「ワーゲンバス」がサイケ感たっぷりに登場 どうして「タイプ2」はヒッピーの象徴なのか【MVの名車】
ダウン・アンダーは地球の反対側(南半球)という意味
日本で“洋楽”がブームとなった1980年代。アメリカのビルボード・チャートには、アメリカ、イギリスのアーティストだけでなく、オーストラリア出身のアーティストの名前が見られることも多かった。
この時代の代表的なオーストラリア出身アーティストといえば、今なお絶大な支持を集めているAC/DC、ファンクロックバンドのINXS(インエクセス)、AORブームを築き上げたエア・サプライ、1981年に「ジェシーズ・ガール」で全米1位になったリック・スプリングフィールドなど。1970−1980年代に全米チャートの常連だったオリビア・ニュートン=ジョンも生まれはイギリスで、幼い頃にオーストラリアに移住している。
そんなオーストラリアで80年代に彗星のごとく現れたのがメン・アット・ワークだ。
ヴォーカルのコリン・ヘイを中心に1979年に結成したメン・アット・ワークは、1981年にアルバム『ワーク・ソング』(原題は『Business as Usual』)でデビュー。そして翌年に全米進出すると、「ノックは夜中に」(原題「Who Can It Be Now」)が全米1位に輝いた。
●砂漠を走る1台のワーゲンバス
今回ピックアップする「ダウン・アンダー」は、「ノックは夜中に」に続くシングルで、この曲も全米1位になっている。
“Down Under”とはイギリスから見て地球の反対側を指す。つまりはオーストラリアやニュージーランドのことだ。北半球が上に描かれる一般的な地図では、オーストラリアを始めとする南半球の国々は地図の下側に表記されることからも、この言葉の意味がわかるはずだ。
この時期のメン・アット・ワークのMVには、どこかサイケデリックさを感じさせる表現が含まれていた。「ノックは夜中に」でもドアスコープから外を覗くシーンにそれを感じることができる。
それに対して、イントロに流れるフルートが印象的な「ダウン・アンダー」のMVは、全編サイケデリック!
舞台はオーストラリアの砂漠。箱の上に置かれた酒の瓶を叩いた後、カンガルーバーを装備したオレンジ色のフォルクスワーゲンタイプII(ワーゲンバス)が走ってくるシーンに変わる。バスは砂漠の真ん中で壊れて動かなくなってしまうのだが、ここからの映像がコミカルさとサイケ感が入り混じっていてとてもおもしろい。
MVの中にタイプIIが出てくるのは冒頭のわずか10秒ほど。しかしタイプIIの存在が観るものを一気にサイケデリックな世界へといざなっている。この作品の名脇役といえるだろう。
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