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ヘラルボニー、Googleと共創! 圧倒的存在感を放つ“異彩ブルー”がカッコいい Google Pixelシリーズ初となる「日本限定モデル」とは

協業の“場所”がこれまでとは異なる

 ヘラルボニーは創業から約7年の間に、航空、金融、商業施設、空間演出、ノベルティ、ブランドデザインまで、幅広い企業共創を形にしてきた。だが、その多くは企業の“周辺”を変える仕事だった。空間や販促物、ブランドの見え方を変える。それは重要だが、製品そのものに深く入る仕事とは少し違う。

 今回のGoogleとの協業が特別なのは、まさにそこだ。ヘラルボニーが関わったのは広告でも展示でもない。スマートフォンという、もっとも個人的で日常的なプロダクトそのものだった。

 日本限定色「Isai Blue」の筐体に加え、専用バンパーケース、ステッカー、壁紙、カスタムテーマまで、所有体験全体に思想が行き渡っている。

今回の協業が広告や展示といった表層的なものではなく、プロダクトそのものに深く関わっていることの象徴だ
今回の協業が広告や展示といった表層的なものではなく、プロダクトそのものに深く関わっていることの象徴だ

 その背景を、Google Pixel製品企画アジア太平洋事業統括リージョナルディレクターの阿部和子氏はこう語っていた。

「日本はGoogleにとってAシリーズの成功がブランド全体の成長を牽引する、世界でも極めて重要な市場のひとつです」

 つまり今回の日本限定モデルは、単なる販促策ではない。Googleが日本市場を特別な意味を持つ場所と捉えているからこそ実現した企画なのだ。

Google Pixel製品企画アジア太平洋事業統括リージョナルディレクターの阿部和子氏。日本市場におけるAシリーズの重要性と、Pixel 10周年の節目に日本限定モデルを投入する意義を説明した
Google Pixel製品企画アジア太平洋事業統括リージョナルディレクターの阿部和子氏。日本市場におけるAシリーズの重要性と、Pixel 10周年の節目に日本限定モデルを投入する意義を説明した

Googleが欲しかった“人間味”

 今回の発表会で印象的だったのは、Google側がこの取り組みを表層的なアートコラボとして語っていなかったことだ。そこには、テクノロジーの進化だけでは埋まらない何かへの自覚があった。

 阿部氏は、Googleが「人に寄り添う」ことを追求してきた一方で、研究開発や機能進化だけでは人間味が欠けてしまう部分があると語ったうえで、こう続けた。

「ヘラルボニーさんのアートってすごく人間らしさというか、人間味を感じる。作品に触れた時に本当に心を動かされる。まさにこれだなと思ったんです」

 Googleはヘラルボニーに“社会的に正しい相手”を見たのではない。AI時代のハードウェアが失いがちな、生っぽさや揺らぎ、感情の温度を補う存在として強く反応したのだ。一方、ヘラルボニーの松田崇弥氏もまた、この協業を美談にはしていない。

「チャリティーじゃなく、ちゃんとビジネスとして世界に展開していけるようなブランドを作れたらと思って創業しました」

 さらに、ヘラルボニーが大切にしている価値基準について、こう続けた。

「『障害のある人が書きました』という打ち出しではなくて、純粋に素敵だね、かっこいいね、というところで購買行動が起きることを大切にしています」

 この言葉があるから、今回の協業は“支援”の話に回収されない。両者は、表現を正当な価値として市場に実装するという考え方でつながっている。

株式会社ヘラルボニー 代表取締役 / Co-CEO 松田崇弥氏。チャリティーではなく、表現を正当な価値として市場に届けるという同社の思想をあらためて語った
株式会社ヘラルボニー 代表取締役 / Co-CEO 松田崇弥氏。チャリティーではなく、表現を正当な価値として市場に届けるという同社の思想をあらためて語った

“異彩”を日用品の中に住まわせた

 モデル名の「Isai Blue」も象徴的だ。Pixelの色名は自然界のモチーフが多いが、今回は明らかに異なる文脈から名付けられている。

 阿部氏は、ヘラルボニーに相談する前から社内で「異彩」という言葉が候補に挙がっていたと明かした。

「普通ではないことを可能性として捉えようよ、という思いと、1人ひとりのありのままの個性に寄り添う思いを込めて、この『異彩』という言葉がいいかもね、と社内で話していたんです」

 青そのものにもヘラルボニー側から明確な提案があった。松田氏はこう語る。

「世界自閉症啓発デーでは、東京タワーやエッフェル塔など世界中のランドマークが青になります。私たちは、その青を1人ひとりの個性に寄り添っていく色だと捉えています」

 さらに、Pixel 10aのデザインを担当した松岡良倫氏も、Google側に青を自然に受け止める土壌があったことを語っている。

「日本には藍染もありますし、ブルーユニフォームもあります。柔道着にも白と青がありますよね。日本の特別な色として、青がいいんじゃないかと思っていたんです」

 面白いのは、片方が相手に寄せたのではなく、双方から“青”が自然に立ち上がってきたことだ。だからIsai Blueは後付けの限定色に見えない。言葉としての異彩と、文化的な青がきれいに重なっている。

Google Pixel 10a 日本限定モデル「Isai Blue」の思想を語る、Googleとヘラルボニーの登壇者たち。右から2番目が作家の水上 詩楽(みずかみ・しがく)氏
Google Pixel 10a 日本限定モデル「Isai Blue」の思想を語る、Googleとヘラルボニーの登壇者たち。右から2番目が作家の水上 詩楽(みずかみ・しがく)氏

色を“作品”に変えるフラットな背面

 今回の10a自体をスペックの細部まで掘る必要はそれほどない、と私は思っている。だが、ひとつだけ非常に重要なのは、完全なフラット背面というデザインだ。松岡氏はこの背面設計について、かなり率直に話していた。

「10年目にあって、やっとまたフラットにできたっていうのがとても嬉しいですね」

 さらに、こうも続ける。

「カメラが出っ張っていると、どうしてもそこに目がいってしまう。どうしてもここを平らにしたかったんです。そうすることによって、このIsai Blueの色が入ると思った」

 フラットであることは、単にミニマルで美しいという話ではない。色を一枚の面として成立させるための前提条件だったのだ。実際、松田氏も実機を見た印象をこう語っている。

「ただの塗装された表面的な青さじゃなくて、すごく深みがある。単なるスマホっていうものを超えて、本当に新しい作品というか、アートと言っても過言じゃない」

 ここで言う“作品”とは、スペックを超えて、手にした時の感情まで含めて成立するものだろう。テック企業が作る製品に対してこの言葉が自然に出てくること自体、今回の協業の特殊さを物語っている。

カメラの出っ張りを抑えたフラットな背面は、Isai Blueの深みを一枚の面として見せるための重要な条件でもあった
カメラの出っ張りを抑えたフラットな背面は、Isai Blueの深みを一枚の面として見せるための重要な条件でもあった

完成の最後の一手をユーザーに委ねた

 Isai Blueには、専用バンパーケースとオリジナルステッカーが付属する。これを単なる限定特典と見ると、このプロジェクトの面白さを見落とす。まずバンパーケースについて阿部氏は、こう説明している。

「この青い筐体ができたからこそ、この質感を隠さないように、側面だけを守るバンパーケースというスタイルを提案しました」

 松岡氏も「ずっとやりたかった」と話しており、10aのフラット構造だからこそ成立したデザインだという。さらに興味深いのがステッカーだ。阿部氏はここで、かなり本質的なことを言っている。

「完成されたプロダクトを渡すのではなくて、最後のピースをユーザーさんに委ねる体験を作りたかったんです」

 企業が100点満点の完成品を作って終わるのではなく、ユーザーが貼ることで初めて“自分のもの”として完成する余白を残す。つまり今回のIsai Blueは、製品として閉じていない。ユーザーの手が入ることで、所有体験そのものが開いていく設計になっている。

 松田氏が、スマートフォンの中にヘラルボニーの作品が入ることについて、「この上ない喜びに感じています」と話していたのも印象的だった。見るためのアートではなく、毎日触れるものの中にアートが宿る。その変化は、想像以上に大きい。

オリジナルステッカーを貼ることで、端末は初めて“自分のもの”として完成する。最後の一手をユーザーに委ねる発想も、今回の協業の大きな特徴だ
オリジナルステッカーを貼ることで、端末は初めて“自分のもの”として完成する。最後の一手をユーザーに委ねる発想も、今回の協業の大きな特徴だ

壁紙やUIにまで踏み込んだからこそ本物

 今回の協業で決定的だったのは、外装だけで終わらなかったことだ。壁紙やテーマ、アイコン表現にまで踏み込んだことで、ヘラルボニーの思想はスマホの内側の体験にも入った。

 しかも阿部氏によれば、当初はソフトウェアのカスタマイズは予定になかったという。

 だが議論を重ねる中で、「外装だけじゃなくて、プロダクト存在そのものがアートであるべきなんじゃないの」という考えに至り、カスタムテーマの実装へ進んだ。そのプロセスについて、阿部氏はこうも語っている。

「我々が一番したかったのは、アーティストさんの意思や意図を崩さないこと。一方で、スマホとしての使いやすさや性能には妥協できない。その間を行き来しながら形にしていきました」

 この言葉が示す通り、今回のUI実装は、単に作品を“デジタル壁紙化”したものではない。作家の意図と、プロダクトとしての要件を両立させるための試行錯誤の産物だ。松田氏もそこを評価している。

「個人的な嗜好や、何が好きな食べ物かというプロフィールのところにも踏み込んで形にしてくれた。だからこそこういったプロダクトが完成したんだなと感じています」

 ここまで来ると、今回のGoogle案件は“アートを使ったスマホ”ではない。思想をUIレベルまで翻訳したスマホである。

壁紙やテーマ、アイコン表現にまで踏み込んだ今回のUI設計。作家の意図を崩さず、スマホとしての使いやすさも守る、その両立に開発陣は挑んだ
壁紙やテーマ、アイコン表現にまで踏み込んだ今回のUI設計。作家の意図を崩さず、スマホとしての使いやすさも守る、その両立に開発陣は挑んだ

これは“時代に必要なスマホ”だ

 正直に言えば、Google Pixel 10aをスペックだけで評価すると、驚くような進化をことさら強調する製品ではない。完成度は高く、AI機能もカメラも日常使いには十分以上だ。

 だが今回の取材を通じて見えてきたのは、この端末の価値が数値の派手さではなく、どんな時代認識の上に置かれた製品なのかという点にあることだった。

 Googleは、日本市場におけるAシリーズの重要性を何度も強調していた。だからこそ、Pixel 10周年という節目に日本限定モデルまで用意したのだろう。

 しかもIsai Blueは256GBのみでありながら、通常256GBモデルと同価格に据え置かれている。限定感を理由に価格を上乗せするのではなく、ブランドの意思を込めた特別な一台として差し出しているわけだ。

 ここに見えるのは、スマートフォン市場が“機能の競争”から“意味の競争”へと移っているという現実である。技術が成熟した時代にブランドが問われるのは、どれだけ新機能を積み上げたかだけではない。

 何を信じ、誰のために作り、それをどんな体験として届けるのか。そこまで含めて製品で語れるかどうかが、いまの差になる。

ヘラルボニーとの協業が特別なのは、アートを借りたからではない。GoogleがAI時代のPixelに必要だった“人間味”を見いだし、それを所有体験にまで実装したからだ
ヘラルボニーとの協業が特別なのは、アートを借りたからではない。GoogleがAI時代のPixelに必要だった“人間味”を見いだし、それを所有体験にまで実装したからだ

 ヘラルボニーとの協業が特別なのは、アートを借りたからではない。Googleが、AI時代のPixelに必要だった“人間味”を、ヘラルボニーの思想と表現の中に見つけ、それをスマートフォンの所有体験そのものへ実装したからだ。

 だからこの一台は、私たちにひとつの問いを返してくる。スマートフォンは、何ができるかを競うための道具なのか。それとも、自分らしさや感情、価値観まで含めて、日常を共にする“器”になっていくのか。

 Google Pixel 10a 日本限定モデル「Isai Blue」は、その問いに対する、現時点でかなり誠実な答えのひとつだと感じた。

●製品概要
Google Pixel 10a 日本限定モデル「Isai Blue」
価格:9万4900円(税込)
ストレージ:256GB
付属品:専用バンパーケース/オリジナルステッカー
特別仕様:限定壁紙/カスタムテーマ
発売日:2026年5月20日

Gallery 【画像】Google Pixel 10aの日本限定色「Isai Blue」を写真で見る(15枚)
「カチッ」と日常をオフに。至福の時を刻む、マインドフルネス
滝田勝紀
滝田勝紀
VAGUE家電統括プロデューサー
モノ雑誌の編集に15年以上携わり『デジモノステーション』編集長を歴任。現在は家電スペシャリストとして、国内外の最新テクノロジーを長年取材。All About家電ガイドやMakuakeエバンジェリスト、楽天ROOM公式インフルエンサー(フォロワー56万人超)など幅広く活動する。海外取材経験も豊富で、欧州家電メーカー本社や世界最大級の見本市「IFA」への造詣も深い。また、Z世代向けメディア運営やPR会社経営の傍ら、インテリアスタイリスト窪川勝哉氏とのユニット「𝒾𝓃𝒞𝒶𝒹𝑒𝓃𝓏𝒶」で家電開発も手掛ける。機能とデザインの両面から、心地よい暮らしのあり方を提唱している。

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