ベンテイガにはゴルフがよく似合う
さすがにこの時期ともなるとガレージの中での吐く息は白い。「ベンテイガ」の重厚なドアを開け、スターターボタンを押すと、4リッターV8ツインターボエンジンは、瞬時に元気よく目覚めた。すぐさまシートヒーターとステアリングのヒーターにスイッチを入れ、快適なドライブに備え車内を暖めつつ、ガチャガチャとゴルフ道具や荷物を車内に積み込む準備にとりかかる。
2020年型からベンテイガはモデルチェンジが施され、とくにリア周りは大型のリアスポイラーや楕円形のテールライトの採用などずいぶんと印象が変わった。
すっきりとした一方、迫力が増している印象だ。リアのウィングド「B」のバッジを押すとテールゲートが開き、厚みのあるカーペットで覆われた広くフラットなスペースが現れる。
荷室の高さは、荷物の出し入れが苦になるようなものではないが、ベンテイガには荷物の積み下ろしが楽になるよう車高を下げるスイッチが荷室左側面に備わっている。エアサスならではのギミックだ。ゴルフバッグやトランクケースなど重めのもの積み込むときはありがたいし、小柄な人や女性にとっても優しい装備である。
残念ながらゴルフバッグのような長物を3セット以上積む場合はリアシートを倒すことになるが、2セットはなんなくクリア。容量は484リッターと大きく、トランクケースなどは余裕で積むことができる。
●外見はさりげなく華やか。中身は優しくエレガント
今回向かう先は、初めてラウンドするゴルフ倶楽部。カジュアルなスタイルも許されているというが、歴史ある倶楽部だけにジャケットは必須。お気に入りのブレザーを車内に掛け、静かにドアを閉める。ドアにもオートクローザー機能がついているためバタンと閉める必要はない。クローザーはもとよりダイヤルやスイッチ類も、見た目の仕上げのみならず動きにもエレガントさ感じてしまうのがベントレーマジック。素材といい仕上げといい各部の手触りの良さはベントレーの大きな魅力だ。乗り手の所作もおのずともの静かに、優しくなってしまうから不思議である。
ダイヤモンドステッチの入った仕立てのよいレザーシートに身を沈め、温かくなったステアリングに手を添える。センターコンソールに鎮座する時計を見ると、時刻は午前5時。冬の朝はまだ暗い。
路上に出るとベンテイガもそれを察してか、フワッと優しくあたりを照らす。装備されるマトリクスLEDヘッドランプは、光量はもちろん存在感も抜群だ。ヘッドランプユニットの内面はクリスタルカットガラスをモチーフにしたデザインが施されており、ドレスの胸元に光るペンダントヘッドやスーツの袖から覗く腕時計のごとく、さりげなくベンテイガの存在感をアピールしている。運転していると見えないものだが、気分的にも明るさに輝きが増しているように感じてしまう。
●快適な上にスポーツカーをも凌駕する性能と楽しさが
10.9インチのタッチパネルを備えた最新のインフォテイメントシステムによれば、目的地までは約1時間半。スタート時間までにも十分な余裕がある。とはいえ、冬に高速化するグリーンの状態は知りたいし、ラウンドする前に温かいコーヒーを飲むゆとりの時間も欲しい。それゆえ往路は少しばかり急ぎ足な気分だ。
このベンテイガには、「Comfort」「B」「Sport」「Custom」の4種類のドライビングモードが備わっていたが、セレクターをベントレーが推奨する「B」にセットし、倶楽部へと向かうべくステアリングを切った。
道中、試しに「Sport」モードにも切り替えてみたが、その瞬間に排気音は刺激的に変化。シフトもハンドリングも反応がさらに鋭さを増し、足も引き締まっているのがわかる。直線は矢のように突き進み、高速コーナーもスパッと駆け抜けていく。軽快であり豪快。
見た目や内装の優雅さとは裏腹に、0-100km/h加速が4.5秒、最高速が290km/hという性能を誇るモデルである。いい気になってついつい飛ばしたくなる。が、違反でもしようものなら、それこそ今日のプレイが台無しだ。
そこで「Comfort」にして走ってみることにした。優しく、実にフラットな乗り心地は、多めに荷物を積んだり親や子供が同乗するなら「Comfort」を選んで間違いないが、ゴルフエクスプレスとしてのベンテイガとなれば、「B」を選びたくなる自分がいる。走りは軽快でシャキッとしていながら乗り心地も快適。シフトやアクセルワークに呼応する排気音にも心が昂る。ドライブすることが楽しくなるモードなのだ。
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