「事故ってからでは遅い!!」 進まない高齢ドライバーの免許返納 あまり知られていない返納後に活用できる“支援制度”とは
生活に根差す「運転」──返納をためらう理由
高齢ドライバーによる重大事故が発生するたびに、運転免許の自主返納をめぐる議論が活発化します。
内閣府が公表した2019年の統計によれば、75歳以上の運転免許保有者は約1195万人にのぼり、1975年の13万人と比較して約90倍に増加しています。

一方、2015年度に実施された警察庁委託のアンケート調査では、運転を継続している75歳以上の高齢者のうち、67.4%が「返納をしようと思ったことはない」と回答しており、自主返納への関心が高いとは言えない実態が明らかになっています。
この調査では、返納をためらう理由として最も多く挙げられたのが「クルマがないと生活が不便になること」であり、運転継続者の68.5%がこの点を理由に返納を控えていると答えています。
特に、地方部では自家用車が生活の足として欠かせない存在となっているため、鉄道や路線バスなどの公共交通機関が十分に整備されていない地域では、運転を手放すことが日常生活の喪失につながると捉えられています。
また、同調査では、返納者および運転を継続している人の双方が、今後求められる支援として「交通手段に関する支援の充実」を挙げています。
なかでも、乗合タクシーやコミュニティバスの導入、利用料金の補助といった具体的な交通支援への要望が特に高くなっています。
また、人口規模が小さな町村部においては、「電車やバスの整備」よりも、日常生活に密着した移動手段の確保が求められている傾向がうかがえます。
●制度だけでは動かない──家族、地域との関わり
制度面での整備が進む一方、自主返納が思うように進まない背景には、本人と家族との間にある意識のギャップも挙げられます。
警察庁の調査結果によると、自主返納のきっかけとして「家族に勧められた」と答えた人が33.0%と最も多く、返納の意思決定において家族の関与が大きな役割を果たしていることがわかります。
しかし、運転を継続している多くの高齢者は、「自分にはまだ運転能力がある」と考えており、安全性を懸念する家族との間で意見が一致しないケースも少なくありません。
また、運転を単なる移動手段としてではなく、「生活の一部」「自立の象徴」として捉えている人も一定数おり、運転をやめることそのものが精神的な喪失感につながるとの見方もあります。
加えて、返納後の生活を支えるための制度やサービスの存在が、十分に認知されていないことも課題です。
たとえば、「高齢者運転免許自主返納サポート協議会」に加盟する企業や団体では、運転経歴証明書の提示により、預金金利の優遇、ホテルやデパートでの割引、交通機関の特典など、さまざまな支援策が提供されています。
2025年3月からはマイナンバーカードと運転経歴証明書を一体化した「マイナ経歴証明書」も導入され、さらに活用しやすい環境が整いつつあります。
しかし、こうした支援制度の存在は十分に周知されておらず、警察庁の調査でも、運転継続者の約6割、自主返納者の約7割が「支援制度を知らない」と回答しています。
せっかくの制度が活用されていない実態が、返納の後押しにならない一因となっていると考えられます。
※ ※ ※
高齢者の免許返納をめぐる課題は、制度や啓発活動だけでは解決できるものではありません。
地域の交通インフラの整備、本人と家族の対話、そしてわかりやすく適切な情報提供を含む包括的な支援がなければ、返納の判断を後押しするのは難しい状況です。
制度を用意するだけではなく、その存在を届け、利用しやすくする工夫が求められています。
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