2027年からエアコンは大きく、高くなる? ダイキンは売れ筋6畳用を“1mmも大型化せず”省エネ基準に対応
2027年問題は、エアコンメーカーの“設計力”を試す
いまエアコン業界では「2027年問題」という言葉が頻繁に聞かれるようになりました。2027年4月以降、新しい省エネ基準への対応が進むことで、従来と同じ作り方では基準を満たしにくくなります。省エネ性能を高めるなら、熱交換器を大きくする、室外機の能力を上げる、より高性能な部材を使うなど、いくつもの方法があります。ただ、それを突き詰めれば、製品の大型化や高価格化につながる可能性もあります。
実際、ダイキンの説明でも、消費者の間に「安価なエアコンがなくなる」「小さいエアコンがなくなる」といった不安や誤解が生まれていることが示されました。2026年夏には例年以上に販売が伸び、早めに買い替えようとする動きも見られたといいます。
しかし、今回の発表会で筆者がもっとも興味を引かれたのは、規制そのものではありません。厳しい条件を前にしたとき、ダイキンがそれをどのように“解いたか”です。2027年モデルを見ると、単純に全部を大きくするのではなく、能力帯や使われ方に応じて設計を細かく組み直していることが分かります。

「1mmも大きくしない」売れ筋6畳用で守ったもの
象徴的なのが、ミドル・スタンダードモデルの設計です。2027年モデルでは能力帯に応じて室内機を作り分け、必要なモデルでは奥行きを増やし、室外機についても従来より大きなクラスを組み合わせています。つまり、すべてを無理やり従来サイズに押し込んだわけではありません。
一方で、全ラインアップのなかでも販売台数が多い6畳用のEシリーズについては事情が違いました。ダイキンによれば、このモデルは現行機から高さ、幅、奥行きを「1mmも大きくすることなく」2027年モデルへ刷新したといいます。
6畳用エアコンは寝室や子供部屋などにも設置され、窓上やカーテンレール上などスペースが限られるケースも少なくありません。特に高さ250mmという寸法は、カタログ上の数字以上に「そこへ取り付けられるか」を左右します。
全部を守るのではなく、生活者にとって何を守るべきなのかを選び、その制約条件のなかで技術を最適化する。これは製品開発だけでなく、企業経営や事業づくりにも通じる考え方です。制約が増えたとき、あらゆる条件を維持しようとすれば、コストも複雑性も増します。重要なのは、顧客にとって失ってはいけない価値を見極め、そこへ技術やリソースを集中することです。今回のダイキンには、その判断がかなり明確に見えました。

高断熱住宅では「強く動く」より「弱く上手に動く」
そして、その設計思想を支えているのが、ダイキンのコア技術のひとつであるコンプレッサーです。これからの住宅では、エアコンに求められる能力そのものが変わってきます。
2025年から新築住宅には省エネ基準への適合が義務化され、住宅の断熱性能は着実に高まっています。断熱性の高い住宅では外気の影響を受けにくいため、一度設定温度に到達すれば、エアコンは大きな能力を出し続ける必要がありません。ダイキンの試算でも、断熱性能が高くなるほど低い空調負荷で運転する時間が増え、断熱等級5の住宅では冷房定格能力の20%以下という低負荷領域で動く時間が長くなることが示されました。
そこで重要になるのが、「どれだけ強く冷やせるか」ではなく、「小さな能力で、どれだけ効率よく安定して動き続けられるか」です。2027年モデルの「うるさらX」では、「小能力時高効率型コンプレッサー」の対象を2.2kW、2.5kWクラスまで拡大。これによってRシリーズでは全能力帯が対象になりました。

数年前から仕込んだ技術が、2027年に効いてくる
発表会後の質疑で開発担当者に詳しく聞くと、今回の対応は新しいデバイスをひとつ追加しただけ、という話ではありませんでした。2.2kW、2.5kWクラスでは、圧縮機の回転を低く抑えながら消費電力も抑える新たな制御を開発。さらに2027年の省エネ基準で重要になる暖房中間能力で効率よく動かすため、ダイキン独自のスイング圧縮機にも改良を加えたといいます。
興味深かったのは、こうした技術が2027年対策として突然生まれたわけではないことです。ダイキンは数年前、フラッグシップである「うるさらX」のAPFを高めるため、熱交換器や圧縮機をはじめ、さまざまな要素技術を磨いてきました。そのとき蓄積してきた技術を、今回ミドル・スタンダードまで落とし込んできたわけです。
筆者はここに、空調専業メーカーとして積み重ねてきた強さを感じます。新しい規制が登場してから慌てて対応するのではなく、将来必要になる技術を先回りして仕込み、条件が変わったときに組み合わせて製品として成立させる。“世界初”と大きく打ち出すような派手な機能ではありませんが、むしろこういう部分に長年の研究開発力の差が表れるのではないでしょうか。

実使用データから変えた「暖房」と「睡眠」の制御
もちろん、2027年モデルの進化は省エネ性能だけではありません。新しい「ヒートブースト制御(外気温連動)」では、外気温が2℃以下になると暖房能力を引き上げます。圧縮機の回転数を素早く高めるだけでなく、風量も増やして足元まで温風を届けることで、14畳相当の試験では設定温度への到達時間を従来の約18分から約14分へ、約20%短縮しました。
面白いのは、この制御が単なる“最大パワー競争”から生まれたわけではないことです。ダイキンは「Daikin Smart APP」に接続されたエアコンの運転データを分析し、暖房時には多くのユーザーが「風量自動」を選んでいることを確認。その実際の使われ方に合わせ、寒いときに必要な能力を素早く引き出す方向へ制御を見直しました。
一方、冷房では真逆ともいえるアプローチを取っています。「微風おやすみ運転」では、睡眠時の体温変化に合わせて室温を変化させる従来制御に加え、風量の変動を抑制。2.2~2.8kWクラスでは運転音を31~33dBまで抑え、熱帯夜に朝までエアコンを使い続けることを前提として、風や音による不快感を減らしています。
つまり今回のダイキンは、一方では低負荷時にごく小さな能力で効率よく動かし、もう一方では寒い朝など必要な瞬間に素早く能力を引き上げています。強いか弱いかではありません。必要なときに、必要なだけ働ける領域を広げているのです。

“技術力”とは、制約のなかで何を残すかを決める力
さらに発表会では、施工後でも配管まわりを確認しやすい構造、ドレンホースをワンタッチで付け替えられる仕組み、施工経験が十分でない人でも配管を接続しやすくする別売のフレアレスジョイントなど、カタログのAPF値には表れない改善も実機で確認できました。
エアコンは工場から出荷された時点では、まだ暮らしの道具として完成しているとはいえません。正しく設置されて初めて、本来の性能を発揮する製品です。だからこそ、圧縮機や熱交換器だけでなく、施工性まで含めてエンジニアリングする。ここにも空調メーカーとしての思想が見えます。

制約が厳しいほど、“本当の技術力”は見えてくる
「技術力がある」という言葉は便利ですが、ともすれば最大能力や“世界初”の機能だけを指して使われがちです。しかし今回の2027年モデルを見ていると、その意味はもっと広いと感じます。規制が厳しくなり、住宅が変わり、暑さもエアコンの使われ方も変わっていく。そのすべてに対して、何を変え、何を残すのかを決め、圧縮機、制御、筐体、さらには施工性までをひとつの製品としてまとめ上げる。それこそが、本当の意味での技術力なのではないでしょうか。
2027年の省エネ規制は、エアコンメーカーにとって大きな制約です。しかし、制約が厳しくなるからこそ、メーカーが長年積み重ねてきた技術の差は、むしろ見えやすくなるのかもしれません。新しい「うるさらX」と2027年ラインアップから筆者が感じたのは、単に新しい省エネ基準をクリアしたこと以上に、“制約を技術で解く”というダイキンのものづくりの底力でした。
【製品概要】
ダイキン ルームエアコン 2027年モデル「うるさらX」Rシリーズ
発売日:2026年11月1日
価格:オープン価格
市場想定価格:30万円前後〜47万円前後
2.2kW(おもに6畳用):30万円前後
2.5kW(おもに8畳用):32万円前後
2.8kW(おもに10畳用):34万円前後
3.6kW(おもに12畳用):36万円前後
4.0kW(おもに14畳用):37万円前後
5.6kW(おもに18畳用):40万円前後
6.3kW(おもに20畳用):43万円前後
7.1kW(おもに23畳用):45万円前後
8.0kW(おもに26畳用):47万円前後
※メーカー資料ではオープン価格。市場想定価格は、取材時に示された「前年モデル比で約1万円上乗せ予定」という説明をもとにした目安です。
電源:100V/200V
室内機サイズ:W798×D370×H295mm
主な新機能:微風おやすみ運転/ヒートブースト制御(外気温連動)/小能力時高効率型コンプレッサー
主な機能:プレミアム冷房/さらら除湿/うるる加湿/サーキュレーション・垂直気流/ストリーマ空気清浄/水内部クリーン/スマートフォン操作
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