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387馬力の大パワーをMTで操る爽快感とは? トヨタ「GRスープラ」6速MT仕様の気になる実力

387psという大パワーをドライバーが手の内で操れる

 2018年11月、当時、トヨタ自動車で「GRスープラ」の開発責任者を務めていた多田哲哉氏は、正式発売前のプロトタイプをサーキットで試乗しようとしている筆者に向かって、「まずはAT仕様の魅力を味わってみてください」と話しかけてきました。

 昨今のATは進化していること、そして、ATでもスポーツ走行を楽しめることをアピールしたかったのでしょう。実際、GRスープラは、AT仕様でも抜群のパフォーマンスを披露。初めてドライブしたにも関わらず、操る楽しさを存分に味わわせてくれました。

手の内で操る爽快感と限界走行時のダイレクト感が魅力的なMT仕様がラインナップに加わったトヨタ「GRスープラ」
手の内で操る爽快感と限界走行時のダイレクト感が魅力的なMT仕様がラインナップに加わったトヨタ「GRスープラ」

 しかし試乗後、多田氏は筆者たちとの懇談の中で、次のような“匂わせコメント”を残したのです。

「実は先日、MTの試作車に乗ってきたんです。すぐにラインナップへ追加するとかそういった段階ではありませんけどね」

「追ってMT仕様を追加する」という公式アナウンスでこそありませんでしたが、多田氏の話しぶりから、トヨタはMT仕様の設定に対して前向きだと感じたのは筆者だけではなかったはずです。

 あれから4年の月日が流れた2022年秋。GRスープラに待望のMT仕様がラインナップされました。GRスープラには2リッター4気筒ターボと3リッター6気筒ターボという2種類のパワーユニットが設定されていますが、今回、MTが追加されたのは「RZ」グレードと呼ばれる後者。MTと組み合わせることにより、最高出力387psという大パワーをドライバーの手の内で操れるようになったのです。

 現行のGRスープラは、先代モデルに当たる80型「スープラ」の生産終了から約17年のブランクを経て2019年に誕生。クルマ好きにとっては極めてホットなニュースでした。しかし、その概要が明らかになるに連れ、クルマ好きの心には引っかかるものがあったのも事実です。

 それは、「MTの設定がない」ということ。多くのクルマ好きは、「スポーツカーなのだからやはりMTが欲しい」と感じたはずです。しかし今回、新たにMTが追加されたことで、GRスープラはより理想に近いスポーツカーへと進化を遂げたのです。

 正直いって、イマドキのクルマにとってMTは、“ムダ”なものでしかありません。ATは運転が楽な上、多段化の恩恵もあって燃費も良好。さらに、人間が操作するMTより変速時間が短いため、サーキットでもATなどの2ペダル車(=クラッチペダルのないモデル)の方が速いタイムをマークするというのは現代の常識です。

 一方、MTの魅力は、クルマとの一体感を味わえること。MTはATとは異なり、下手な人が運転するとクルマの挙動がガタガタしたり、ときには発進時にエンストしたりします。とはいえ、上手に操作できてスムーズに走れたときの気持ちよさは、AT車では味わえない醍醐味。それを味わうために、あえてMT車を選ぶ人もいるのです。

 例えばゴルフでは、ミスショットするとボールは思うように飛んでくれません。しかし、ナイスショットを決めて思いどおりにボールが飛んでくれたときの爽快感は、たまらないものがあります。その爽快感を味わうためにゴルフにのめり込んだという人も多いのでは? MT車を運転するということも、それと同じようなものなのです。

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