほど、ユーザーが簡単に諦めてしまうことだ。少し重いけれど我慢する。周囲の雑音が入るけれど仕方ない。バッテリーは劣化するものだからと受け入れる。ポートが足りなければハブを足す。

 世の中の多くのPCメーカーが見過ごしてきたのは、まさにそういう“人がPCに対して諦めた不便”だった。

「VAIO SX14-R/Pro PK-R」の豊富なカラー展開。機能美としての色彩は、多様化する現代のワークスタイルへの回答だ。(ファインレッドは、 個人向けでの展開、VAIOストアの限定カラーとなる)
「VAIO SX14-R/Pro PK-R」の豊富なカラー展開。機能美としての色彩は、多様化する現代のワークスタイルへの回答だ。(ファインレッドは、 個人向けでの展開、VAIOストアの限定カラーとなる)

 だがVAIOは、その諦めをPC側の責任として引き取ろうとしてきた。その姿勢こそが、いまのVAIOのブランド価値だと私は思う。

 たとえばオンライン会議機能は象徴的だ。3つのマイクを使ったAIノイズキャンセリングに加え、今回は「どの席からもクリアに聞こえる会議室モード」も強化された。

 単に自分の声を届けるだけではなく、6〜8人規模の会議室で遠くの声を聞き取りやすくしたり、反響音を抑えたりする。さらに「エコ撮影モード」では、カメラONでのオンライン会議時にカメラのフレームレートを賢く制御して消費電力を抑える。

 これらはどれも、カタログ映えする派手な機能ではない。だが、いまの仕事環境を知っている人ほど、この積み上げの価値がわかるはずだ。

「VAIOの設定」から、利用環境に合わせた集音モードの選択が可能。多人数が参加する会議室でもクリアな音声を実現する
「VAIOの設定」から、利用環境に合わせた集音モードの選択が可能。多人数が参加する会議室でもクリアな音声を実現する

Copilot+ PCは“参入券”。勝負はその先にある

 新製品内覧会の冒頭で、取締役執行役員常務 開発本部 本部長 林 薫氏はこう語った。

「PCは単なる作業端末ではなく、AIと向き合い、対話し、共に考えるためのコミュニケーションツールになります」

 さらに将来的には、PCの中に「もう一人の自分」のようなAIエージェントが存在し、それを育てる基盤としてエッジデバイスが重要になるという考え方まで示していた。

 この考え方はとても重要だ。なぜなら、Copilotそのものは他社製PCでも使えるからだ。Copilot+ PC対応も、今後は多くのメーカーが揃えてくるだろう。要するに、AI PCであること自体は、まもなく差別化ではなく“参入条件”になる。

 実際、VAIO自身も法人市場ではCopilot+ PCがRFPで指定されるケースや、役員向け社用機として採用される動きが出てきたと説明している。AI PCの普及は、もう未来予測ではなく、現場の要請になり始めている。

「PCはAIと対話し、共に考えるためのツールになる」と語る、VAIO株式会社 取締役執行役員常務 開発本部 本部長 林 薫氏
「PCはAIと対話し、共に考えるためのツールになる」と語る、VAIO株式会社 取締役執行役員常務 開発本部 本部長 林 薫氏

 では、その先で何が差になるのか。筆者は「AIを人が気持ちよく使える状態にまで整えられるか」だと考える。起業家の立場から見ても、AIエージェント時代に本当に重要なのは、モデルの性能差よりも、そこへ至る導線の摩擦をどれだけ減らせるかだ。

 声で指示しやすいこと。周囲のノイズが邪魔をしないこと。どこでも開ける軽さがあること。長時間の作業に耐えること。サブ画面やセンシングが自然につながること。

 つまり、AI機能そのものはMicrosoftが作るとしても、AIを日常の仕事道具として成立させる身体感覚や作業感覚は、PCメーカー側が作る。この領域でVAIOはかなり強い。

 そう考えると、今回の新型VAIOが面白いのは、「VAIOもAI PCになりました」という一点ではない。法人市場で愚直に鍛えてきた“人に寄り添う使い勝手”が、いよいよAI PC時代のど真ん中の価値になってきたことだ。ここに今のVAIOの妙味がある。

法人市場で培われた周辺機器との親和性。「VAIO Vision+」との連携など、実務における「作業感覚」の摩擦を徹底的に排除している
法人市場で培われた周辺機器との親和性。「VAIO Vision+」との連携など、実務における「作業感覚」の摩擦を徹底的に排除している

法人で磨いた“地味な改善”が生活者にも刺さる

 仕事で使うPCのユーザーはシビアだ。毎日触るからこそ、小さなストレスが積み重なる。だから法人市場では、派手な新機能よりも、長く使ってわかる完成度が問われる。

 今回の開発説明でも、インテル Core Ultra シリーズ3 プロセッサーの搭載にあたって放熱設計を見直し、最終的にはフィン改良によって高回転時のファンノイズ低減や表面温度の抑制を図ったことが語られた。

 ベンチマークの数字だけでなく、熱と音の扱いまで丁寧に詰めてきたあたりに、まさに法人で鍛えられたブランドらしさがにじむ。

 バッテリー保証も同じ文脈で読むべきだろう。VAIOは、日本初をうたうメーカー標準保証として、1年を超える経年劣化まで含めたバッテリー保証を全ラインアップへ拡大した。個人向けは3年以内に満充電容量80%以下、法人向けは4年以内に60%以下で無償交換という内容だ。

 

バッテリーの不具合だけでなく、経年劣化まで無償交換の対象に含める「バッテリー総合保証」の概要。使い捨てではなく、長く使う道具としてPCを支えようとするVAIOの思想がよく表れている
バッテリーの不具合だけでなく、経年劣化まで無償交換の対象に含める「バッテリー総合保証」の概要。使い捨てではなく、長く使う道具としてPCを支えようとするVAIOの思想がよく表れている

 バッテリーは劣化して当たり前、だから短くなったら買い替えるか我慢する――多くの人がそう思っている。しかし、本来PCはもっと長く使いたい道具のはずで、その不満を“仕方がない”で終わらせないところにVAIOらしさがある。

 安曇野という製造・再整備の拠点を持つメーカーだからこそ、この発想を現実のサービスに落とし込めるのだろう。

 筆者はこうした地味な改善を、いまの生活者にも十分響くものだと見ている。コロナ禍を経て、PCは完全に“仕事専用の箱”ではなくなった。仕事と私生活の境界は薄まり、家庭のなかにも仕事が入り込むようになった。

 そうなると、法人向けで鍛えられた配慮は、そのまま個人の生活品質にも効いてくる。

 会議の聞き取りやすさも、持ち歩きやすさも、色の選べる楽しさも、全部そうだ。法人で磨いたものが、いまようやくコンシューマーの文脈で再評価されるタイミングが来ている。

新品だけではない。“Reborn VAIO”という入口

 もうひとつ見逃せないのが、VAIOが新品だけでなく、より手に取りやすい入口も作り始めていることだ。

 メーカー公式のリファービッシュPC「Reborn VAIO」は、VAIO独自の厳格な基準で再生され、バッテリー、天板、キーボード面など主要部品を新品に交換したうえで、1年間のメーカー保証が付く。

 安さだけを売りにする中古ではなく、“きちんとした再生品”としてブランド体験を開いている点が大きい。

 これはとても現代的な戦い方だ。ブランドを強くするには、最上位モデルだけを誇示するのでは足りない。入口をどう広げるかが重要になる。

メーカー公式リファービッシュPC「Reborn VAIO」。主要部品を新品に交換し、厳しい基準をクリアすることで、新たなユーザーへの入り口を広げる
メーカー公式リファービッシュPC「Reborn VAIO」。主要部品を新品に交換し、厳しい基準をクリアすることで、新たなユーザーへの入り口を広げる

 新品のSX14-Rで世界観を示しつつ、Reborn VAIOで現実的な選択肢も用意する。さらにノジマ全店舗対象のVAIOマイスター制度や、4店舗でのShop in Shop展開で、店頭で“体験して理解してもらう”導線まで作る。

 製品、販売、再生品、この三層でコンシューマーへの再接近を図っている点は、かなり戦略的だ。

ノジマの店頭スタッフが着用する「VAIOマイスター」の証。専門知識を持ったスタッフが、顧客一人ひとりに寄り添う提案を行う
ノジマの店頭スタッフが着用する「VAIOマイスター」の証。専門知識を持ったスタッフが、顧客一人ひとりに寄り添う提案を行う

“昔みたいに尖る”よりもVAIOが再び面白い

 VAIOはかつてのような象徴的な尖りだけで勝負するブランドではなくなった。働く人の身体感覚やストレスに向き合い続けてきた結果として、いまの時代に合った強さを手に入れたブランドになった、と感じた。

 AI PCの勝負は、もうAIの有無そのものではない。これから問われるのは、そのAIを人がどれだけ自然に、気持ちよく、毎日使えるかだ。

安曇野本社工場にはソニー時代の革新的なモデルが並ぶ。かつての“尖り”を DNAとして受け継ぎながら、現在は「人に寄り添う使いやすさ」へとその情熱を注いでいる
安曇野本社工場にはソニー時代の革新的なモデルが並ぶ。かつての“尖り”を DNAとして受け継ぎながら、現在は「人に寄り添う使いやすさ」へとその情熱を注いでいる

 その意味で、VAIOが本当に勝負すべき相手は、他社のNPU性能ではない。人間の側にある「面倒くさい」「まあ仕方ない」「そこは諦めるか」という妥協の感情だろう。

 その妥協をPCの側が諦めない。そんな思想を愚直に積み重ねてきたブランドだからこそ、VAIOはAI PC時代に入ってからのほうが、むしろ面白い。人に寄り添うという一見地味だが本質的な価値が、ようやく時代の中心に追いついてきたからである。

●製品概要
VAIO SX14-R(個人向け)
価格:オープン価格
重量:約958g ※1〜
プロセッサー:インテル Core Ultra 5 325/Core Ultra 7 356H
特別仕様選択時プロセッサー:インテル Core Ultra 7 356H/Core Ultra X7 358H
メモリー:16GB/32GB/64GB
駆動時間:動画再生時 最大約20.5時間※2
カラー:ファインブラック、ブライトシルバー、ディープエメラルド、アーバンブロンズ、ファインレッド、勝色特別仕様、ALL BLACK EDITION
発売日:2026年5月22日予定

VAIO Pro PK-R(法人向け)
重量:約948g ※1〜
プロセッサー:インテル Core Ultra 5 325/335、Core Ultra 7 356H/366H
メモリー:16GB/32GB/64GB
駆動時間:動画再生時 最大約20.5時間※2
カラー:ファインブラック、ブライトシルバー、ディープエメラルド、アーバンブロンズ
※1 最軽量構成時
※2JEITA測定法 3.0の場合。最大駆動時間は本体仕様により異なります。また、駆動時間は使用状況および設定等により変動します。

Gallery 【画像】VAIOの新型ハイエンドモバイルPCを写真で見る(21枚)
「カチッ」と日常をオフに。至福の時を刻む、マインドフルネス
滝田勝紀
滝田勝紀
VAGUE家電統括プロデューサー
モノ雑誌の編集に15年以上携わり『デジモノステーション』編集長を歴任。現在は家電スペシャリストとして、国内外の最新テクノロジーを長年取材。All About家電ガイドやMakuakeエバンジェリスト、楽天ROOM公式インフルエンサー(フォロワー56万人超)など幅広く活動する。海外取材経験も豊富で、欧州家電メーカー本社や世界最大級の見本市「IFA」への造詣も深い。また、Z世代向けメディア運営やPR会社経営の傍ら、インテリアスタイリスト窪川勝哉氏とのユニット「𝒾𝓃𝒞𝒶𝒹𝑒𝓃𝓏𝒶」で家電開発も手掛ける。機能とデザインの両面から、心地よい暮らしのあり方を提唱している。

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