シェアを一気に拡大中! カーナビメーカーが作るスマホ地図アプリ
今、急速に人気を集めているスマートフォン専用カーナビアプリがパイオニアの「COCCHi(コッチ)」です。
2023年9月にサービスを開始してから順調にダウンロード数を伸ばし、2024年9月にはついに60万件を突破。まさにうなぎ登りの人気ぶりで、来年3月には100万件も夢ではない勢いだそうです。
この人気の理由はどこにあるのか、今回は普段からCOCCHiを利用しているモータージャーナリストの藤島知子さんと共に、COCCHiのデザインを担当した原さんのアドバイスのもと、その魅力を改めて検証してみることにしました。
藤島さんは年間200台以上のクルマを試乗し、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員を務めながら、現在は「クルマでいこう」(テレビ神奈川)のMCも担当されています。今回はそのモータージャーナリストならではの視点でCOCCHiを評価していただこうというわけです。
ちなみに、この記事を担当する私は藤島さんと同じ日本自動車ジャーナリスト協会に所属する会田肇です。自動車雑誌編集部に勤務した後、1990年にパイオニアが初のGPSカーナビ「AVIC-1」を登場させてからというもの、それ以降はずっとカーナビのリポートを生業として参りました。
そんな私が「COCCHi」の登場で抱いた第一印象は「パイオニアが培ってきた車載カーナビのノウハウが隅々まで詰まっているアプリに仕上がっている」ということでした。画面を見た瞬間に、今までのカーナビアプリとは次元が違う! そう思ったからです。
スマートフォンで展開するカーナビアプリは今まで、クラウドからのデータを展開する以上、通信が遅延しないように可能な限り色づかいや表示内容を減らしてデータを軽くしてきました。しかし、同じカーナビアプリながらCOCCHiはそんな印象を微塵(みじん)も感じさせなかったのです。
それどころか「これはまるで車載ナビそのもの!」。そう実感したのでした。
藤島さんも実はカーナビのヘビーユーザーです。
仕事柄、クルマに乗って移動することが多く、そのためにもカーナビは欠かせません。しかし「ロケに向かう場所はその都度違っていて、そこは(撮影上の見栄えも考慮してか)できて間もない施設であることが結構多い」そうで、そんな時に「いつも最新データであるカーナビアプリはとてもありがたい存在になっている」というわけです。
そんな中でCOCCHiの登場は「期待に胸が膨らんだ」と言います。
その理由について藤島さんは「これまでパイオニアは、サイバーナビでARを組み合わせたり、音声での案内をメインとした車載機器を開発したりと、常に最新技術を投入したりしてきたチャレンジングな会社」であることを知っているからで、当然ながら「カーナビアプリであってもその技術が注がれている」との期待感を抱いたからです。
とはいえ、すでに多くのカーナビアプリが登場してきた中で、COCCHiはいわば後発。どうしてパイオニアはこの時期にナビアプリ「COCCHi」を登場させたのでしょうか。
パイオニアファンに応える気持ちが開発の原動力だった
冒頭でも述べたように、パイオニアは1990年にGPSカーナビを投入し、それから35年近くずっと車載カーナビを手掛け、その実力は今もなお、カーナビ界のベンチマークとして高く評価されていています。
携帯電話やスマートフォン向けのナビアプリがない時代から、パイオニアはナビ作りをしているのです。
しかし、15年前にスマートフォンが登場してから世の中は大きく変わりました。
マーケティングチームの大野さんはこう話します。
「スマートフォンでできることが増え、それはカーナビについても同じことが言えます。加えて、クルマ側の環境も大きく変化し、今や新車にカーナビを後付けすること自体が難しくなってきているのです」
そんな中で何よりもCOCCHiの開発を後押ししたのが、こんな状況の中でも「カロッツェリアのナビが好きだった」という市場の声だったそうです。
そこから「パイオニアらしいカーナビアプリを開発してその声に応えよう」。そんな機運が生まれたことがきっかけになったと言います。
さらにパイオニアは「これを機に、今までパイオニアと縁がなかった人にも使ってもらえるカーナビアプリにしたい」と考えました。そんな新たなチャレンジの中でCOCCHiは誕生したのです。
ただ、そんな思いとは裏腹に、開発するまでの過程は苦難の連続だったようです。ここで、その産みの苦しみの渦中にいたパイオニアのデザイン部 デザイン1課 原聡さんにご登場いただきます。
原さんの役割はカーナビで使われる地図をデザインすること。
「サイバーナビや楽ナビがハードディスクになった頃、つまり20年ほど前からずっとカーナビ画面のデザインを担当してきました」と話す原さん。まさに原さんはカーナビの地図デザインのプロフェッショナルというわけです。
具体的には「地図のデータベース自体は複数のメーカーで共通していることがありますが、そこをまったく違うものとしてデザインするのが私の役割です。すべてのデザインには意味があって、これまでにも自社製品だけでなく自動車メーカーなどOEM向けの地図もデザインしてきました」とのことです。
実はCOCCHiの地図は外部から導入したデータをパイオニア流にリメークしており、それも原さんの役割というわけです。
ただ、この作業は一筋縄では行かなかったようです。
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