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“小さな高級車”レクサス新型「LBX」の気になる実力とは? 本質を磨き込むことで上質さや高級感を追求! 車格を超えた走りが好印象

サスペンションやボディ骨格は“ベースモデル”とは別物

 レクサス初の“Bセグメント”クロスオーバーSUVである新型「LBX」の国際試乗会が、スペイン・バレンシアで開催されました。

レクサス新型「LBX」は、“小さな高級車づくり”というお題に対し、正攻法で挑んで答えを導き出した力作
レクサス新型「LBX」は、“小さな高級車づくり”というお題に対し、正攻法で挑んで答えを導き出した力作

 レクサスのラインナップにおいて、アルファベット3文字の車名というのは、過去を振り返っても「LFA」くらいしかありません。

 そんなLBXの意は、“Lexus Breakthrough X(cross)-over(レクサス・ブレイクスルー・クロスオーバー)”とのこと。すなわちレクサスとしては、クロスオーバーというくくりやSUVという枠を取っ払った孤高の価値を、このクルマで目指しているかのようにもうかがえます。

 というのも、LBXの車格はBセグメントSUVのど真ん中ですが、価格的にはマイナーチェンジ直後の「UX」にもろかぶりのような設定だからです。

 小さな高級車とは言葉にすれば簡単ですが、かつてさまざまなメーカーが挑んでは破れていった、そんなコンセプトでもあります。日本でもBMC「ADO16」ベースのヴァンデンプラ「プリンセス」とか、ルノー「5バカラ」とか、トヨタ「プログレ」とか、局地的にウケたモデルはあれど、いかんせん後が続かない。買う身にしてみると、同じ値段で小さい方を選ぶというのは、なかなかハードルが高いものです。

 LBXのアーキテクチャーは“GA-B”、つまりトヨタの「ヤリス」シリーズや「アクア」、「シエンタ」などといっしょです。サイズ的に一番近いのは「ヤリスクロス」でしょうか。

 となると、ヤリスクロスの骨格を使ってお手盛りにつくったブランドビジネス物件かと思われるかもしれませんが、実際はさにあらず。サスペンション回りでいえば、キャスターを寝かせた専用ジオメトリーのマクファーソンストラットに3点支持アッパーマウントやアルミ鍛造ナックルなどを組み合わせた完全オリジナルの構成となり、ホイールベースは前述のどのモデルとも異なります。

 そして、骨格についてもセンターピラーやバンパーレインフォース部にはホットスタンプ材を使用、スポットの短ピッチ化など工法的な策に加えて、開口部の環状構造化やカウル部の専用設計など設計レベルからの剛性強化も施されるなど、既存車とは別物ともいえる構成となっています。

 別物といえばパワートレインもしかり。アトキンソンサイクルの“M15A-FXE”ユニットに駆動用モーターを組み合わせるHEV(ハイブリッド)構成にしてバイポーラ型ニッケル水素バッテリーを用いる……といえばアクアのユニットを思い浮かべますが、LBXのそれはエンジンもモーターも出力が異なるほか、エンジンには一次バランサーも備わるなど、ハードウェアも専用のセットアップが施されています。

 そんなLBXのシステム総合出力は136psとヤリスやアクアより20ps高く、0-100km/h加速タイムは9.2秒とデイリーカーとしては十分以上のパフォーマンス。数値に現れないところとしては、加速度や傾斜等の情報を元にドライバーの運転意図を察してマネジメントを最適化することで、応答性の高いドライビングを可能にしているといいます。

 メカニズム的には、このHEVパワートレインを軸にFFか4WDかを選択することになるわけで、LBXのグレード構成は内外装の仕様による差異が主たるところです。仕向地によって構成は変わりますが、日本仕様は「クール」と「リラックス」、そして内外装のマテリアルや加飾要素などを自分好みに選択できる「ビスポークビルド」の3種類が用意されています。

 車格の割に広いLBXの全幅は“デザインしろ”としても使われていますが、その思い切りが一番明快に現れているのはリアフェンダーの盛り上がりでしょう。写真でもはっきりと伝わる抑揚感は路上でも目を惹くことになるかと思います。

 一方で、1800mmオーバーの実寸は日本の駐車環境ではちょっと面倒かもしれませんが、その分、前輪の切れ角が大きく採れることで、最小回転半径は5.2mとヤリスやアクアに準じたところに収まっています。ちなみに最低地上高は170mmと十分なクリアランスです。

 内装はオーソドックスなT字レイアウトでまとめられ、エアコン回りなど頻用するコントロール系には物理スイッチが用いられるなど、面白みはなくもフレンドリーなデザインになっています。センターコンソールのインフォテインメントには9.8インチのタッチパネル液晶を用いており、広さや操作性にも過不足はありません。

 試乗車は左ハンドル仕様でしたが、ドラポジはペダルオフセットなども含めてかなり吟味されているように感じました。アルミ製のフロントフードが若干高い感はあれど、立てられたフロントピラーのおかげもあって視界はクリーン。この運転環境が右ハンドルでも成立しているかが見どころです。

 ちなみに身長181cmの筆者がドラポジを決めた状態で後席に座ると、足元の余裕は“パツパツ”といった感じでした。Bセグメントとしてみれば広さは標準的といったところでしょうか。ただし荷室は天地側に広く、容量的にも使いやすそうなところが確保されているようです。

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